研究課題/領域番号 |
22K00199
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01070:芸術実践論関連
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
程塚 敏明 筑波大学, 芸術系, 准教授 (40292544)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 支持体 / 麻紙 / 楮 / 古典技法 / 折り染め / 裏彩色 / 現代日本画 / 空間表現 / 文間和紙 |
研究開始時の研究の概要 |
麻と楮を原料とした麻紙(まし)は、岩絵具の厚塗りに耐え得る画紙として近代に開発され、日本画制作における主要な支持体とされてきた。厚塗りの画面は、近代日本画の特質であり、日本画は麻紙に描くという新たな伝統も浸透させた。しかし、現代では岩絵具を多用する技法だけでなく、墨や絵絹などの古典材料を用いた表現も見ることができ、支持体としての麻紙も転換期にあると言える。そこで本研究では、現代日本画における支持体としての麻紙の独自性を再評価し、古典技法を手がかりに、新たな表現方法を実践的に検証する。
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研究実績の概要 |
1 前年度に引き続き、麻紙の原料となる楮についての調査・研究を行った。中村寿生文星芸術大学准教授の協力のもと、那須楮の栽培から芽かき、刈り取り、皮剥き作業に参加した。令和4年度の皮剥きで白皮にした原料が、新潟県門出和紙工房で「文間和紙」となり納品された。和紙の厚みを3匁、5匁、7匁としてそれぞれに漉いてもらい、厚みの違いによる支持体としての機能について、染め紙などの実験を通して検証した。 2 古典技法である染め紙について、技法材料実験を展開した。今年度は藍1色のみを使用し、筑波大学芸術専門学群および大学院の日本画領域学生35名にそれぞれ「折り染め」を実践してもらい、約180枚のサンプルを作ることができた。サンプルを記録した上、折り方の違いによる表現(模様)の違いについての検討を行った。 3 裏彩色の表現については雲肌麻紙を支持体として、綿布などの刷毛以外の用具で滲み止めを行うなど、制作実践を通してその効果を検証した。成果として「第50回記念創画展」(令和5年10月24日から30日、東京都美術館。同年11月7日から12日、京都市京セラ美術館)において作品「Splendor」(162×162cm)として発表した。 4 筑波大学開学50周年を記念したイベント「アート&デザインストリート」の実施にあたり、染め紙を用いたフラッグの作成を行った。上記2で作成した「折り染め」のサンプルと、文間和紙に筑波ゆかりのモチーフを水墨で描いたものを貼り合わせ、50×30cmのフラッグを35枚作成した。フラッグは2023年8月29日から10月9日の期間、つくばセンター駅バスターミナルにて設置した。 5「楮皮引きワークショップ」(2023年5月30日、筑波大学アート&デザイン実習室、筑波大学芸術専門学群および大学院の日本画領域の学生)を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
麻紙の原料のひとつである楮について、自ら栽培から関わったものを「文間和紙」として支持体となるまで関わることができている状況は、今後の研究において大変有益であった。表現に適した支持体を新潟県門出和紙工房との交流のなかで引き続き検討していきたい。 古典技法の染め紙については日本画領域学生の協力のもと、多くの制作実践とサンプル資料を作成することができた。加えて染め紙フラッグは当初の計画にはなかったが、研究の方向性として有効であると判断し実施した。結果として公共施設に展示できたことは、平面以外での表現の可能性について検証する機会となり、また研究の社会的なアピールにもなった。 裏彩色の表現技法においては(株)小島美術の開発した中性サイズ液(スチレン樹脂系エマルジョン)を用いた表現効果に有用性を示した。ドーサ液より粘性のあるサイズ液は、ある程度意図したにじみの表現を作ることが確認できたので、引き続き制作実践を通して技法としての精度を高めたい。 一方で、日本画教育における支持体の調査と現代日本画作家による麻紙を支持体とした表現についての調査の方が滞っている。コロナ禍5類へ移行になったのが5月であり、2023年度当初に計画が立てられなかったことと、当初の計画になかった染め紙フラッグの制作に多くの時間を費やす結果となったことで、調査を進めることができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
日本画教育における支持体の調査と現代日本画作家による麻紙を支持体とした表現についての調査を行う。研究代表者の所属している美術団体(創画会)の作家や全国の美術大学を対象に、SNSを通じたアンケートなども活用して調査を進めていく。また市販されている麻紙についても同様に調査を実施し、現在の状況を把握していきたい。 麻紙を支持体として、裏彩色を用いた空間表現については5月に個展として作品発表を行う予定である。これまでの研究成果を確認し、今後の課題を検討していく。染め紙については多くの制作実践ができたことから、表現技法として作品への展開をはかる。 茨城県利根町での那須楮の栽培から和紙へつなげる活動が継続的に参加していく。楮の皮剥きワークショップなども引き続き実施の予定である。
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