研究課題/領域番号 |
22K00121
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01050:美学および芸術論関連
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
小泉 順也 一橋大学, 大学院言語社会研究科, 教授 (50613858)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | フランス近代美術 / 西洋近代美術 / 美術館 / コレクション / 印象派 / ポスト印象派 / コレクター |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、日本の美術館に所蔵された印象派やポスト印象派を中心としたフランス近代美術の作品情報を網羅的に調査し、各地に美術館が新設された1970年代以降から現在までを視野に入れて、コレクションの全体像とその歴史を提示することを目的とする。 その際、フランスにおける美術制度の反応を確認しながら、周辺の西欧諸国の美術館における関連作品のコレクション形成史と日本の状況との国際的な比較を実施する。日本の美術館が所蔵するフランス近代美術コレクションの歴史的特徴、そこに備わる多様性と同質性を浮き彫りにし、アクチュアルな視野から日仏美術交渉史を捉え直すとともに、日本の美術館の制度を検証する機会とする。
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研究実績の概要 |
研究成果の発表としては、2024年3月に発刊された一橋大学言語社会研究科紀要『言語社会』18号に「ポール・ゴーガンの作品所蔵を通したフランスと日本の美術館の比較:日本で開催されたブルターニュ関連の展覧会を起点として」と題した論文を発表した。これは日本とフランスの両国の美術館を舞台とした作品所蔵状況を網羅的に検証した内容であった。また『週刊読書人』(3505号、2023年9月8日)に、モーリス・ドニ著『イタリア絵画巡礼:芸術の主題をもとめて』(小佐野重利監修)三元社、2023年の書評を発表した。 学術イベントとしては、2023年5月22日に国立西洋美術館の袴田紘代氏、SOMPO美術館の岡坂桜子氏を招聘したワークショップ「日本の美術館とブルターニュ」を企画し、「日本の美術館に残されたブルターニュの痕跡」と題した研究発表を実施した。2023年9月には静岡市美術館で開催された「ブルターニュの光と風」展において、関連講演会「ブルターニュと近代美術:フランスと日本の美術館をめぐる旅」を担当した。2023年10月には世田谷美術館が主催するプログラムの一環で「フランス近代美術と日本人コレクター」と題した講義を行った。 美術館調査としては、2023年8月に諸橋近代美術館など、福島県と山形県の計4館の美術館で調査を実施した。そして、2024年1月に新潟市美術館でウジェーヌ・カリエールのコレクションを確認し、2月に京都市美術館などの関西圏の美術館で調査を実施した。3月上旬には静岡県の池田20世紀美術館を訪問して同館の現状を確認し、3月下旬には南九州と四国の主要な美術館を回り、鹿児島市立美術館など計7館の美術館で調査を行った。以上を踏まえて、日本各地の美術館に所蔵されたフランス近代美術コレクションの全体像の把握に向けた一定の結果を得られた。これらの成果を今後の論文執筆等に活かす予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年5月27日に開催したオンラインのワークショップ「日本の美術館とブルターニュ」には、同時期に東京都で開かれた関連展覧会の担当学芸員2名を招聘した。結果的には70名を超える聴衆が参加し、日本各地の美術館学芸員、大学関係者、若手研究者等とのあいだに緊密なネットワークを構築する機会となった。このワークショップにおいて行った研究発表「日本の美術館に残されたブルターニュの痕跡」は、日本の美術館に所蔵されたコレクションと各地で開催された西洋近代美術関連の展覧会を多角的に検証した内容であり、日本の美術館活動を分析する一つの手法を示した。さらに、展覧会の関連講演会「ブルターニュと近代美術:フランスと日本の美術館をめぐる旅」、美術館講座「フランス近代美術と日本人コレクター」を担当し、一般の美術愛好家に本研究の魅力の一端を伝える機会を得られた。 また、一橋大学言語社会研究科紀要『言語社会』18号(2024年3月)に発表した論文「ポール・ゴーガンの作品所蔵を通したフランスと日本の美術館の比較:日本で開催されたブルターニュ関連の展覧会を起点として」は、二つの国に広がる多数の美術館の設置状況を俯瞰的に把握していなければまとめられない内容であった。その意味で、各地の美術館情報を時間をかけて収集および蓄積した結果として発表できた学術成果であると考える。以上の内容を総合的に考慮して、本研究の進捗状況を「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度に引き続き2024年度は、国内の重要な美術館での資料調査・作品調査を継続する。具体的には関東地方に加えて、中部地方、関西地方の美術館を対象とすることを想定している。あわせて2024年6月下旬から、イギリスとフランスの美術館で短期間の現地調査を実施する予定である。また、2024年3月に発表した論文「ポール・ゴーガンの作品所蔵を通したフランスと日本の美術館の比較」を一層発展させるために、予算の許す範囲でオーストラリアでの作品調査を検討している。具体的には2024年6月から10月にかけてキャンベラのオーストラリア・ナショナル・ギャラリーで開催される「ポール・ゴーガンの世界」展を見学し、同国の美術館を対象としたコレクション調査を行いたい。 学術イベントとしては、2024年4月29日に一橋大学言語社会研究科主催によるワークショップ「日本の美術館と西洋近代美術」をオンラインで開催した。本企画では東京都内の美術館に勤務する3名の学芸員を招聘し、各地の事例を紹介しながらテーマの広がりを確認した。また、2024年6月18日には2023年に公開された映画「わたしたちの国立西洋美術館」の上映会とディスカッションを一橋大学で実施すべく準備を進めている。さらに、2024年12月に関西で開かれる国際シンポジウム「フランス近代美術と京都」において研究発表を行う予定である。 先述した4月29日のワークショップの開催を受けて、2025年3月刊行予定の一橋大学言語社会研究科紀要『言語社会』19号に本研究に関連する特集「日本の美術館と西洋近代美術(仮)」を組み、先の研究発表の内容を論文として発表することで、日本の美術館に所蔵された西洋近代美術のコレクションをテーマとした研究手法の実践例を提示する。
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