研究課題/領域番号 |
22K00271
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01080:科学社会学および科学技術史関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
伊藤 憲二 京都大学, 文学研究科, 准教授 (90345158)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2026年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2025年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | 学術雑誌 / 東京数学物理学会記事 / プログレス・オブ・セオレティカル・フィジックス / 電気学会雑誌 / 査読制度 / Alex Csiszar / 科学史 / 日本数学物理学会誌 / 東京物理学校雑誌 / 東洋学芸雑誌 |
研究開始時の研究の概要 |
英語圏の科学史において、最近急速に発展しているテーマの一つが学術雑誌の歴史的研究である。学術雑誌は今日極めて重要な知識インフラストラクチャーであるが、様々な問題に直面しており、これに対処するための基礎研究の積み上げが必要とされている。本研究はこれまであまり研究されてこなった日本の学術雑誌を対象として、学術雑誌についての科学史・科学社会学的研究に貢献しようとするものである。研究協力者の参加を得て研究グループを形成し、質的方法と量的方法を組み合わせ、とくに両者を結び付ける可能性が高いと思われるトピックモデルによる機械学習的な手法と、それを補完する質的量的研究方法を開発・実施しようとするものである。
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研究実績の概要 |
今年度より研究代表者は『東京数学物理学会記事』およびその継続後誌の研究を事例として選び、その量的研究のための準備を進めた。年度内に計算機を用いた分析にとりかかることを予定していたが、この雑誌は時代とともに大きく性格を変動させているので前処理のためにより質的調査が必要であることが判明した。そのためこの年度は主に雑誌の質的分析と雑誌の運営に関するアーカイブ調査を進めた。これによって得られた知見について研究発表の準備を始めた。 計算機による分析のためにトピックモデルだけでなく、深層学習ももちいる可能性を見据えて、配列の直観的な扱いに優れているMATLABを用いることを決めた。MATLABを用いるための準備も進めた。 研究発表としては『励起―仁科芳雄と日本の現代物理学』を出版した。これは学術雑誌に直接関するものではなく、ここ10年の研究成果をまとめたものであるが、仁科芳雄と彼を取巻く集団および物質的環境の実証研究を通して知識生産を成り立たしめるインフラストラクチャーについて論じたものであり、広い意味での知識インフラストラクチャー研究の一環であると言える。これ以外に研究代表者はアレックス・シザール『科学ジャーナルの成立』の柴田和宏による翻訳に「解説」を寄稿した。本書は今世紀に新らたに起こった学術雑誌の科学史的な研究における最重要書であり、この「解説」はその意義を日本の読者向けに説明するものである。 研究協力者の秦皖梅氏は査読制度を焦点にして、戦後日本の代表的な理論物理学の欧文誌である『プログレス・オブ・セオレティカル・フィジックス』の研究を進め、学会発表のほか二本の論文を投稿し、一つは出版され、一つはアクセプト済みである。また、学術雑誌の科学史的研究についての総説論文を投稿し、アクセプトされた。現在、戦前日本のもっとも水準の高い電気工学の雑誌であった『電気学会雑誌』の研究に取り組んでいる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
取り上げた事例の性質および昨今の大規模言語モデルを用いた自然言語処理のために、研究の方針を変更し、本年度予定していたこととは別の作業を起こったが、これはむしろ研究テーマの拡がりを意味するもので、研究成果は順調に得られている。とくに学会発表や著書・論文の発表状況は、研究が順調に進行していることを示している。また、『東京数学物理学会記事』(およびその後継後誌)の出版・編集、とくに東京数学物理学会(およびその後継学会)との関係についての新たな知見が得られ、それ自体が興味深い研究テーマとなると予想している。
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今後の研究の推進方策 |
今後、研究代表者は『東京数学物理学会記事』およびその継続後誌の分析のために、質的・量的両側面からの研究を進める。まずは、この雑誌の変遷について、学会との関係および雑誌の性格の面から分析した研究を推進する。それと並行して、コンピュータを用いた分析を進めるための方法論的な研究と、当該学術雑誌を分析の俎上に載せるための前処理を進めていく。 今後、対面での研究会の開催も問題なく可能になると思われるので、研究協力者との研究会を開催したい。 その一方で、2023年3月に、知識インフラストラクチャー論の指導的な研究者であるポール・エドワーズの主著が『気候変動社会の技術史―気候モデルと観測データと国際政治』として翻訳出版された。これを機に日本でも知識インフラストラクチャーについての関心が高まると思われるので、これに応える研究および著作活動にも力を入れたい。
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