研究課題/領域番号 |
22K00179
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01060:美術史関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
増記 隆介 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 准教授 (10723380)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 普賢菩薩像 / 応徳涅槃図 / 孔雀明王像 / 南宋時代 / 北宋時代 / 藤原道長 / 仏伝図 / 国宝「普賢菩薩像」 / 裏彩色 / 蓮華王院宝蔵 / 後堀河天皇 / 仏教絵画 / 聖性 / 世俗 / やまと絵 / 肖像画 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、仏画における聖と俗の往還という課題を設定し、聖と俗の関わりが端的にあらわれる仏画制作における宗教儀礼の様相、及び仏画制作における聖俗の技法の混交の二つの観点からこれを検討することによって、仏画の生成に関する絵画史上、宗教史上の新たな議論を引き起こすことを目指す。さらに中国や朝鮮半島等の日本以外の地域において、それらがどのような様相を示すものであるかを明らかにし、それらとの比較を通じて、我が国における仏画の聖と俗の問題の独自性を浮かび上がらせようとするものである。
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研究実績の概要 |
2023年度は、研究代表者の体調不良により海外での調査については、これを縮小し、これまでの調査成果をさまざまな媒体を通じて公表することを主とした。 具体的には、東京国立博物館所蔵の国宝「普賢菩薩像」の修理成果とそこから得られた絵画史的な見通しについて、共著の形で一般書として刊行した。また、論文としては高野山金剛峯寺所蔵の国宝「仏涅槃図」に関する論考を発表し、本図の技法、様式的な特質を分析することで、本図に原本に相当する作品が存在したこと、その原本が唐代の涅槃図に基づき北宋時代に描かれた作例であった可能性を提示した。また、唐代の画聖・呉道子をめぐる伝説を想起させる表現的な特質が備わることを明らかにし、本図の絵師の社会的な特性についても言及した。 さらに、南宋時代、12世紀半ばの国宝「阿弥陀三尊像」(清浄華院)について、その表現、特に墨線と彩色の濃淡に画像をめぐる仏教儀礼の内容が反映されていることを初めて明らかにするとともに、同時代の水墨人物画の表現との詳細な比較を通じて、仏教絵画史の範疇のみにはとどまらない、多角的な表現の特質を広く宋代絵画史の中に位置づけることに成功した。 口頭発表としては、北宋時代、11世紀末頃の国宝「孔雀明王像」(仁和寺)の図像的な特質を明らかにし、国際シンポジウムで発表した。さらに、世俗画と仏画の表現が交わる場として、出家前の釈迦の生活や山水の風景が仏教的な図像とともに描かれる平安時代の「仏伝図」、特に藤原道長建立の法成寺をめぐる仏伝の表象に注目し、「仏伝図の不在」こそが平安時代後期の我が国の仏教絵画史の特質であることを明らかにし、シンポジウムで発表した。そのほかに、国宝「平家納経」(厳島神社)の見返絵の図様の分析を通じて、これらが総体として厳島神社の縁起をなすものであることを国文学研究者との共同研究の中で明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者の坐骨神経痛の悪化により、大英博物館所蔵の法隆寺金堂壁画模本調査など、日程調整まで行い実施できなかった調査がある。また、アメリカ等の調査についても、これまでの調査実績は今年度の研究業績に反映されているが、クリーブランド美術館等、新たな調査先における調査が実施できなかった。ただし、京都国立博物館、奈良国立博物館等での調査は順調に進捗しており、また、国宝「扇面法華経冊子」(四天王寺)修理に修理委員会委員として参加し、その表現の細部などを観察するとともに、修理のさまざまな段階での判断に学術的な助言を提供できていることは、本研究の成果であり、さらに本研究を代表するであろう多くの論考を公にできたことは、多くの成果が得られていることを示している。
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今後の研究の推進方策 |
急激な円安の状況、また中国への入国の困難さなどから、海外調査については、状況を判断しながら進めてゆきたい。さらに国内調査については、現在修理が進捗している国宝「阿弥陀聖衆来迎図」や国宝「扇面法華経冊子」などの技法の調査を継続して実施するとともに、他の修理案件についても、所有者、文化庁、修理技術者との連携を図りながら、修理の折にのみ得られる、作品制作時や伝来過程での表現のあり方、その変容についての情報を収集し、今回の研究成果についてより多くの客観的な判断材料を得ることを目指してゆきたい。
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