研究課題/領域番号 |
22K00238
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01070:芸術実践論関連
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研究機関 | 愛知淑徳大学 |
研究代表者 |
村上 泰介 愛知淑徳大学, 創造表現学部, 教授 (40410857)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | ニューロダイバーシティ / ヴァーチャルリアリティ / 感覚統合 / 自己定位 / 離人感 / ヴァーチャル・リアリティ / 自閉スペクトラム症 / バーチャルリアリティ / 自閉症スペクトラム / メタバース |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、ニューロダイバーシティ(脳・神経機能の多様性)の考察をもとに、人間の感覚統合や脳・神経における情報処理の多様性に着目し、この多様性が生み出す現実像をVR(バーチャルリアリティ)で構築し、ニューロダイバーシティ間の相互作用として展開する新しい芸術表現の確立を目指している。ニューロダイバーシティのうち自閉症を中心に、国内外の福祉施設や児童館と連携し調査を進め、調査をもとにした独自の複合的なシステムによるVR環境を構築し、展覧会やワークショップを実現する。
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研究実績の概要 |
本研究は、ニューロダイバーシティ(脳・神経機能の多様性)の考察をもとに、人間の感覚統合や脳・神経における情報処理の多様性に着目し、この多様性が生み出す現実像をバーチャルリアリティ(VR)で構築し、ニューロダイバーシティ間の相互作用を新しい芸術表現として展開することを目指している。 2023年度(研究の2年目)には、ニューロダイバーシティに関する文献調査をもとに開発した装置を福祉施設や児童館で展示し、ワークショップを開催する計画であった。しかし、新型コロナウイルス感染症の影響で福祉施設の状況が大きく変化し、2023年度も有効な意見聴取ができなかった。その一方で、文献調査を継続し、VR用ソフトウェアの開発を進めることができた。さらに、愛知県児童総合センターで展示とワークショップを実現し、その成果をもとに新たな福祉施設との連携を模索している。 文献調査の中で、ニューロダイバーシティの事例として、自己定位の在り方が特徴的な事例や、離人感・現実感消失症などの状態が浮かび上がり、これらを体験として表現するためにVR環境が非常に適していることが分かった。VRによる体験を通じて、自己の感覚や現実認識がどのように変わるかを作品の鑑賞者に体験させ、ニューロダイバーシティの重要性を感じてもらうことを目指して研究を進めている。 開発段階のVR用ソフトウェアでは、仮想空間内の焦点距離などを変化させることができ、焦点を合わせる機能を体験者の身体から分離することが可能となった。また、ヘッドマウントディスプレイの無線通信機能(Bluetooth通信)を使用して、アクチュエーターを制御できる段階にまで達しており、これらの機能を活用して離人感や自己定位の多様性が個々の現実感に与える影響を多角的に探求することで、異なる感覚や認識のあり方に対する理解と共感を深める機会を提供しようと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、バーチャルリアリティ(VR)環境を体験するためのインタラクティブな装置を開発し、児童館や福祉施設で展示やワークショップを通じて体験してもらい、その結果をフィードバックしながら装置を発展させることを重視していた。しかし、新型コロナウイルス感染症の影響で、当初予定していた福祉施設での調査が不可能となり、新規の適切な調査対象が見つからず、開発へのフィードバックが得られずに開発が一部滞った。一方で、文献調査を進展させ、ニューロダイバーシティの現実感の多様性に着目し、自己定位の多様性や離人感などに焦点を当て、主にVR装置のソフトウェアの改良を進めた。
VR装置のソフトウェア改良に関しては、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)の無線通信機能(Bluetooth通信)を利用してHMD外部のアクチュエーター(モーターなどの駆動装置)を制御する基盤技術の開発が終了した。また、VR空間内の焦点距離を3次元コンピューターグラフィックスにソフトウェア的にフィルターをかけて変化させることが可能となり、VR空間内で焦点距離を身体から分離するソフトウェア処理が実現した。
完成したVR用ソフトウェアを組み込んだインタラクティブ装置(以前に開発したものを転用)を愛知県児童総合センターで展示し、ワークショップ形式で一般参加者に体験してもらった。参加者からのフィードバックをもとにソフトウェアの改良を進める計画である。
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今後の研究の推進方策 |
完成させたいヴァーチャルリアリティ(VR)装置のソフトウェアの基盤は構築できた。最終年度は、この構築したソフトウェアをもとにインタラクティブなニューロダイバーシティの体験装置を完成させ、児童館や福祉施設などで展示とワークショップを開催し、一般公開した上で参加者よりフィードバックを得ることを目指している。 そのためには、ニューロダイバーシティに含まれる多様な自己定位のあり方について更に調査を進める必要がある。調査は文献調査を中心に進めるとともに、定型発達の人を対象とした実験も行いたい。また、離人感・現実感消失症に関する文献調査も進め、現実感がスペクトラムな多様性を持つことを体感できるようなVR空間の構築を目指す。 さらに、当初の計画では国外での展示やワークショップも構想していた。これについても可能であれば実現し、より広範なフィードバックを得ることで、装置の改良とニューロダイバーシティに対する理解を深める機会としたい。 以上の目標を達成するために、引き続き文献調査と実験を進め、VR装置のソフトウェアとハードウェアの両面から改良を行う予定である。展示やワークショップの開催を通じて得られるフィードバックを活用し、インタラクティブな体験を通じてニューロダイバーシティの多様性とその重要性を広く伝えることを目指している。
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