研究課題/領域番号 |
22K00173
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01060:美術史関連
|
研究機関 | 神奈川県立歴史博物館 |
研究代表者 |
神野 祐太 神奈川県立歴史博物館, 学芸部, 学芸員 (40757473)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2024年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2023年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
|
キーワード | 足柄坂 / 毘沙門天 / 一木造り / 行道面 / 菩薩面 / 箱根権現 / 仏像 / 神像 / 塑像 / 螺髪 / 伊豆 / 東国 / 箱根 / 土肥郷 / 相模国 / 肖像彫刻 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では足柄地方(神奈川県西部)の宗教彫刻(仏像・神像)を研究対象とし、特に出土した仏像と伝世する彫刻の2つに注目する。1つ目は考古資料として出土した仏像の断片である。小田原市の千代廃寺跡からは相模国域で唯一古代の塑造仏像の断片が出土している。相模国だけでなく東国の出土仏像の断片の形状や造り方に注目して調査を実施し、飛鳥~奈良時代の東国の仏像の実態を考察する。2つ目は箱根町・箱根神社を中心とする神像、南足柄市などにまとまって伝来する平安時代の仏像である。実物の調査を通して基礎データを得るとともに、製作年代の再考や未発表の作品の再評価をおこなう。
|
研究実績の概要 |
本年度は特別展「足柄の仏像」(2023/10/7~11/26)を勤務館で実施し、前年度以来の調査研究成果の一端を展示の内容に盛り込むことができた。たとえば、南足柄市朝日観音堂の毘沙門天立像2躯は、これまで室町時代の模古作とされていたが、平安時代の作品である可能性を提示した。また、同じく朝日観音堂の毘沙門天立像と同市中沼薬師堂の薬師如来坐像は、耳の形がそっくりで、プロポーションや構造等、共通する点が多く、同一の作者もしくは工房によって製作された点を指摘した。他にも箱根町箱根神社銅造男神坐像、同興福院菩薩像頭部などは、事前調査で得られた新知見を盛り込んだ。これらの成果は、特別展会場のキャプションや図録の解説で触れ、会期中に実施した講演会、展示解説等で話したことで、多くの観覧者に波及したと思われる。本研究課題の取組を社会へ還元ができたことは特筆されよう。 特別展開催中には、館内で出品作品の熟覧調査を実施し、基礎データを得ることができた。特に箱根町阿弥陀寺の菩薩面について赤外線カメラを用いて調査を実施したところ、これまで判明していなかった文字が判読できるようになった。さらに、阿弥陀寺菩薩面に類似する広島御調八幡宮の菩薩面3面も実査できたことは大きな成果であった。 特別展を実施したことで、当該地域の方々に仏像や彫刻に関する関心がたかまり、これまで調査が未実施であった仏像について調査依頼が数件あったことはうれしい副産物であった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
特別展「足柄の仏像」の事前調査や特別展開催中の調査によって、複数の新知見を得ることができている。ひとまず特別展図録にそれらの成果を盛り込むことができたものの、図録では十分に紹介できなかった部分もある。
|
今後の研究の推進方策 |
特別展「足柄の仏像」を開催したことをきっかけに、2024年度、足柄上郡松田町に所在する彫刻の悉皆調査を実施することとなった。同町では彫刻の悉皆調査は実施されておらず、初めて所在が確認される仏像が複数ある。某所ではこれまで知られていなかった鎌倉時代前期に遡るとみられる薬師如来坐像を確認している。また、引き続き足柄地域の仏像の実査をおこなっており、足柄上郡中井町では境別所自治会館の阿弥陀如来坐像を調査する。この像は平安時代の仏像として中井町指定文化財に指定されているものの、基礎データや画像データの存在がほとんど知られていないものである。 最終年度では、引き続き実査をすすめながら、これまでの調査で得られた基礎データをまとめた調査報告書の刊行を目指している。より重要な仏像等については、論文を執筆し学術雑誌等へ投稿する準備をしている。
|