研究課題/領域番号 |
22K00120
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01050:美学および芸術論関連
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研究機関 | 東京藝術大学 |
研究代表者 |
沼口 隆 東京藝術大学, 音楽学部, 准教授 (70453529)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | ベートーヴェン / ゲーテ / エグモント / 劇付随音楽 / プロメテウス / バレエ音楽 / 大衆文化 / 受容 / ヴィガノ / ロマン派 / コツェブー |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、ベートーヴェンが音楽を手掛けた舞台作品の中で、オペラ《フィデリオ》を除く作品に焦点を当て、その舞台作品としての特質を明らかにすることにある。こうした作品の音楽は、《エグモント序曲》に典型的なように、一部は極めてよく知られているが、作品全体については注目されておらず、劇付随音楽やバレエ音楽として上演されることはまずない。本来の上演形態を通じてこそ見えてくる作品の特質を明らかにしたい。 ゲーテの『エグモント』をベートーヴェンの音楽付きで上演した東京藝術大学の企画(2021年8月29日)を踏まえ、実演によっても、ベートーヴェンの音楽が付けられた舞台作品の蘇演を目指したい。
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研究実績の概要 |
当該年度においては、ゲーテの悲劇『エグモント』とベートーヴェンの《ゲーテの悲劇『エグモント』のための音楽》の各々の成立事情と、相互の関係性について整理し、論文「ゲーテの悲劇『エグモント』とベートーヴェン《ゲーテの悲劇『エグモントの』のための音楽》――両者の成立と両者間のねじれを巡る考察――」を東京藝術大学音楽学部紀要第49集に掲載した(査読あり、令和6年3月15日発刊)。ゲーテが戯曲の五カ所において明確に音楽を要求し、自身も同時代の作曲家たちと共同作業を試みたにも拘わらず、この戯曲が音楽とともに定着をすることはなかったこと、それどころか、初期の受容においては、音楽に関わる部分を本質的に削減したシラーによる改訂版の方が広く知られていたことが明らかとなった。その一方、ゲーテの戯曲を前提に作曲されたベートーヴェンの劇付随音楽は、当初から全体として上演されることが稀であり、そのために戯曲に代わる「朗読による補助」の試みも現れた。 バレエ《プロメテウスの創造物》については、東京藝術大学演奏藝術センターと相談の上、東京文化会館に企画書を送って上演への協力を打診したが、すべてが未決定の状況下で企画書自体に十分な具体性を持たせることが困難であったこともあり、現在は交渉が中断している。その一方、演奏藝術センターの方で資金繰りができる可能性が生じ、その方向で上演することを検討し始めている。 当該テーマと直接関係するものではないが、ベートーヴェン研究の一環としては、日本音楽学会第71回全国大会(2020年、主催校:武蔵野音楽大学、新型コロナウイルス感染症の蔓延のため全面オンライン開催)において当該研究者が主催したシンポジウム「100年前のベートーヴェン」を発展させ、共編著『ベートーヴェンと大衆文化』(春秋社、令和6年)として出版した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
《プロメテウスの創造物》の上演を具体化させることを目標としたが、具体化のプロセスはほぼ中断した状態にあり、いまだ先行きを見通すことが難しい状況にある。 「エグモント」に関しては、ゲーテとベートーヴェンの作品の間の、想定した以上に複雑な関係性を整理することができ、また論文という形にできたことが、ひとつの成果と言えよう。一方で、ベートーヴェン作品に新たにテクストを付ける試みがあったことに関し、テクストの翻訳や、将来的な朗読付き公演の可能性を探ることについては、次年度の課題として持ち越された。 ベートーヴェン研究の一環として共編著『ベートーヴェンと大衆文化』を出版できたことは、その切り口の新しさから一定の注目を集めることができ、また共著者との交流もできて、実りのある成果となった。
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今後の研究の推進方策 |
ベートーヴェンがゲーテの悲劇『エグモント』のために書いた音楽が、同作のシラー改訂版とともに上演されていた事実が分かったことから、シラー改訂版のテクストを入手し、それとともに音楽を演奏することの問題点を究明する。また、ベートーヴェンの音楽のために書かれたモーゼンガイル等のテクストを詳細に検討し、いずれかを訳出して、昨今では完全に忘却されている朗読と音楽による上演を目指す。 他方、ゲーテと関わりが深かったライヒャルトによる音楽については、先行研究のみからでは資料の残存状況が判然としない。時間と資金が許すようであれば、資料調査を行いたい。 バレエ《プロメテウスの創造物》の再構成・復活上演については、東京藝術大学演奏藝術センターとの関係を改めて密にし、東京藝術大学主導による上演の可能性を具体的に探る。
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