研究課題/領域番号 |
22K00142
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01050:美学および芸術論関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
田中 均 大阪大学, 大学院人文学研究科(人文学専攻、芸術学専攻、日本学専攻), 准教授 (60510683)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | 美的価値 / 共同主義 / ソーシャリー・エンゲージド・アート / アートプロジェクト / 対話的芸術実践 / 協働的芸術実践 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、「ソーシャリー・エンゲージド・アート」や「アートプロジェクト」などと呼ばれる、芸術の専門家と非専門家とのあいだで行われる対話的・協働的実践について、その美的価値を評価する基本的な理論的枠組みを提示する。また、美的価値の具体的なありかたとして、以下の二点に注目する。まず、コミュニケーションにおいて生じる美的価値のあり方を明らかにする。さらに、芸術の専門家と非専門家とのあいだで行われる、美的感性と技術の交流がもたらす美的価値について明らかにする。
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研究実績の概要 |
当該年度は、ニック・リグルの共同主義的美的価値論の特徴と歴史的系譜について研究するために、リグルとサマンサ・マザーンと論文「シラーにおける自由と美的価値」 (2020/21年)における、フリードリヒ・シラー『人間の美的教育についての書簡』 (1795年)の解釈を取り上げて、その背景と妥当性について検討した。 リグルの「共同主義」は、「個性」、「美的自由」、「美的共同性」という三つの「美的な良さ」によって特徴付けられるが、マザーン/リグルは、シラーの議論をリグルの「共同主義」的美的価値論の先駆者とみなしており、シラー自身が「個性」、「美的自由」、「美的共同性」を重視する美的価値論を展開していると解釈している。この解釈で重要な役割を果たしているのが、シラーにおける「美」の概念を「スタイル」として理解するという提案である。マザーン/リグルのいう「スタイル」とは、芸術作品の様式というよりも、生活のなかでの個性の表現という意味で、「ライフスタイル」と理解できる。たしかに『美的教育書簡』には「美的自由」と「美的共同性」についての理論を見いだすことができるが、「個性」を重視する議論を見いだすことは困難である。それゆえに、シラーにとっての「美的自由」や「美的共同性」と、マザーン/リグルにとってのそれも異なると言わざるをえない。シラーは「ライフスタイル」の美学を展開していると言えるが、それはマザーン/リグルが考えるような個性的な「ライフスタイル」の美学ではない。 マザーン/リグルが考える「ライフスタイル」が絶えず更新される個性であるのに対して、シラーの議論に見いだされる「ライフスタイル」とは、むしろ普遍的な美の規範に照らして個性を乗り越えるなかで形作られる生のあり方を指している。リグルが自らの美的価値論の先駆者をシラーに求めたことで、かえって個性についての彼の思想の独自性が際立つことになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度は、特にリグルの共同主義的美的価値論に注目し、その特徴と歴史的系譜を解明することに取り組んだ。その成果は日本シェリング協会第31回研究大会で口頭発表し、協会誌『シェリング年報』に投稿した。当該論文は2023年7月に公刊予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、引き続きリグルの共同主義的美的価値論を中心として、アレクサンダー・ネハマスにおける「幸福の約束」としての美についての議論や、ドミニク・ロペスのネットワーク理論との比較検討を行い、美的実践に焦点を当てた美的価値論の可能性を探究するとともに、そうした美的価値論の歴史的系譜についても検討する。
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