研究課題/領域番号 |
22K00234
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01070:芸術実践論関連
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研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
谷地田 未緒 大阪公立大学, 都市科学・防災研究センター, 都市科学・防災研究センター特別研究員 (70799824)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | アイヌ古式舞踊 / 重要無形民俗文化財 / 無形文化遺産 / 民俗芸能 / 現代的表現 / 舞台芸術 / 文化政策 / 先住民族政策 / 文化財・文化遺産 |
研究開始時の研究の概要 |
2019年、アイヌ民族が日本の「先住民族」であると法律上に初めて明記された。同法をはじめとするアイヌ民族に関する政策の多くは文化活動への支援がその中核を成しており、同化政策によるトラウマの回復や社会保障等の議論を先送りしていると批判されてきた。本研究はこうした政策を文化政策の専門的見地から再検討し、先住民族の視点や権利を反映した積極的な文化振興のあり方を探る。特に重要無形民俗文化財に指定されているアイヌ民族の<舞踊>をはじめとする舞台芸術について、文化財指定の歴史的経緯を明らかにするとともに、周縁的な位置付けの文化財ではなく、現代的表現をも含む先住民族文化遺産と位置付け直すことを試る。
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研究実績の概要 |
「アイヌ古式舞踊」などをはじめとするアイヌの芸能が文化財として指定される歴史的経緯を明らかにするため、早稲田大学演劇博物館に所蔵されている本田安次資料のうち、本田の調査ノート(手記)の調査を実施した。その結果本田は、調査初期から助力していた山本多助から特に多くの情報を得ており、文化財指定に向けた文化庁の最終調査では、山本の助言が保護団体候補へと直結している様子が明らかになった。文化財指定へのアイヌ民族自身の貢献を明らかにしていくことは、先住民族の視点から文化政策を検討するための重要な基礎資料となる。これら手記の分析は、今後論文として発表する予定である。 この他、現代における表現活動の事例を調査として以下を視察した:『白老セッション』(ドローイングとムックリの即興演奏)、 『VOICE』(タップダンスとアイヌ伝統歌の共演)、『三石アイヌ音楽祭』、『ウタサ祭り』、『NOCIW CIP~ほしふね』、ウポポイによる特別公演『イノミ アイヌの祈り・歌・踊り』、英国IKONギャラリーマユンキキ個展『Siknure: Let me live』(オンラインでの情報収集)。こうした現代的な表現活動は、先住民族政策やアイヌ文化支援の文脈ではこれまでほとんど語られてきていない。しかし、先住民族の文化財保護や文化活動支援を、文化政策の視点から包括的に検討する際、これらのような伝統的知識を活用した現代的表現・芸術活動はその対象として欠かせない。文化財/文化遺産に接続しながら、現代を生きる表現者として自らのルーツと向き合うアーティストたちの活動とその支援制度について、今後論文などで発表していく予定である。 今年度の成果発表として、国際学会での研究発表を2件行った。また、文化財指定の経緯に関する論文を国立アイヌ民族博物館研究紀要で発表した。また『アートマネジメント研究』に寄稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウイルスによる移動制限が徐々に解除され、資料調査、事例調査、学会参加等は順調に進展した。研究成果の発表については特に順調に進展し、現地参加を予定していた国際文化政策学会(ICCPR)はオンライン発表となったが、アイヌ古式舞踊を題材に、日本の先住民族政策と文化政策の特徴を比較する内容を発表した。また、2年目に訪問を予定していたアジア大洋州文化教育研究ネットワーク(ANCER)の国際大会が2022年に開催されることとなり、無形文化財の伝承者養成事業とアイヌ古式舞踊の継承の状況を比較した考察を発表した。日本文化政策学会年次研究大会では、文化財『アイヌのユーカラ』を巡る無形文化財と無形民俗文化財の継承者支援の比較について発表した。資料調査及び事例調査については、概要に記したとおり計画通りあるいは計画以上に進めることができた。一方海外の事例比較のために計画していた公開シンポジウムと一部の現地調査については翌年度以降に繰り越すこととした。
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今後の研究の推進方策 |
2年目となる2023年は文化財指定の経緯に関する資料調査と、現代的表現とその支援制度を巡る内容について論文等の形でまとめていく。成果の共有は、所属する国際学会が開催されない年に当たるため、論文執筆やそのための資料収集・事例調査、国内での学会発表に注力する。また3年目に国際事例を比較するシンポジウムを実施するための事前調査と準備を実施する。
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