研究課題/領域番号 |
22K00062
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01020:中国哲学、印度哲学および仏教学関連
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研究機関 | 身延山大学 |
研究代表者 |
槇殿 伴子 身延山大学, 国際日蓮学研究所, 研究員 (40720751)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | マニ・カンブン / カチェム・カクルマ / 観自在菩薩 / 宝性論 / 瞑想学派 / 自心仏 / 如来蔵 / 他空 / カチェンカクルマ / ソンツェンガンポ王 / 宝性論瞑想学派 / 悲を蔵する空性 / 如来蔵思想 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、「ソンツェンガンポ王の遺言」として伝承される『マニ・カンブン』と『カチェン・カクルマ』を取り上げ、チベット仏教における心と仏性と空性の関係を説く思想の展開を批判的に検証することを通して、チベット仏教における如来蔵思想史の再構築を行う。カダム派発祥の地ラディン寺と、ニンマ派、カギュ派、『宝性論』の瞑想学派と中観他空派、及び後伝期に傍流となった中国仏教など、従来見過ごされてきた系譜に焦点を当て、チベット仏教における前伝期から後伝期に至る如来蔵思想の展開を辿り、「自心仏」と「即身成仏」思想を手がかりとして、日本密教の東密と台密を含む東アジア仏教思想史の再編集に繋がることも視野に入れる。
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研究実績の概要 |
2023(令和5年)度の業績は、5本の論文と2本の国内学会発表とインドにおけるフィールドワークである。論文の内訳は、「『カチェン・カクルマ』における王権と神仏習合」(『宗教研究別冊』97)、「シトゥパンチェン8世の他空説-『宝性論』瞑想学派の系譜-」(『印仏研』72)、「チベットにおける『千手千眼大悲心陀羅尼経』の受容と展開-『マニ・カンブン』編纂の意図をめぐって-」(『日蓮学』7、尚、草稿は2021年度仏教学術振興会助成金にて製作)、『マニ・カンブン』における「ロジョン」(浄心法blo sbyong)(『身延山大学紀要』24)、「身口意による観自在菩薩の瞑想法」(『身延論叢』29)である。国内学会は、日本宗教学会第82回学術大会(東京外国語大学)において、「『カチェン・カクルマ』における王権と神仏習合」を、日本印度学仏教学会第74回学術大回(龍谷大学)において「シトゥ・パンチェン8世の他空説-『宝性論』瞑想学派の系譜」を発表した。2023年7月30日から8月24日までインドにおいてフィールドワークを行い、『カチェム・カクルマ』15章本の写本(ウメ・草書体)の読解をケンポ・カルマ・ゲンドゥンの元で取り組んだ。教学思想の点では、東アジア仏教を貫く観自在菩薩信仰とチベットにおける『宝性論』瞑想学派の系譜(ニンマ宗、カギュ宗、チョナン宗とカダム宗ラディン寺派)を一つの大動脈と位置づけ、その系譜における空性と如来蔵と心の特徴について先に挙げた論文において考察した。特に、思想史上で、カダム宗に二つあることに着目した。従来の研究史が専ら論理学派のサンプ寺派に特化して行われてきたことに反して、本研究者は、従来目が向けられることのなかった『宝性論』瞑想学派とカダム宗ラディン寺派との教学上の接点を見出し、それらにおける観自在信仰と如来蔵と空性と心の教えの共通性を指摘した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度でのインドにおけるフィールドワークで、『カチェム・カクルマ』15章本の写本(ウメ)の読解をカルマ・カギュ派のケンポ・カルマ・ゲンドゥンの元で取り組み、15章本のウメ写本をウチェン(楷書)に改変することに成功した。『カチェム・カクルマ』には異なる章立ての異本があり、13章本と15章本が手書きのウメ写本である。本研究者は、これらのウメ写本をウチェン(楷書)に書き改める作業を行い、刊行を目指している。すでに、異本の全てを入手済みであり、15章本写本の読解で得た技術を応用し、13章本の二つの異本の内、一本のウメ写本をウチェンに直し、試訳の草稿をすでに作っている。今後は、フィールドワークに頼ることなく、自力でウメ写本をウチェンに書き改めていくことができ、研究上で時間的な短縮と経済的な節約も含めて、飛躍的な進歩を遂げることができた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で取り組んでいる典籍の一つである『カチェム・カクルマ』には、異なる章立ての異本が複数ある。それらの異本のそれぞれが入手困難なうえに、さらに、その内の一つを除く全てがウメ写本で書かれていることが『カチェム・カクルマ』の研究の際の障害になっていることは確かである。本研究では、これらのウメ写本をウチェンに書き改めて刊行することで、『カチェム・カクルマ』が広く一般に普及し、研究が促進されていくことを目指している。本年度は『カチェム・カクルマ』の15章本と13本の異本の一つのウメ写本をウチェンに書き改めることに成功しており、すでにインドからの出版社と刊行計画が進んでいるため、来年度は、これらの刊行を目指す。さらに、教学的には、『宝性論』瞑想学派と『マニ・カンブン』と『カチェム・カクルマ』に見られる観自在信仰と心と空性と如来蔵の思想的な特徴を、さらなる読解を通じて明らかにすることを進めていく。本研究期間の最後には、『マニ・カンブン』成就巻の中から現在まで刊行してきた論文を合わせて、身延山大学から書籍として刊行していくことを目指す。2024年4月に、本研究者が師事しているカギュ宗カルマ・カンツァン派寺院の管長(チュジェ・ラマ氏)が身延山大学を来訪され、本研究者を含め、身延山大学の教職員との交流が実現したことは、本研究者と、当チベット寺院との積年の交流の成果である。本研究瀉の研究が身延山大学と当チベット寺院とのさらなる交流を促し、今後も継続していくことが期待される。このような国際的な交流も踏まえて、今後の研究活動を展開していきたい。
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