研究課題/領域番号 |
22K00268
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01080:科学社会学および科学技術史関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
石原 孝二 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (30291991)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | PTMF(パワー、脅威、意味のフレームワーク) / 人権モデル / メンタルヘルスケアの社会化 / 批判的精神医学 / Devereux / ethnic psychosis / エスニック・サイコーシス / ヤスパース / 民族精神医学 / ドゥヴルー / Jaspers / 生物・心理・社会モデル / 精神疾患 / 多元主義 / 相互作用モデル |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は精神疾患の知の枠組みに関する「領域多元主義」の特徴を明確化するとともに、領域多元主義が、当事者の知の組織化を制限しうるものであることを示すことを試みる。また領域多元主義に代わるものとして相互作用モデルを構築することを目指す。さらに、批判的精神医学の動向などを参照しながら従来の精神疾患の概念や診断・治療思想などの問い直しを進めていく。
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研究実績の概要 |
昨年度は、ヤスパースやドゥヴルーの議論に即して領域的多元主義を特徴づけたが、本年度は、PTMF(パワー、脅威、意味のフレームワーク)や人権モデルの検討を行った。PTMFは、心理的な苦悩や厄介な行動等を状況への心理的反応として捉える点において、アドルフ・マイヤーやオープンダイアローグの非生物学主義的な考え方一般と共通する点があるが、社会的要因を強調し、まさに「パワー」の問題に焦点を当てることにその特徴がある。これまでの精神科医療や心理臨床に対する批判は、主に医療化・心理化という文脈において行われてきたが、近年は、メンタルヘルスケアの専門的なサービス提供のあり方として、より社会的な側面を強調する動きがみられる。WHOによる、「人権モデル」にもとづくメンタルヘルスケアの促進もそうした動きの一つである。本研究では、こうしたWHOの動きやPTMFのプロジェクトを「メンタルヘルスケアの社会化」として特徴づけることを試みた。 本年度はまた批判的精神医学や、向精神薬と精神疾患概念の関係に関する検討も進めた。向精神薬に関する批判的な研究で有名であり、批判的精神医学の代表的な研究者の1人であるジョアンナ・モンクリフ教授(ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン)を招へいし、モンクリフ教授を中心としたシンポジウム「精神科の薬を問い直す―薬を使うこと、やめることに関して知っておいてほしいこと」を開催した。本シンポジウムには、(当日のみで)会場・オンラインあわせて約600名が参加した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題は、精神疾患に関する「領域多元主義」を批判し、精神疾患の概念や診断・治療思想を問い直すことを目的としている。PTMFや人権モデルは、領域多元主義の基盤ともなっている生物・心理・社会モデルとは異なる枠組みで心理的な苦悩をとらえようとするものであり、本年度は「メンタルヘルスケアの社会化」という視点から、PTMFや人権モデルを捉えなおし、論文としてまとめた。また、批判的精神医学の検討を進めたほか、精神科疫学の精神疾患概念への影響の検討にも着手した。概ね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は精神科疫学と向精神薬に関する研究がそれぞれ精神疾患の捉え方に対してどのような影響を与えてきたのかを考察し、精神疾患の捉え方に関する「相互作用モデル」の検討を進める。また批判的精神医学や人権モデルのさらなる検討も進める。
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