研究課題/領域番号 |
22K00212
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01070:芸術実践論関連
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研究機関 | 愛知県立芸術大学 |
研究代表者 |
岩永 てるみ 愛知県立芸術大学, 美術学部, 准教授 (80345347)
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研究分担者 |
阪野 智啓 愛知県立芸術大学, 美術学部, 准教授 (00713679)
河内 将芳 奈良大学, 文学部, 教授 (40340525)
高岸 輝 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (80416263)
小島 道裕 愛知県立芸術大学, 美術学部, 非常勤講師 (90183805)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 月次祭礼図屏風 / 復元模写 / 室町幕府 / 祭礼図 / やまと絵屏風 / 洛中洛外図 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は中世絵画の画面構築方法を実技的視点から捉え直し、歴史学と美術史学の考証から失われた「月次祭礼図屏風」左隻を推定復元することによって、中世の構図法の復元を試みるものである。「月次祭礼図屏風」の構図の捉え方は、《空間構造》《時間構造》《聖俗構造》の三つの要素が複雑に絡み合った中世独特のものである。「月次祭礼図屏風」左隻は模本も原本も残されていないが、これまでに取り組んできた右隻の復元を通じた詳細な分析を基盤として、中世史研究者、美術史研究者と検討し、さらに他作例の要素を検討して重ね合わせていくという実技の作業を重ねることで、一定の素案が提出できると考える。
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研究実績の概要 |
本研究では、近世の洛中洛外図屏風をはじめとした「都市・祭礼・風俗図」と、中世の「月次祭礼図屏風模本」や、社寺縁起、参詣曼荼羅、扇面に描かれた祭礼図などの構図の詳細比較によって、祭礼図における中世から近世への移行の様態について明らかにして、その差異から中世の「構図感覚」の変化を導き出すことを目的としている。その方法として、「月次祭礼図模本」の失われた左隻の想定図を構想することにより、上記課題を明確にしていきたい。 令和4年度では、祭礼分野の描かれ方に注目して、歴史分野、美術史分野の検証を交えながら導かれる「中世に描かれたであろう祭礼・年中行事」の事象や図柄を手掛かりに、「月次祭礼図屏風」左隻に描かれていた可能性のある景観と祭礼行事を想定し、構図の再現を中心とした想定略図の作成を試みている。具体的には、復元本「月次祭礼図屏風」(右隻)に再検討を加えて、左隻に関わる事象の抽出を行った。加えて図像が最も近いものと考えられる「祭礼草紙」の資料化を行い、描かれた祭礼行事の分析を加えた。 また画題が「月次祭礼図模本」と共通する可能性のある「京洛月次扇面流屏風」と、天慶三年屏風をはじめとした古代の屏風歌に採用された月次の行事の抽出を行い分析を加えた。 「月次祭礼図模本」の再検討として構図法のほかに、描かれた景観に対する歴史学からの詳細分析を加えており、新知見が導き出される可能性が出てきた。 ほか、15世紀から16世紀前半期におけるやまと絵屏風の構図法についての分析を行い、それらと中世の祭礼図である「月次祭礼図」、近世の都市図である「洛中洛外図」との比較検討を進めた。また令和6年1月に、京都工芸繊維大学で他科研との合同研究発表展を企画しており、その準備を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
構図法の分析では、15世紀を中心とした中世やまと絵屏風の遠景・中景・近景の分析を基礎として、主題の配置方法を整理することができた。また主題が一様ではない「月次祭礼図屏風模本」や「十界図屏風」では、遠景を統一することによって同一地形のように見なしていることや、各主題が二扇単位で配置されていることを明らかにできた。これは鎌倉時代の二扇縁取り屏風の名残である可能性があり、今後の構図法の検討に対する有効な知見が得られた。 上記の構図法を基にして、失われた左隻の構図案も進捗している。右隻との関連を想起させる行事が多く描かれる「京洛月次扇面流屏風」と、天慶三年屏風をはじめとした古代の屏風歌から抽出した祭礼行事、あるいは洛中洛外図などから想定される年中行事を構図法に従いながら配置することで、予想される左隻の姿が具体化しつつある。中世、とくに15世紀に合致する祭礼と年中行事の候補をある程度絞り込むこともできている。 歴史学からは、右隻の幕府(三条坊門殿)と祭礼の描写をさらに分析することによって、足利義持期の日野氏が制作に積極的に関与している可能性を掘り下げている。これらが正しいとすれば、景観年代をかなり絞り込めるところまで研究が進捗している。 また令和6年1月に京都工芸繊維大学工芸資料館におけるシンポジウム案についても、基本構想をまとめることができた。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度は近世初期頃の、主題が一様ではない祭礼図や都市図をはじめとした屏風絵の構図法を整理することで、中世との構図法の対比を試みたい。また二扇(あるいは二面)一場面の構成方法も追及すべく、14世紀以前の大画面絵画の構図法の分析も試みたい。ただしこの頃は現存作例が極めて少ないため、画中画も想定範囲と考えている。 また左隻の想定では、構図案をさらに追及すべく、想定される行事の類似画像や建造物、自然景の配置なども具体化し、白描画風のCG作成を行って図案および祭礼行事、そして景観年代に直結する日野氏関与説について検討を進める予定である。 さらに、令和6年1月に京都工芸繊維大学工芸資料館で、他科研との合同研究発表展およびシンポジウムを企画している。本科研からは月次祭礼図関係の研究成果を発表する予定があり、昨年度から今年度にかけての新知見を発表やシンポジウムに向けて、整理も行っていきたい。
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