研究課題/領域番号 |
22K00150
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01050:美学および芸術論関連
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
北川 千香子 慶應義塾大学, 商学部(日吉), 准教授 (40768537)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2025年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 現代オペラ/音楽劇 / 沈黙 / 静寂 / 不在性 / あいだ / カイヤ・サーリアホ / 細川俊夫 / リヒャルト・ワーグナー / 現代オペラ / 空間 / 時間 / 越境文化演劇 |
研究開始時の研究の概要 |
近年新たに創作されるオペラ/音楽劇は、題材、創作過程、上演形態、音楽語法など、これまでになく多様化と複雑化を見せている。こうした傾向に切り込むうえで有効な分析視角となるのが「あいだ」という美的概念である。本研究は、「あいだ」の美学が近年のオペラ創作においていかなる創造的役割を果たしているのか、そしてオペラというジャンルにいかなる新たな地平を開いているのかを解明することを目的とする。具体的には、2010年以降に創作された複数の文化圏のオペラ/音楽劇を例に、「あいだ」の多様な表象を詳らかにする。これにより、オペラの最新動向を把握すると同時に、芸術が提示する「あいだ」の文化社会的な意義を究明する。
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研究実績の概要 |
4年計画の初年度にあたる2022年は、2010年代以降のオペラ/音楽劇の動向を最近の学術論文や劇評に基づいて調査するとともに、「あいだ」とそれに類する様々な美的現象について文献を通して考察することに専念した。具体的な実績は以下の通りである。 ・具体的な作品分析の前提となる理論的基盤の構築に重点を置き、「あいだ」の美学に関する複数の文献を調査した。 ・本研究の分析軸である「あいだ」の一つの表象として沈黙や不在性に着目し、本研究で扱う21世紀のオペラ/音楽劇作品の分析を行う際の前提として、広くオペラ史における沈黙や不在性について考察を行い、その成果を論文2本と講演1本を通じて発表した。 ・2023年度にリスボンで開催される国際会議(5th Transnational Opera Studies Conference)での口頭発表を申請し、採択された。この発表では、カイヤ・サーリアホの《余韻 Only the sound remains》および細川俊夫の《松風 Matsukaze》を取り上げ、能を題材とする現代オペラが開く新しい地平を「あいだ」の美学という分析視角から考察する。2022年度は主にサーリアホの作品についての先行研究を調査するとともに、映像資料を分析した。 ・2025年7月にグラーツで開催される国際ゲルマニスティク協会の国際会議での口頭発表を申請し、採択が内定している。本発表では、細川俊夫の《海、静かな海 Stilles Meer》を考察対象とする。2022年度は本作品における「あいだ」の表象を主に映像資料をもとに分析し、発表準備を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現代オペラ/音楽劇における「あいだ」の美学を考察するうえで、現代音楽の出発点と見做しうるリヒャルト・ワーグナーの作曲美学の革新性について論じておく必要が生じた。そのため、ワーグナーのオペラ《さまよえるオランダ人》と楽劇《トリスタンとイゾルデ》を取り上げ、これらの作品に見られる不在性の諸相を分析し、その研究成果を論文および講演で発表した。これは当初の計画には含まれていなかったため進捗に遅れが生じた。 また、当初の計画では2022年度に資料調査のためドイツに出張する予定であったが、コロナの影響で延期せざるを得なかった。海外での資料収集および調査が実施できなかったことで予定通りに楽譜資料を入手できず、楽曲分析を進めることができなかった。そのため、主にインターネットを通して先行研究の収集と処理に専念するよう方針転換した。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度はまず、カイヤ・サーリアホのオペラ《余韻》における「あいだ」の美的表象を楽譜と映像資料に基づいて考察し、2023年7月にリスボンで開催される国際会議でその成果を発表する。 次に、サルヴァトーレ・シャリーノのオペラ《ローエングリン》における「あいだ」の美学を扱った論文を、8月末までに完成させて学術誌に投稿する。 さらに、マーク・アンドレのオペラ《ヴンダーツァイヒェン Wunderzaichen》を対象に、現代オペラ/音楽劇における「あいだ」の表象を具体的に分析し、口頭発表あるいは論文の形でその成果を発表するための準備を進める。
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