研究課題/領域番号 |
22K00063
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01020:中国哲学、印度哲学および仏教学関連
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研究機関 | 愛知学院大学 |
研究代表者 |
石田 尚敬 愛知学院大学, 文学部, 准教授 (80712570)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2026年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | バッタ・アルチャタ / ダルモーッタラ / 仏教論理学 / 論証因一滴注 / 知識論決択注 / サンスクリット語文献学 / アルチャタ / 知識論決択詳注 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、8世紀のカシミール地方で活躍したダルモーッタラ(法上)による、仏教論理学の大成者ダルマキールティの主著『知識論決択』に対する注釈書『知識論決択注』の第2章(推理論)後半部について、オーストリア科学アカデミーと中国蔵学研究中心との国際プロジェクトにおいて利用可能となったサンスクリット語原典写本を使用し、原典テキストの校訂と解読を目指すものである。同時に、ダルモーッタラに大きな影響を与えたバッタ・アルチャタ(8世紀)が、ダルマキールティ著『論証因一滴』に対して残した注釈書『論証因一滴注』についても、研究代表者が撮影した原典写本の写真などを用いて批判校訂版を作成し、資料環境の整備を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究は、8世紀の南アジア、カシミール地方で活躍したバッタ・アルチャタ(710~770年頃)及びダルモーッタラ(法上、740~800年頃)師弟の認識論・論理学分野での思想の解明を目指し、未だ整備されていない原典テキストの文献学的研究を行うものである。 2023年度は、研究計画の2年目にあたり、アルチャタ著『論証因一滴注』について、インド・グジャラート州のジャイナ教僧院において研究代表者が撮影した原典写本(パタン写本)を中心に、イタリアのフランチェスコ・スフェッラ博士が同定した英国・ロンドンの王立アジア協会に保存されたホジソン・コレクションの原典写本、エリオット・スタン博士が発見したインド・ベンガル州アジア協会所蔵の原典写本について、テキストが重複する箇所の調査を行い、個々の写本の系統について考察した。さらに、ジャイナ教の高僧ジャンブヴィジャヤ師がジャイナ教徒の論理学書に見出した『論証因一滴注』からの引用テキストについても調査し、これまでに明らかとなった資料状況を、印度学仏教学会第74回学術大会で発表し、論文として公表した。先行研究ではこれまで相互に言及されることがなかったものの、先行研究を総括すると、『論証因一滴注』全体のサンスクリット語原典テキストが、一部の欠損は残しつつも得られることを示した。 上記の研究と並行して、名古屋大学で開催された東海印度学仏教学会第69回学術大会においても研究発表を行い、論理学分野において、インド仏教徒の思想家たちによって基体・属性の関係がいかに捉えられているかを論じた。 さらに、科学研究費補助金を用いて、東北大学附属図書館が所蔵するジャイナ教文献の調査を行ったほか、インドにおいてサンスクリット語原典写本の現地調査を実施することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、8世紀南アジア、カシミール地方で活躍したダルモーッタラ(法上)による仏教論理学の大成者ダルマキールティ(法称)の主著『知識論決択』に対する注釈書『知識論決択注』の第2章(推理論)後半部と、ダルモーッタラに大きな影響を与えたその師、バッタ・アルチャタ(8世紀)がダルマキールティ著『論証因一滴』に対して残した注釈書『論証因一滴注』を研究の対象としている。 『知識論決択注』について、オーストリア科学アカデミーと中国蔵学研究中心との国際プロジェクトにおいて初めて利用可能となったサンスクリット語原典写本の複写について、非認識を扱うフォリオ116b以下の解読を行い、第2章末尾のフォリオ137aまでの写本翻刻版を用意した。 一方、アルチャタ著『論証因一滴注』の原典写本については、インド・グジャラート州のジャイナ教僧院に所蔵された写本(ほぼ全体が現存)、ロンドンの王立アジア協会が所蔵するホジソン・コレクションの原典写本(一部現存)、インド・ベンガル州アジア協会が所蔵する原典写本(一部現存)について、重複箇所の解読を通して、そららの写本の系統を調査した。また、ジャンブヴィジャヤ師がジャイナ教徒の論理学書に見出した『論証因一滴注』からの引用テキストについても考察し、資料状況を纏めて報告した。2023年度は、『論証因一滴注』の資料状況の整備という面で、おおむね順調に研究が進展したと言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策として、ダルモーッタラ(法上)著『知識論決択注』について、オーストリア科学アカデミーと中国蔵学研究中心との国際プロジェクトにおいて利用可能となったサンスクリット語原典写本について、2023年度までに準備した写本翻刻版を用い、「結果に基づく推理」(フォリオ100a-110b)の箇所の批判校訂版及び訳注研究の完成を目指す。 アルチャタ著『論証因一滴注』の原典写本については、インド・グジャラート州のジャイナ教僧院所蔵写本(パタン写本)、ロンドンの王立アジア協会が所蔵するホジソン・コレクションの原典写本(断片)、インド・ベンガル州アジア協会の原典写本(断片)を用い、解読研究を継続する。特に、ダルモーッタラの『知識論決択注』と内容面で密接に関係する「結果に基づく推理」の箇所を中心に研究を行う。 2024年度は、8月に世界哲学者会議(World Congress of Philosophy)の学術大会がイタリア・ローマ大学で開催されることから、本研究課題に関する発表を行い、国内外の研究者と意見交換を行いたい。
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