研究課題/領域番号 |
22K00101
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01040:思想史関連
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
昆野 伸幸 神戸大学, 国際文化学研究科, 教授 (00374869)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2024年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 近代神道 / 国体明徴運動 / 今泉定助 / 保守運動 / 葦津珍彦 / 神道 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、葦津珍彦(あしづ うずひこ 1909~1992)の思想分析を通して、神道思想を軸に、戦前から戦後に至る右翼的・保守的な思想・運動の系譜を明らかにすることを目的とする。葦津は神社本庁の機関紙『神社新報』の主筆を長らく務め、戦後神社界最大のオピニオンリーダーとして活躍した。また単なる言論活動にとどまらず、天皇・皇室、神道・神社をめぐる様々な実際問題に深く関与し、有効な戦術を提示した理論的指導者でもある。葦津における言論と実際の運動との関連を解明することは、戦後における「国家神道」論の位置づけや保守運動全般の歴史を捉え直すことにつながるだろう。
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研究実績の概要 |
研究の1年目にあたる今年度において、活字化に至った研究実績としては、1935(昭和10)年に生じた国体明徴運動と神社界・神道界との関係を扱った以下の2点の成果を得た。 葦津珍彦が思想的な転回を遂げて、民族主義的運動に参画する1930年代の歴史において、天皇機関説事件を契機として生じた国体明徴運動は、従来の政治史研究や教育史研究の分野において、大きな画期として位置づけられてきた。第一の成果として、先行研究の最新の知見を踏まえたうえで、国体明徴運動のなかで唱えられた国体明徴論の展開を国体論の文脈からまとめた。具体的には、運動の結果、文部省から刊行された『国体の本義』の内容に注目するとともに、『国体の本義』批判の言説を踏まえ、『臣民の道』刊行へと至る流れを確認した。 また、これまでの先行研究では、国体明徴運動を担った貴族院議員や政友会、在郷軍人会、文部省の動向は検討されてきたものの、宗教界、神社界の動きについては十分な検討がなされてこなかった。このような現状を踏まえて、第二の成果として、国体明徴運動と神社界との密接な関係について初めて具体的に明らかにした。天皇機関説事件が起きると、地方の神社界は敏感に反応し、独自の動きを進めていく。その動きを思想的に支えたのが、今泉定助や松永材といった神道思想家である。とくに葦津珍彦が師事した今泉は活発な運動を展開し、その動向は官憲も注視するところとなった。国体明徴運動を通じて、中央はもちろん、地方の神社界も活性化するなかで、葦津珍彦という神道的背景の濃厚な青年が、独自な思想を形成し、民族主義的運動にますます挺身していくことになる時代的背景を明確にした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究の1年目においては、まず①基礎的な調査として葦津珍彦の著作目録を完成させることと、②葦津が師事した今泉定助の昭和10年代の思想・活動を踏まえ、葦津が思想形成を遂げた戦前・戦中の言説の分析を目指した。 ①については、松田義男氏による「葦津珍彦著作目録」改訂版(2022年5月9日)が公表され、それまでの不備の多くが補われた。今後の葦津研究における基本文献となるが、それでもまだ戦中のもので抜けているものも散見される。それらの穴を埋める確認作業が必須なものの、所属する大学において出張のしにくい委員になったこと、またコロナ禍の影響もまだ残り、雑誌の所蔵館で学外者の調査に制限があることなどから、悉皆調査にまでは至らなかった。 ②については、2022年度に2件の論文に結実したように、国体明徴運動を軸にした動きを明らかにし、葦津が積極的に言論活動や右翼運動にコミットした神社界・神道界を中心とする時代的背景を解明した。公表した論文には、葦津の思想・活動を十分に盛り込むことはできなかったが、戦後の葦津の広範な人脈に連なる人物との接点などが確認できた。 以上のような現状を踏まえて、やや遅れていると総括したが、今年度中に挽回できると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進は、①葦津の著作目録完成を目指し、悉皆調査を徹底する、②戦前・戦中の葦津の思想を踏まえて、敗戦後から1960年代までにおける彼の思想を検討する、という2方向を軸にしていくことを予定している。 ①については、全国の大学附属図書館や関連施設における機関誌等の所蔵状況のチェックを徹底し、現物をもとに葦津の執筆文献を確定させる作業を行う。 ②については、まず戦前・戦中の葦津の思想について、様々な論題を扱いつつも、それらの根底をなしている葦津の確固とした神道観・天皇観を中心に、早急にまとめて活字化したい。続けて、主にアジア太平洋戦争の敗戦直後の葦津の言論・活動を追い、敗戦後の激変した思想状況の中で、いかに葦津が神道や天皇の意義を説き、保守しようとしたのかを確認する予定である。とくに敗戦後、神社本庁が設立される過程で、葦津がいかなる影響を及ぼしたのか、神社本庁と葦津の関係を『神社新報』の記事から検討したい。このような作業を通じて、神社界のなかの葦津の位置づけを探るとともに、葦津と関係の深い民族派の主宰する雑誌『新勢力』や雑誌『小日本』の記事も分析することで、1950~1960年代における葦津の多彩かつ広範な言論活動を浮き彫りにし、葦津が神社界にとどまらず、広く民族派にいかなる影響力を発揮したのかを見通したい。
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