研究課題/領域番号 |
22K00284
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01080:科学社会学および科学技術史関連
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
舟津 悠紀 立命館大学, 衣笠総合研究機構, 研究員 (10937650)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 優生学史 / 優生思想史 / 優生政策 / 衛生行政 / 優生学・優生思想 / 衛生史 / 科学史 / 医学史 |
研究開始時の研究の概要 |
優生保護法(1948年)下に実施された強制的な不妊手術は優生政策の展開そのものであり、戦後におけるそれは過剰人口問題を背景に、「逆淘汰」への危惧という優生思想のもと実施された。強制的な不妊手術を可能とした優生保護法4条・12条による手術件数には、法運用を所管した地方自治体で、その実施件数に大きな偏差がある。しかし、その制度的実態は明らかでなかった。 本研究はこの実態を検討し、地方衛生行政下における優生政策・優生行政の展開像を示すことを目的とする。研究対象とする各自治体について50・60年代の規則制度および手術申請者・被申請者の検討から、その時代・地域の特質と変遷、自治体間の偏差を比較分析する。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、地方衛生行政下における優生政策・優生行政の展開像を示すことにあった。アプローチとしては①優生保護法による強制的な不妊手術の実態について、そこに生じた地方自治体における偏差・相違を明らかにすること。②50年代・60年代における変化を検討することが求められた。そのため、研究活動としては「(1)強制的な不妊手術の実態に係る資料の収集」「(2)資料分析」「(3)総合的な比較分析」が必要となってくる。 今年度の研究活動では「(1)強制的な不妊手術の実態に係る資料の収集」に注力した。当初の予定としては優生手術件数の多かった自治体として北海道、宮城県、神奈川県、大分県、少なかった自治体として群馬県、福井県、奈良県、鳥取県を検討対象とし、資料状況から兵庫県、千葉県の検討も想定した。 実際の研究活動としては神奈川県を対象から除外、新たに静岡県、京都府、大阪府、岡山県をここに追加した。千葉県については保留段階にある。資料の検討・精査から優生手術件数の多い自治体(北海道・静岡県・大分県・岡山県・大阪府)、手術件数の少ない自治体(群馬県・福井県・奈良県・鳥取県)に再編を行い、そこに京都府・兵庫県を加えて優生保護法関連資料および自治体刊行資料の収集を実施した。 これら研究活動により、優生保護法関連資料や自治体刊行資料の収集がほとんど完了段階にあり、分析・検討を進めるための資料群の整理およびデータ入力を実施している。また、資料の散逸を補完するものとして『衛生統計』や行政の年度報告書『衛生概要』などの資料・資料情報、個人分析に用いる郷土文献・資料およびそれら資料情報についても現地調査で適宜収集を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の主とした研究活動である「(1)強制的な不妊手術の実態に係る資料の収集」にあっては、北海道、群馬県、福井県、静岡県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、鳥取県、岡山県、大分県を対象として、検討に必須となる自治体刊行資料をほとんど収集できた。この際、神奈川県を除外、千葉県を保留としながらも、調査対象を当初の予定より広げ、静岡県、京都府、大阪府、岡山県に対しても開示請求など活用しながら調査を実施、必要資料の収集ができた点で研究の展望を広げられたと考えている。この点、次年度に調査収集を予定していた資料についても収集できたものがあり、進捗状況としては良好と認識している。 また、分析・検討開始に向けて、収集した資料群の整理作業およびデータ入力作業にも進むことができており、おおむね順調に進展していると認識している。 ただ、入手した資料のマスキング範囲が想定以上に広いケースや入手した資料から得られる情報が想定以上に少ない場合が出てきており、この点について資料の欠落部分を補完する必要が求められるケースが想像以上にあったと認識している。また、調査によって新規に入手した資料情報などもあり、追加調査の必要が生じてきていると認識している。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は主となる研究活動として「(2)資料分析」を積極的に実施していく予定である。今後における研究の推進方策として具体的には、①収集した資料群の整理作業およびデータ入力作業、これは資料の分析・検討作業の前提条件として必須となる。②①で得られたメタデータをもとに研究計画上で示した「(2)資料分析」を実施していく。 ただし、「現在までの進捗状況」で言及した想定外の事態にも適宜対処が求められる。つまり、分析作業の行程においてはその作業から得られる情報をもとにして、同時に今まで入手してきた資料からでは明らかでない情報、必要資料を改めて絞り込んでいく作業が必要となる。つまり、必要情報の欠落箇所の同定を実施し、この手続きによってマスキング範囲の広範さ、収集可能な情報の少なさに最小限の作業量で対処していきたい。これらの検討・作業に基づいて、「(2)資料分析」および③資料から得られなかった情報の補完に向けた追加調査を適宜実施していく予定である。
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