研究課題/領域番号 |
22K00174
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01060:美術史関連
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研究機関 | 神奈川県立金沢文庫 |
研究代表者 |
梅沢 恵 神奈川県立金沢文庫, 学芸課, 主任学芸員 (60415966)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2026年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2025年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 美術史 / 寺院史料 / 中世鎌倉文化圏 / 肖像画 / 羅漢図 / 儀礼 / 法会 / 中世絵画 / 仏画制作 / 西大寺流 / 東国様式 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は中世鎌倉文化圏における絵画制作、法会の本尊としての使用、貸借、売却などによる移動の実態について、寺院に蓄積された古文書、聖教の分析から捉え直し、美術史、中世史、仏教史、考古学など多岐にわたる視点から総合的に研究することを目的とする。 美術史学、歴史学の研究者から構成される共同研究会を組織し、相互補完的に寺院に伝来した中世絵画の制作、活用の実態について研究を進める。東国の西大寺流寺院と、円覚寺および関東の夢窓派ゆかりの寺院の作品の実査を進めるともに、文献史料の分析・検討を行うことにより、絵画制作の実態および、寺院における活用について明らかにしようとするものである。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、中世鎌倉文化圏における絵画制作、法会の本尊としての使用、貸借、売却などによる移動の実態について、寺院に蓄積された古文書、聖教の分析から捉え直し、美術史、中世史、仏教史、考古学など多岐にわたる視点から総合的に研究することである。 現在、歴史学、文学、仏教学など隣接領域の研究者との共同研究を行うことにより相互補完的に研究を進めている。当該年度は、称名寺の所蔵品を中心に、鎌倉時代の西大寺流の儀礼に関わる羅漢図、年忌法要に用いたとみられる肖像画を中心に調査・研究を実施した。とくに、十六羅漢の一尊である羅云尊者を単独本尊とする羅云講について注目し、寺院に伝来する絵画および同時期に蓄積された聖教、古文書の調査、分析を行うことで、近世には廃れてしまった中世法会である羅云講(羅云供)を復元的に考察することができた。 また、鎌倉時代の称名寺の大檀越であった金沢北条氏の歴代当主の肖像(国宝・四将像)について重点的に調査を行った。画絹の状態を観察し、作品間における画風の振幅についても考察した。調査、分析の結果、金沢貞将像は、裏彩色やモデリングの技法、画絹の質ともに他の三幅と大きく異なっていることがわかった。今後、制作地の問題を解明するために同時期の他作品との比較など、次年度以降、さらに検討を行う予定である。本研究に関わる肖像画および関連する古文書、聖教を終身とした展覧会(特別展「金沢文庫の肖像」)を実施し、研究成果の一部を展覧会図録や関連講座等で公開した。また、研究代表者がこれまで宝物調査に参加してきた円覚寺に伝来する中世絵画、絵図や古文書を含む「円覚寺文書」の原本調査を行った。北条得宗家の宝物の伝存、移動の状況を現存する絵画との関わりから検討し、調査概要を報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は美術史のみならず、寺院史、儀礼研究などの隣接分野との共同研究を行い、主に次の4点について明らかにしようとするものである。①中世東国寺院所蔵の絵画がどのような契機により制作されたのか②鎌倉幕府の滅亡の前後で、寺院の宝物の生成や移動に変化があったのか③鎌倉幕府の滅亡後(14世紀後半以降)に誰が主体となって、絵画が制作されたのか④中世東国寺院の法会の本尊はどのように入手され、活用されたのか ①、④については、称名寺および円覚寺の所蔵品を中心に原本調査、分析を進め、一部について成果を公開することができた。②、③については作品調査の実施により、問題を洗い出すことができたため、次年度以降に調査、研究を継続して行う予定である。 研究代表者がこれまで悉皆調査を行ってきた円覚寺にも多くの中世絵画とともに鎌倉時代の絵図や古文書を含む「円覚寺文書」が伝存する。称名寺の絵画および、古文書・聖教の分析、研究を中心に進めるが、北条得宗家の宝物の伝存、移動の状況と比較することにより、中世鎌倉文化圏の様相がより立体的に明らかになることが予測される。悉皆調査の概報について報告済みであるが、本研究の立脚する問題からさらに研究を深化させ、次年度にも論文による成果の発表を準備している。 当該年度は、称名寺所蔵の肖像画の調査を優先させたため、初年度に予定していた詫磨派の作品調査については、予定を変更し、次年度以降に行うこととした。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に遂行できなかった詫間派作品の実査を進めるともに、文献史料の分析・検討を研究分担者および研究協力者とともに共同研究を行う。三千仏や涅槃図は称名寺の所蔵絵画の中でもとりわけ規模が大きい作品であり、これらの本尊が懸けられた堂宇と行われた法会の復元的考察には、建築史、中世考古学、仏教儀礼などより広範な専門分野の研究者の協力も必要となる。また、称名寺の近隣に所在した詫磨派の涅槃図が筑波山麓の法雲寺に移されており、作品実査を行うとともに、移動先の寺院の現地調査を実施予定である。 研究協力者である三輪眞嗣(日本中世史・寺院史)は、これまでに称名寺第三代長老であった湛睿が久米田寺に留学していた際に、東大寺尊勝院の有力学侶であった覚聖と交流を持ち、華厳教学に関する聖教の貸借をしていたことを明らかにしている。称名寺に伝来する祖師像などの絵画は、東大寺や久米田寺の所蔵絵画とも親縁性があり、南北朝から室町時代における絵画制作や宝物の移動には歴代の長老たちの人的交流が関与していると予測される。引き続き共同研究を行うとともに、久米田寺や東大寺伝来の絵画の実査も計画している。
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