研究課題/領域番号 |
22K00184
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01060:美術史関連
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研究機関 | 茨城キリスト教大学 |
研究代表者 |
宮崎 晶子 茨城キリスト教大学, 文学部, 教授 (80613504)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 観音 / アンコール / ヴィシュヌ / 土着化 / 王権 / 身体観 / 特質 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、アンコール朝(9-15世紀、ほぼ現在のカンボジア)において仏教がどのように土着化し王権とともに拡大したか、観音信仰を中心に明らかにすることを目的とする。 「仏教東漸」は一般的に「陸のシルクロード」の話として語られる。本研究で「海のシルクロード」の中心である東南アジアに焦点を当てることで、2つのシルクロードから日本までの仏教伝播を解き明かす一助となると考える。
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研究実績の概要 |
アンコールにおける観音信仰の土着化の過程と王権の関係性を明らかにするため、22年度は碑文を集中的に読み解き、観音の特質・身体観がどのように記され、それらの記述がアンコール域内でどのように内延化していったか、その過程を調べた。 その結果、観音信仰の定着は仏教徒の官僚と王権主導のもと、領土拡大と対となり推し進められた可能性があることが分かった。また、観音を賛美する碑文には「ヴィシュヌのように」という文言がかかれていた。ヴィシュヌの「四臂」という身体観と「トライローキヤナータ」という特質を観音の身体観および特質とし、定着を図る様子が見られた。 観音だけでなく、ヴィシュヌの身体観・特質についても碑文を網羅的に読み解き、データベースを作成した。「四臂」という記述や「手に土地を持つ」という記述があり、持ち物として「蓮」より「土地」を好む傾向が見られた。実際、彫像においてもアンコールのヴィシュヌに関しては「蓮」の代わりに「宝珠」を持っている。このようなヴィシュヌの身体的特徴は、アンコール以前の彫像にも見られており、初期のヒンドゥー・ヴィシュヌ派の伝播と同時に拡散した図像であるといえる。 以上のことから、観音の身体観および特質は、アンコール以前から定着していたヴィシュヌ派の拡大という流れに沿う形で王権により定着が図られたとみられる。 23年度は、他のヒンドゥーの神々の身体観および図像資料と碑文の記述を照らし合わせ、より包括的に観音とヒンドゥーの諸神との比較を行いたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アンコールの碑文を網羅的に読解していくという作業は気が遠くなる作業ではありましたが、海外研修中だったのでどうにか「おおむね順調に」進みました。今後は図像と照らし合わせる作業がメインになります。3年で完遂するよう設定したのは自分自身なので、最後まで頑張ります。
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今後の研究の推進方策 |
「観音」と「ヴィシュヌ」以外の神々に関する記述を調べ、アンコールの図像と照らし合わせる。ヴィシュヌに関しては「蓮の目をもつ者よ」「三界の主よ」などと呼びかけられる記述もあり、碑文全体を通して表現が複雑に入り組んでいることが分かった。ヒンドゥーの諸神の特質および身体観を読み解くことで、アンコール時代の「観音」に求められた役割も解明できると考えている。
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