研究課題/領域番号 |
22K00163
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01060:美術史関連
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研究機関 | 京都市立芸術大学 |
研究代表者 |
吉田 雅子 京都市立芸術大学, 美術学部/美術研究科, 教授 (40405238)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 染織 / 祇園祭 / 工芸 / 日本 / 中国 / ヨーロッパ |
研究開始時の研究の概要 |
京都の祇園祭に伝来する東西交渉を示す渡来染織品は、使用の様態を探ることができる世界でも貴重な作例群である。本研究では大航海時代の交流史と日本の祭礼史が重なり合う祇園祭の染織品を、考察の対象とする。特に、中国・日本・ヨーロッパ間の影響関係が如実に表れている主題(人物、花鳥、龍)に焦点を絞って調査を行う。 江戸期に染織品を通して受容された中国やヨーロッパの要素、その図様に含まれる意味、その主題と祭礼内容との関連性を明らかにすることを研究の目的とする。図様分析を中心とする美術史に、材質や素材を分析する技術史、及び祭礼史の視点を組み合わせて、領域横断的に考察してゆく。
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研究実績の概要 |
本研究は京都の祇園祭の染織品のうち、中国、日本、ヨーロッパ等の間の影響が現れている主題に焦点を絞って調査を行もので、江戸時代に染織品を通して受容された中国やヨーロッパなどの外来要素と、その図様に含まれる意味、その主題と祭礼内容との関連性などを明らかにすることを目的とする。 4年計画の1年目にあたる2022年度は、祇園祭における調査と、ヨーロッパでの調査の二本立ての計画を立てた。このうち夏のヨーロッパ調査は、渡航直前に家族がコロナに罹患したため、実現できなかった。 他方、秋の国際会議(International Association for the Study of Silk Road Textiles IASSRT)はズームによるものであったため、こちらには参加することができ、祇園祭の期間中に調査した作例に関して研究発表を行った(Hanging made from Chinese textiles with dragon design handed down in the Gion Festival in Japan: Its trade routes)。 この発表は、祇園祭の油天神山に伝来している紋織物に関するものである。この作は紺地に龍文様が配された前掛で、その生地は龍袍の一部であることが知られていた。この作品を調査し、史料に記された「蝦夷錦」の記述や実物作品の特徴などを検討し、この作は中国製の「蝦夷錦」にあたることを指摘し、その図様や技法の特徴を明らかにした。そして、制作年代、交易経路を推定した。さらに、江戸時代に京都において、「蝦夷錦」とはどのようなものであると理解されていたのかを示し、本作は日本製の蝦夷錦を形成する母体となった中国製の蝦夷錦であることを示した。 その後、この発表内容にさらに加筆し、論文を執筆して公表した(「祇園祭の油天神山に伝来する龍袍前掛」京都市立芸術大学研究紀要、67号)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度はコロナウイルスが蔓延していたため、安全を期して、祇園祭の祭礼期間における国内調査と、ヨーロッパでの調査の二本立ての計画を立てた。夏のヨーロッパ調査は、直前に家族がコロナに罹患したため遂行できなかったが、祇園祭は無事開催されたため、祭礼期間内に染織品の調査を行うことができた。夏以降は国内の伝来品に焦点をあてて研究を続け、その研究成果を公表することができた。コロナ罹患のために緊急にスケジュールを変更して軌道修正することはあったものの、目指した内容はある程度達成することができた。
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今後の研究の推進方策 |
各国が次第に外国人に国境を開きつつあるため、2023年度にはヨーロッパで調査を行うことを再度試みたい。江戸時代に日本に舶載されたタペストリーが日本の祭礼の中に伝来している。これらのヨーロッパ製のタペストリーを模倣して、日本でも数点のタペストリーが江戸時代に制作された。そこで、この種のタペストリーを国内とヨーロッパで調査したい。特に、日本製の作例の原形となった作品(スエーデンに伝来する品々など)を、顕微鏡を用いて調査したい。また、ポーランドのクラコウで染織研究の国際会議があるため(Centre international d’etude des textiles anciens, CIETA 国際染織学会)、この会議で、日本に伝来するタペストリーと、その母体となったヨーロッパのタペストリーに関して発表を行いたい。 しかしコロナは未だ完全に収束してはおらず、予期せぬ事柄が起こる可能性もあるため、当初計画した調査や発表が何らかの理由によって難しくなった場合は、これまでの調査データのまとめを執り行うなどの方向に作業を切り替えて、事態の変化に臨機応変に対応しながら研究を進めてゆく。
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