研究課題/領域番号 |
22K00154
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01050:美学および芸術論関連
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
花田 史彦 立命館大学, 産業社会学部, 授業担当講師 (90828625)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | メディア史 / 映画史 / 思想史 / 戦後史 / 戦後知識人 / 映画批評家 / 論壇 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、日本の戦後知識人が映画についていかに論じてきたかを明らかにするものである。 20世紀前半、つまり2つの世界大戦が行なわれた時代、映画は最も人々に親しまれた文化だった。それは「一般大衆」に限った話ではなく、丸山眞男、鶴見俊輔、吉本隆明ら著名な思想家にとっても同様である。かれらも映画に親しみ、映画について論じた。かれらにとって映画とは、重要な娯楽であり教養であり分析対象だった。 本研究では、従来あまり着目されてこなかった戦後知識人の「映画批評家」としての側面に光を当て、映画を論じることが「学知」としての地位を獲得していく過程を跡づける。それによって、映画史と思想史との架橋を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、日本の戦後知識人が映画についてどのように論じてきたのかを考察することである。 この目的を達成するため、2022年度は、今村太平(映画批評家)、岩崎昶(映画批評家)、木下惠介(映画監督)、桑原武夫(仏文学者)、佐藤忠男(映画批評家・教育批評家)、丸山眞男(政治学者)、柳田國男(民俗学者)といった人物を取り上げ、かれらが映画雑誌、総合雑誌、著作等に残した言説を渉猟することによって、映画界と思想界とのいわば「相互乗り入れ」状況が存在してきたことを実証した。 この作業によって、映画について論じることが、単に作品の出来不出来を評価するにとどまらず、「社会認識」や「歴史認識」の表明につながっていたことを明らかにした。戦後知識人にとって、映画とは単なる娯楽ではなく、日本社会のありようを「大衆」の心性の次元から把握するために不可欠のメディアだったのである。もっとも、一口に「把握」と言っても、その具体的な仕方は人物ごとに異なる。日本社会の「後進性」を指摘するために映画を論じた者もいれば、大衆が秘めた倫理の可能性を映画から析出しようとする者もいた。このような成果を踏まえながら、今後は人物ごとの相違が生じた背景などをさらに分析していくことが必要となる。 また、そうした言説実践が、たとえば岩波書店や中央公論社といった出版界の「権威」を背景として、「学知」へと「昇格」していく模様も断片的にではあるが確認することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究成果は、当初考えていた以上の数を発表することができた。その点では順調な進展だと言える。 ただし、科研費への応募の段階でインタビューを予定していた人物の逝去(2022年)があり、研究計画の一部が実施不可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
「現在までの進捗状況」で述べた事情のため、インタビューの計画については再考が必要になっている。 そのことを踏まえ、今後は、文献資料のさらなる集中的な収集と整理とを主な課題として研究を実施していきたい。
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