研究課題/領域番号 |
22K00113
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01040:思想史関連
|
研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
林 みどり 立教大学, 文学部, 教授 (70318658)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2025年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
|
キーワード | 精神分析 / アルゼンチン / グローバル思想史 / ポピュリズム / 知の大衆化 / 軍事政権 / ペロニズム / 大衆文化 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、精神分析学の知的ヘゲモニーの〈周縁〉にあるアルゼンチンが、どのような歴史的経緯・思想状況のもとで「精神分析大国」になったかを、文献や歴史資料の精査にもとづき実証的・総合的に解明する。欧米発の知の機械的な受容としてではなく、ローカルな歴史的文脈に則して精神分析を読み替えた、ハイブリッドな知の生成としてアルゼンチンの精神分析受容を分析する。 具体的には、①精神分析をマルクス主義だけでなくポピュリズムとの関係において分析する。②知的エスタブリッシュメントの外部で大衆化した精神分析の受容・流通・増殖回路を解明する。③軍事政権と精神分析の関係を、「弾圧」「取り込み」「記憶化」を軸に明らかにする。
|
研究実績の概要 |
2022年度は、当初現地調査による資料収集を予定していたが、調査対象であるアルゼンチンでは新型コロナによる規制が厳しく、調査を予定していた文書館や図書館へのアクセスが実質的に不可能であることが判明した。そこで、現地調査と並行して進める予定だった理論的な整理・分析を集中的に進めた。 アルゼンチン精神分析史を進めるにあたっては、精神分析の主流な理論や学派を生みだした側からではなく、精神分析を受容した側から見ることの意義と、グローバルな精神分析的な知の生産・流通・消費のサイクルを考えるにあたっての思想史的な意義が検討されなければならない。初年度となる2022年度は、従来の精神分析史の特徴と問題点を整理し、当該研究の理論的な位置づけを行った。すなわち、①フロイトに始まる伝統的な精神分析史の欧米中心主義と、②アルゼンチンにおける精神分析史に特徴的な国民特殊論(国民本質論)ないしローカリズムをともに批判の俎上にあげ、それぞれの理論的な問題点を指摘した。 そのうえで、欧米中心主義にも国民特殊論にも陥らない第3の精神分析史研究を進めるにあたって、S・モインとA・サルトーリらによる「グローバル思想史」(global intellectual history)の方法論的アプローチに注目し、その適用可能性について精査した。「インテレクチュアル・ヒストリー」の方法論と、「グローバル・ヒストリー」の視座の交差する点に「グローバル思想史」を位置づけ、アルゼンチン精神分析史を、知の営みの歴史としての思想史と歴史学的探査の交差において考察するという今後のヴィジョンを明確化した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究を進めるにあたっては、従来の精神分析史が当然視してきた単線的な歴史、すなわち「フロイトを起点として精神分析は欧米世界から非欧米世界に普及した」といった歴史の語り方に対して、アルゼンチン精神分析史研究がどのようなインパクトを持ちうるかについて、従来の歴史語りや学説史への批判に基づく理論的な整理がなされなければならない。2022年度は、当該研究を今後進めていくうえで出発点となるこれらの理論的な整理を進めることができた。以上のことから、「おおむね順調に進展している」と判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
2022年度に開始したグローバル思想史の理論的な枠組みを、アルゼンチン精神分析史に応用する際の課題と方法論を精緻化する作業を続行する。また、今後現地の文書館・図書館利用の制限緩和の状況を鑑みつつ、しかるべき時期に現地調査に入り、新聞・雑誌や大衆紙誌を中心に資料収集を進める予定である。 具体的な思想史的・歴史的分析の主題としては、トランス・ナショナルな知の移動・伝達において機能した媒介的アクター(翻訳者、出版社、紹介者等)に関する実証的な研究を進める。1930年代における精神分析的な知の大衆化のモメントの分析にあたっては、ローカルな視点に終始するのでなく、そうした媒介的アクターが生成し機能したローカルであると同時にグローバルな連関にも注意を払う。とくに同時期のブラジルや北米における精神分析学的な知の大衆化と比較しつつ、それらを可能にした第2次産業革命との関連に留意する。
|