研究課題/領域番号 |
22K00110
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01040:思想史関連
|
研究機関 | 国士舘大学 |
研究代表者 |
菱刈 晃夫 国士舘大学, 文学部, 教授 (50338290)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2025年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
|
キーワード | 自然法 / キケロー / 自然の光 / 生得観念 / 神学要覧 / メランヒトン / 自然学 |
研究開始時の研究の概要 |
人間に生得的に備わる観念、認識の能力や機能に信頼する「自然の光」説を、主にキケローの著作から受容するメランヒトン。キケローのいったい何を、いつ、どのように、またアリストテレスなど他の古典や聖書の注解(釈義)と共に、同時代人からの影響も受けつつ受容したのかを究明する。ライプニッツに至る17-8世紀の幅広い学問的展開への「結節点」に位置するメランヒトンの具体的影響を究める。今後は、自然学や自然科学への影響に関する思想史的研究へと発展していく。
|
研究実績の概要 |
「自然の光」説を基盤とする思想、すなわち自然法思想が極めて明瞭にあらわれている 、まずは神学の分野に焦点を合わせ 、主な資料として『神学要覧』を取り上げた。この改訂の内容を大きく三つの時期に分けてたどりながら、メランヒトンの自然法思想と、その根底にある「自然の光」説の受容過程の一端を浮き彫りにした。あわせて、その前提となっているキケロー思想の中で、「自然の光」や「生得観念」がどのように捉えられているのか、整理した。 メランヒトンは1521年の初版『神学要覧』いわゆる『ロキ』と、その草稿ともいえるカピタから、すでに自然法思想を明確に記している。「自然法は共通の見解〔判決文〕であり、すべての人々が等しく賛同する。さらにそれどころか神は各人の精神に(cuiusque animo) 、それを道徳に合わせて〔道徳と適合させられた自然法を〕刻み込んだ(insculpsit)」。次に、初版を第一世代と名づけるなら、第二世代といえる1535年版の『ロキ』、さらにメランヒトン自身によるドイツ語版『ロキ』に、そして第三世代1559年版の最終『ロキ』に、自然法と「自然の光」を探った。「自然法は神の法〔律法〕の知識であり、人間の本性に挿入されている」。「人間の精神には何らかの知識が、あるいはいわば光が挿入されていて、これによって自らによって何かを認識し判断する」。「ちょうど光が神によって目の中に置かれている(inditum)ように、ある種の知識〔観念〕(notitiae)が人間の精神には植え付けられている」。いずれにせよ、メランヒトンが生きた歴史的・社会的現実と激動の中で、メランヒトンにとって自然法と、それを支える「自然の光」説は、人間の自由意志と責任の拠り所となり、とりわけ教育による現実の社会的秩序再構築のための、究極的な支柱となり続けてきたことが浮き彫りにされた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
『神学要覧』における自然法思想の変遷と「自然の光」説について探ることができたのみで、予定していた修辞学や弁証学、自然学や倫理学のテキストまでは、とうてい組織的な探索の手を伸ばすことができなかったから。
|
今後の研究の推進方策 |
ひとまずメランヒトンが「自然の光」説を受容する源泉となっている重要人物・キケローについて、その解釈のプロセスを、計画通り進める作業へと移る。 修辞学と弁証学については、自然学や倫理学の学問的あるいは方法的フレームを形成しているジャンルでもあり、この中に、自然学や倫理学の内容も、実例として豊富に含まれている。とくにメランヒトンの自然学や自然思想については、これだけで独自の研究テーマとなりうる大きな領域でもあり、新たな研究課題として設定する必要性もある。倫理学については、すでに先行する研究でも取り上げてきたので、自然法や「自然の光」説の変化をピンポイントで抽出してたどることは可能である。したがって未だ未開拓の部分へと、まずは計画通りに進めてみたい。さらに大学での同僚である、シュップフや、さらにその後のゴクレニウスら、メランヒトンの後継者についても、できる限り資料を収集し、計画の中心線だけは保つように努力したい。
|