研究課題/領域番号 |
22K00066
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01020:中国哲学、印度哲学および仏教学関連
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研究機関 | 佛教大学 |
研究代表者 |
松田 和信 佛教大学, 仏教学部, 教授 (90268128)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 仏教学 / サンスクリット語 / 仏教写本 / アシュヴァゴーシャ / 馬鳴 |
研究開始時の研究の概要 |
2世紀の仏教詩人アシュヴァゴーシャ(馬鳴)に帰せられる『三啓集(トリダンダ・マーラー)』のサンスクリット語写本を解読し、『三啓集』に含まれる40種のサンスクリット語阿含経典とアシュヴァゴーシャの詩文のサンスクリット語テキストと翻訳を作成する。また、アシュヴァゴーシャの詩文が多く埋め込まれていると推定される鳩摩羅什による漢訳文献中にアシュヴァゴーシャの詩文を探り、さらに、ドイツ探検隊の収集したトルファン写本中の平行写本断簡数種を解読して、アシュヴァゴーシャの主著とみなされる、失われた『荘厳経論』の存在とその内容を明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究は、紀元2世紀の仏教詩人アシュヴァゴーシャ(馬鳴)に帰せられる『三啓集(トリダンダ・マーラー)』のサンスクリット語写本を解読し、『三啓集』に含まれる40種のサンスクリット語阿含経典とアシュヴァゴーシャ作品偈のサンスクリット語テキストと翻訳を作成することにあるが、研究計画の第2年度である2023年度は、40種の三啓経の中から第11三啓経(義浄訳『無常経』に対応する三啓経)を取り上げて、国内外の数名の研究者の参加を得て定期的に研究会を開いて解読研究を行い、サンスクリット語テキストと和訳を『佛教大学仏教学会紀要』誌に発表した(2024年3月刊行)。また、研究代表者単独で第8三啓経(『勝義空経』)全文のサンスクリット語テキストと和訳、第15三啓経(十力経)に含まれるアシュヴァゴーシャ作品偈のサンスクリット語テキストと和訳を出版した。さらに、三啓集に含まれるアシュヴァゴーシャ作品偈を含む『荘厳経論』と見なされるサンスクリット語写本がドイツのトルファン写本コレクション中に発見された報告を述べる英文論文を海外研究協力者のイエンス=ウヴェハルトマン(ミュンヘン大学名誉教授)と共同執筆して「エリ・フランコ教授記念論集」に寄稿した(2023年9月刊行)。また、ノルウェーのスコイエン・コレクションの中のバーミヤン出土仏教写本中に見出されたアシュヴァゴーシャの失われた『荘厳経論』のクシャーナ・ブラーフミー文字写本断簡発見記を印度学仏教学会(2023年9月)で発表し、北京の中国チベット学研究センターで開催された第7回国際チベット学セミナー(2023年8月)において、『三啓集』写本の概略を紹介する研究発表も行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究によって、アシュヴァゴーシャ(馬鳴)に帰せられる『三啓集(トリダンダ・マーラー)』のサンスクリット語写本を解読し、『三啓集』に含まれる40種のサンスクリット語阿含経典とアシュヴァゴーシャ作品詩のサンスクリット語テキストの翻訳を目指すが、研究計画の初年度である2023年度には、三つの三啓集とそれに含まれるアシュヴァゴーシャ作品偈を公刊することができた。さらに、アシュヴァゴーシャの詩文が多く埋め込まれていると推定される鳩摩羅什の『大智度論』にアシュヴァゴーシャの詩文を探り、アシュヴァゴーシャと鳩摩羅什の関係性について明らかにすることができた。さらに新たな発見として、ノルウェーのスコイエン・コレクションの中のバーミヤン写本中にアシュヴァゴーシャ作品写本の存在することも明らかになった。従って、当初の計画通り、研究は順調に遂行されている。
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今後の研究の推進方策 |
『三啓集』の梵文写本には、40種の三啓経が収められているが、40種にはそれぞれアシュヴァゴーシャによって作られた偈(詩文)が付されている。2023年度に全貌が明らかにされたのは第8、第11、第15の三つの三啓経だけであり、付された1500以上にものぼるアシュヴァゴーシャの詩文が如何なる詩作品から取られたか、その全貌はまだ明らかになっていない。恐らく、その中にはアシュヴァゴーシャの現存しない『荘厳経論』、さらに『ブッダチャリタ』の失われた偈が大量に含まれている可能性がある。それらアシュヴァゴーシャの詩文の解析を国内外の研究協力者と共に遂行してゆきたい。
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