研究課題/領域番号 |
22K00175
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01060:美術史関連
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研究機関 | 公益財団法人大和文華館 |
研究代表者 |
仁方越 洪輝 公益財団法人大和文華館, その他部局等, 学芸部員 (20937271)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2025年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 近世絵画 / 円山派 / 四条派 / 呉春 / 近世絵画史 / 筆線 / 絵画論 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、江戸時代中後期の京阪地域を中心として、絵師が筆線に対してどのような意識をもっていたのか、円山・四条派を軸に検討する。18世紀後半は多彩な様式の並立した時期であり、各絵師が多彩な筆線を使用していた。一方で、起伏を抑えた筆線を多用する円山応挙が登場し、応挙様式を受け継いだ呉春も筆線の存在感を減少させていく。大きな勢力を有した彼らの画風と門人らは後に円山・四条派と呼称されるようになる。本研究は、応挙活動期の18世紀後半から、応挙門人らが広範囲で活動した19世紀にかけての絵画作品や諸文献を精査し、近世から近代へと至る絵画史を筆線という視点から捉え直すことを目的とする。
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研究実績の概要 |
本研究では、18世紀後半の日本絵画では絵師たちが多様な筆線の使用を試みていたが、円山・四条派の隆盛とともに日本絵画の大きな潮流として筆線の存在感が減少していく様子を見せる要因を探っている。特に四条派の祖とされる呉春(1752~1811)については、円山応挙(1733~95)への接近以降は没骨描法の多用が顕著に確認される点と、次世代以降への影響力が非常に大きい点から、重要な存在だと見なされる。 今年度は、呉春の絵画のうち肉筆作品だけではなく、版本挿絵の探索にも重点を置いて作品整理を進めた。その結果、従来知られていなかった挿絵等が発見されたため、呉春の俳諧活動に関する情報と合わせて刊行物にて発表した。(「研究ノート 俳諧ネットワークにおける寛政期以降の呉春」) 版本も含めて制作年代の明らかな呉春作品が追加されたことによって、寛政五年(1793)頃には没骨描法を駆使して立体感の表出を巧みに行っていたことが想定され、画風変遷のより詳細な把握に一歩近づいた。また、晩年に近い享和三年(1803)の作として、円山派や周辺絵師たちと交流していた様子を示す合作が見つかった。上田秋成(1734~1809)の『胆大小心録』(1808年成立)には、呉春が健康を害して「隠者てい」になってしまったと記述されているが、呉春の生活がすさんでいったとされる時期に関するひとつの検討材料となるだろう。このような作品調査と合わせて、これまでに収集してきた呉春の作品の特質や彼の絵画観についての情報を整理し、2024年度に展覧会の形で公表できるように準備を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
重要な作品の新発見など資料的な成果はあがったが、論考のかたちで全てを公表するには至らなかったため、次年度の課題として持ち越すこととなった。
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今後の研究の推進方策 |
先に述べた新資料の位置づけを行い、論考として発表する。また、絵画作品における筆線の用い方や絵師たちの筆線の考え方について、19世紀にも探索の範囲を広げながら、調査と情報収集を進めていく。
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