研究課題/領域番号 |
22K00247
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01070:芸術実践論関連
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
長谷川 慎 静岡大学, 教育学部, 教授 (00466971)
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研究分担者 |
野川 美穂子 東京藝術大学, 音楽学部, 講師 (50218294)
長谷川 愛子 東京藝術大学, 音楽学部, 教諭 (90466970)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 箏 / 箏曲 / 地歌 / 古態の楽器 / 長磯箏 / 三味線 / 楽器変遷 / 古楽器 / 古楽器演奏 / 地歌箏曲 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、これまで積み上げてきた研究成果を基盤として地歌箏曲の古態の箏である「長磯箏」「五八箏」を現物調査と絵画等の調査によりアーカイブ化をすることと、複数の古態の箏を使用可能な状態に調整、実際に演奏し、演奏を通じてフィードバックされた結果を実演家・楽器調整者・研究者の3者で共有し、古態の楽器の演奏表現を支える楽器調整についてさらに研究を進め、現代における古態の箏演奏の可能性と課題を明らかにするものである。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、古態の箏(長磯箏・五八箏)の楽器に関する調査と古態の箏を使用した演奏表現の可能性を明らかとすることである。令和4年度は、(1)基礎的研究と仮説の構築として古態の箏についての関連資料を収集し、それらの分析、検討を通して、課題解決のための方法・内容の理論的枠組みを仮説的に構築すること、(2)楽器製作者への調査として箏製作者へのインタビューおよび箏製作者から受けた情報の整理、(3)古態の箏について、フィールドワークによって対象となる古態の箏(長磯箏・五八箏)の収集と採寸の実施、(4)演奏家へのインタビューを通した情報収集、(5)録音に残っている古態の音色についての調査として、昭和初期以前のSP盤等に残っている録音を中心に調査し、かつての古態の箏による演奏から古態の箏の音色についての音色の定義、(6)以上をもとに1年次のまとめ情報・意見交換の場としてシンポジウムを開催し、外部および研究協力者である実演家や楽器製作者に発展的な研究のための示唆を得る計画であった。今年度はこのうち(1)(3)(4)(5)を実施し(2)(6)については感染症対策を十分取ることができないため見送った。(1)に関して、主に京都圏の明治期以降の楽器店目録を収集・調査し「長磯箏」の名称由来を調査した。(3)に関しては、個人蔵および博物館所蔵の古態の箏を調査することができた。(4)に関しては、主に京都系演奏家について実施した。(5)に関して、SPレコードを収集し音色についての情報収集にとどまった。この他に、古態の箏の修理および付属品の現在の調達状況について調査を行なった。古態の箏の演奏に用いられる「箏爪(かつて京流と呼ばれたもの)」、「飾り房」、「弦(色付き)」については今日でも同等品を製作可能であることが判明した一方で、「箏本体の装飾(木象嵌風の飾り)」に関しては修理をできる職人はいないことを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究初年度ということで、古態の楽器に関しての刊行物から楽器店カタログにいたるまでの文字情報、楽器現物、付属品に至るまで幅を広げて調査を行なった。楽器店カタログは現存するものは少なく、楽器店所蔵のものを入手したり、古書等で収集を行ったりした。また現物調査では、古態の箏の中でも「長磯箏」とよばれる装飾性の高い楽器に施されている飾りは経年劣化により剥落等の破損が見られるものが多い。しかし、今日そうした装飾を修理できる職人はもちろんのこと、どのように製作されたのかも不明であることが楽器店への聞き取りで明らかとなった。一方で「箏爪」「飾り房」「弦」といった付属品に関しては、現在も製作が可能である反面、費用が高額となることも判明した。 また、楽器職人への聞き取りはできなかったが、名工と呼ばれた箏職人の末裔の方へのインタビューを行うことができ、「なぜ名工と呼ばれたか」という疑問に対する示唆を得ることができた。疑問に対する答えは未だ五里霧中の状態ではあるが一筋の明かりが見えたように感じている。 楽器の装飾に関して、他の工芸品からの示唆を得るべく文献や現物の確認を行っているが、この点に関しても同様の状態である。 演奏表現に関しては、実際に長磯箏を楽器調整し演奏を行う箏を通して、爪の当て方、撥弦位置、力の入れ具合などの検証を行い「箏曲組歌演奏会」で舞台演奏を行なった。 以上のことから、感染症のリスクを考慮に入れて制限はあったものの当初計画はおおむね達成できていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度も1年次の(1)から(5)について引き続き調査を実施する。特に(1)については、古態の楽器に関する現物資料をさらに収集し、装飾の製作工程に関して情報を得る。さらに(2)については、対象エリアを広げて箏製作が盛んな中国地方と長磯箏を演奏に用いる「沖縄箏曲」に関するフィールドワークを実施し、更なる調査・資料収集を行う。(6)に関しては、実施を見据えて準備を行う。
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