研究課題/領域番号 |
22K00097
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01040:思想史関連
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
田中 伸司 静岡大学, 人文社会科学部, 教授 (50207099)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | プラトン / 超越 / 対話 / 『国家』 / 善のイデア |
研究開始時の研究の概要 |
本研究課題の核心をなす学術的「問い」とは対話という私たちのいわば日常的とも見える営みがはたして超越的な次元に触れ得るのかという問いであり、本研究はこれに肯定的なかたちで回答したいと考えている。すなわち、『国家』のプラトンは善のイデアについての不知を明示しつつも、三つの比ゆを用いてディアレクティケー(「対話法」あるいは岩波文庫の藤沢命夫訳では「(哲学的)問答法」)による善のイデアへの上昇というプログラムを提示している、と。この「対話法/問答法」のプログラムの意味と可能性を明らかにすることが本研究課題の核心である。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、プラトン『国家』中心巻において示される「対話による超越的なものへの接近」という方法論の内実と有効性を明らかにすることである。 計画の第二年度(令和5年度)として、『国家』中心巻の三つの比ゆのうち「太陽の比ゆ」と「線分の比ゆ」について、先行研究の検証を行いつつ、テクストの分析を進めた。これらのテクストはイデア論理解において最重要とされる箇所であるが、比ゆであるがゆえに曖昧なところがあり、比ゆが進行していくに従って疑問に思われるところが積み重なっていくように見える。実際、太陽の比ゆと線分の比ゆにはそれぞれ難点が指摘されており、三つ目の比ゆである洞窟のイデアは「奇妙な比ゆ」(515a4)として提示されている。第二年度としての課題である「太陽の比ゆ」と「線分の比ゆ」の分析自体は順調に進んだものの、その過程で明らかとなった先行研究間の対立に関しては、本研究の方向性を十分な確証をもって提示するところまでは至らなかった。ここで言う先行研究間の対立とは、大まかにえば、善のイデアが他のイデアと同様にさまざまな善いもののイデアであるという見解と、「仮設のない始原」として(『パイドン』でのヒュポテシスという位置づけとは異なった仕方で)善のイデアが方法論的な基盤となっているとする見解との間の相違であり、これらの見解の異なりに応じて善のイデアの理解が異なっていくことを指している。すなわち、それはイデア論をプラトンがどのように考えていたかの理解の異なりに他ならず、善のイデアの位置づけの重要性が改めて確認された。本研究では最終的には、三つの比ゆの重なりを分析することで一定の解を見いだしたいと考えている。令和6年度においては、以上の研究成果を論文としてまとめ、第三番目の比ゆである「洞窟の比ゆ」の分析へと進めていきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初は令和5年度中に、研究論文をもう一本書き上げる予定であった。しかし、令和5年4月より勤務校において学部長を拝命したため、研究エフォートを相当程度抑制せざるを得なくなり、研究の進捗に遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
学部長の任期は令和7年3月までであるので、それまでには研究論文を一つまとめることを目標としている。ここまでに書き上げた論文を基礎として、本研究の最終年度において第三番目の分析対象である「洞窟の比ゆ」の研究を取りまとめることが可能となり、本研究後に予定している学術図書((仮)『超越と対話―プラトン『国家』研究』)を上梓できると、考えている。
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