研究課題/領域番号 |
22K00085
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01030:宗教学関連
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研究機関 | 大谷大学 |
研究代表者 |
福島 栄寿 大谷大学, 文学部, 教授 (20453293)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 浄土真宗 / 幕末・明治期琉球 / 九州 / 咸宜園 / 琉球布教 / 潜伏宗教 / 田原法水 / 小栗憲一 / 明治期真宗布教史 / 九州・琉球布教ネットワーク / 第三次真宗法難事件 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、近世以降の浄土真宗の布教と展開に着目した沖縄仏教史の実態解明である。特に、九州地域と沖縄、及び清国を結んだ咸宜園を起点とする布教僧のネットワークの分析を方法的視座とし、近世から現代までの総合的な沖縄仏教史・真宗史像を解明する。そのため、潜伏キリシタンと寺院の関係、戦前沖縄の説教所跡、ハワイへ渡海した沖縄布教僧、沖縄の真宗と伝統宗教の融合等の実態解明が重要な鍵となる。本研究の取組みは、沖縄仏教史の展開の解明に新たな知見をもたらし、日本本土と琉球・沖縄の交流史の実態の解明に繋がる。更には、日本宗教史像全体の見直しとその再構築に結びつけていきたい。
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研究実績の概要 |
本研究は、基盤研究(C)「新出資料の調査と分析に基づく沖縄仏教史・真宗史に関する総合的研究」(課題番号:18K00088)の研究成果を踏まえ、さらに研究の範囲を九州地域を視野に含み込みながら展開すべく、今年度より新たに取組みを始めた。まずは、2022年度第一回共同研究会(2022年8月実施)では、基盤研究(18K00088)の研究成果を総括し、また残された課題の洗い出しを行った。特に、この第一回研究会では、研究発表として高桑優和氏「真宗大谷派による琉球布教の開始」、源清香氏「辻と真宗信仰―尾類による信仰活動の実態―」の他、翻刻史料検討「琉球出張/対辨筆記 秘密実録」を実施し、成果を共有した。 また、実施すべく残された現地調査として予定していた仲尾次政隆氏(琉球国の真宗布教の端緒を開いた人)の子孫である仲尾次政剛氏宅(東京都内)への調査を実施した。この調査で、、仲尾次政隆氏が明治10年の「第三次法難事件」(信仰弾圧)で流罪となった折、流刑地で記した『仲尾次政隆翁日記』の原本を撮影することが出来た。加えて、研究協力者と仲尾次家の墓地(東京都内)を参詣した。2022年度第二回共同研究会(2023年3月)では、撮影した『仲尾次政隆翁日記』について、研究協力者の知名定寛氏による全文翻刻を共有し、今後の資料検討の見通しを立てることが出来た。 その他、研究協力者の川邉雄大氏が、研究成果として「【資料紹介】白華文庫蔵・長三洲「韻華楼日記」(明治五年)について」(東アジア学術総合研究所 日本漢学研究センター『日本漢文学研究』第18号 2023年)を発表することができた。本研究のテーマと深い関係のある咸宜園(豊後国)で学んだ真宗大谷派僧・松本白華が中国への海外視察を行う際につたったのが咸宜園の長三州の人脈であった。咸宜園の人脈がいかに真宗布教と関係するかを知る上で、重要な研究成果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず取組みの成果を挙げたい。第一に、前研究(18K00088)の人員に加えて、寺院調査に長けた新たな人員の加入が実現し、より充実した人的研究体制を組織することができた。第二に、本研究は、前研究を発展的に継続する研究であるため、共同研究会では、前研究を総括し、残された課題を抽出することができた。第三に、前研究で実施予定であったが、コロナ禍のため未実施のままであった東京都内への資料調査を行うことができた。加えて、本研究課題の遂行に重要な意味を持つ関連資料の閲覧・撮影を実施することができた。第四に、東京都内での調査での撮影資料について、研究協力者の取組みにより、初年度内に全文翻刻の作業を終えることができた。このことは、次年度以降に、当該資料の検討に見通しを付けることができた点でも重要な成果である。第五に、コロナ禍ではあったが、対面とオンラインのハイブリット形式での共同研究会を開催し、資料検討会を実施することができた。第六に、研究協力者の川邉雄大氏が、本研究課題の関連資料を「資料紹介」として発表することができた。以上、6点である。 他方、コロナ禍のため、実施できなかったこともある。初年度の予定として、九州地域の関連寺院や関連施設、また沖縄本島や座間味島を訪れ、現地資料調査や聞き取り調査を実施する予定であったが、やむを得ず、次年度以降に見送ることとした。 以上、コロナ禍のなかで手探りで、研究課題への取組みを実施してきたが、前研究で残された課題に取組むことで、本研究へ向けた見通しを持つことができた。また、本研究課題に取組むための人員体制を拡充することもできた。また、コロナ禍の状況も落ち着いてきたので、次年度の取組みについても明るい見通しを持つことができている。以上の理由で、おおむね順調に進展していると評価している。
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今後の研究の推進方策 |
初年度については、新型コロナウィルス感染症の流行状況のため、予定していた現地調査の幾つかについては、予定通りには実施できなかった。しかしながら、次年(2023年)度以降については、感染症の流行状況も落ち着いてきているため、前研究(18K00088)で、未実施であった現地調査を実施し、資料収集等を行うことで本研究課題の推進に務める所存である。九州地域(長崎県内)の寺院の資料調査については、2023年度の前半期内には予備調査を実施し、その結果を踏まえ、年度後半期には、研究協力者と共に、本調査を行えるよう、スピード感をもって実施していく。加えて、当該寺院の子孫(福岡県在住)への聞き取り調査も行いたい。 他にも、江戸期に九州最大の学問所として栄え、多くの真宗僧も学んだ咸宜園(大分県)の跡に付設された同教育研究センターへの調査を実施する。そこで幕末から明治初期の真宗僧との関係を探究するための手がかりを得たい。この調査は、咸宜園と九州地域の真宗僧たちが形成した人と情報のネットワークの実態を探る上で、重要な意味を有し、本研究課題を推進させる上で、必須の取組みとなる。現地調査によって収集・撮影した資料と、それら収集資料の翻刻と検討作業については、前研究と同様、対面での共同研究会に加え、オンラインを利用した検討会を定期的に開催し、作業のスピードアップを図りたい。 本研究は、前研究の課題を発展的に継承しているプロジェクトである。したがって、総括した前研究の研究成果を踏まえた研究推進が不可欠であり、かつ、その研究成果の公開に向けた検討作業を通して、本研究の研究課題を解明することに繋げていく所存である。
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