研究課題/領域番号 |
22K00186
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01060:美術史関連
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
後藤 文子 慶應義塾大学, 文学部(三田), 教授 (00280529)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | デザイン論 / ドイツ改革運動 / バウハウス / 実用庭園 / ガーデニング / 身体論 / マスダスナン / ゲマインシャフト / 芸術学 / ドイツ改革庭園 / 生活と芸術 |
研究開始時の研究の概要 |
近代の庭園芸術を「デザイン論」として問うとは、生活世界を構成する多様な関係のうちに質的差異の本質を問いかける人間の創造的で総合芸術的な営みとして庭園芸術を措定することを意味する。本研究の核心をなす学術的「問い」はこの点にある。従来、「改革庭園」が近代デザインに関連づけられる場合、例外なくそれはデザイン史の視座から世紀転換期の改革運動や工芸デザイン運動の文脈で歴史記述されてきた。それに対して本研究は、デザインの本質理解に基づく近代芸術研究を、園芸史学・庭園史学が重視する植物利用を基盤とした研究方法論へと架橋する可能性をデザイン論に見出し、近代芸術研究としての新たな庭園芸術研究の視座を開拓する。
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研究実績の概要 |
研究初年度の本年は、研究活動の基軸(「1. 基礎研究」「2.学術交流・研究会」「3.社会・地域貢献活動」)のうち、当初計画に基づき、とくに1および2に重点を置いて取り組んだ。本研究がその中核として探究する「バウハウスと実用庭園」の関係については、今日までのところ包括的な実証研究がなされておらず、基礎的な一次・二次資料調査とフィールドワークが必要不可欠である。そのため本年はまず、1920年代初頭にヴァイマルを本拠地とした初期バウハウスの実態解明を主眼として研究を実施した。 資料調査の過程において当初想定していなかった事態として浮かび上がってきたのが研究史に纏わる問題点である。すなわち、最新のバウハウス実証研究は同校設立(1919年)の周年に当たる2009年と2019年に飛躍的な進展をみており、そこでの成果は、とりわけ東西ドイツ統一に伴う人文学研究諸機関の大規模な再編によって実現した新しい研究状況を反映し、注目される一方で、両国統一以前の旧東ドイツにおける研究成果がともするとそれら新しい研究成果の背後に押しやられ、忘却に付されている事態である。その意味で、本研究課題に関しては、あらためて後者の意義を再認識する必要が実感され、その作業に取り組んでいる。 関連する一次資料に関しては、本年度、ヴァイマル、イエナ、ベルリンの諸研究アーカイヴにおいて調査を実施し、実証研究の基礎となる重要な歴史的事実を確認するとともに、園芸学、生物学を専門とする海外研究者との学術交流を行った。あわせて実施したフィールドワーク(ヴァイマル、イエナ、デッサウ)の成果も踏まえ、1920年代初頭の初期バウハウスにおける実用庭園、とくにそこでの「ガーデニング(Gardening, Gaertnern)」の意義をバウハウス草創期に特有のデザイン問題として明らかにする論理的道筋が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ感染症拡大の状況を鑑み、国内においてインターネットによる海外データベースの活用や本務校附属図書館が提供するインター・ライブラリー・ローン・サービスを存分に活用して文献資料調査を進めるとともに、年度末にはドイツにおける一次資料調査ならびにフィールドワークを実施した。とりわけこの海外調査を通して初期バウハウスのガーデニング活動に関連する多くの新知見を得ることとなり、一層徹底した資料調査と資料の丹念な読解の必要性、さらに、そこから浮かび上がる極めて複雑な芸術・文化状況の把握にとって欠かすことのできないきわめて慎重な解釈の重要性を自覚するに至っている。それら新知見に基づく包括的な論考を年度内に纏め、発表するには至らず、そうした取り組みは翌年度の課題としたいと考えている。研究の進捗状況を総合的に見るなら、概ね順調であると言えるだろう。
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今後の研究の推進方策 |
近代庭園をデザイン論として検討する本研究が、基礎研究に基づいて目下の目標としているのは以下の点である。すなわち、近代デザインの展開にとって重要な役割を担ったバウハウスにおいて、とりわけその初期にヴァイマルで実践された「ガーデニング(Gardening, Gaertern)」が、当時のバウハウスにおいて議論されていた新しい芸術・文化の実現に向けた理念および実践とけっして無関係ではなく、むしろそれどころかその中核的な意義を担いつつ密接に関連しあっていた事態の解明である。 当面、初年度に推進した基礎研究ならびに学術交流から得た新知見を学術論文として公表することが喫緊の課題である。また、それと並行して一次資料調査を継続する必要があるが、その際、バウハウスの中核的芸術家であったヴァルター・グローピウス、ライオネル・ファイニンガー、ヨハネス・イッテン、ゲオルク・ムーヒェ、パウル・クレーに焦点を絞り、ほかならぬ彼らとバウハウスの実用庭園との関係性をスイスおよびドイツにおける集中的な調査を経て検討する方針である。
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