研究課題/領域番号 |
22K00286
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01080:科学社会学および科学技術史関連
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
高岩 義信 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, その他部局等, 協力研究員 (10206708)
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研究分担者 |
平田 光司 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, その他部局等, ダイヤモンドフェロー (90173236)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 原子核研究将来計画 / 文部省学術審議会 / 研究者コミュニティ / 大学共同利用研究機関 / 大学附置研制度改革 / 高エネルギー物理学研究者組織の形成 / 加速器機種の選定 / 宇宙線超高エネルギー / 宇宙線研究拡充計画 / 日本学術会議 / 研究計画提案・研究機関創設 / 公的機関の機能 / 素粒子・原子核・宇宙線 |
研究開始時の研究の概要 |
1960年代の原子核研究将来計画は「原子核物理学」の研究者が一体として取り組むものとして計画されたが、その実現に向けての活動が具体化する過程において公的機関と研究者の組織の関係に変化があって既存の原子核研究所(INS)と1970年代に新たに設置される3分野に固有の研究機関 KEK, RCNP, ICRR を加えて再編された。それらの後発の研究施設の設立はわずかな年月の間隔で実現されているのにもかかわらずその経緯には差がある。そのことを公的機関の側の変化とそれに対する研究者の組織の対応との観点から分析して理解する。
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研究実績の概要 |
1960年代の「原子核研究将来計画」では、当該分野の共同利用研究施設である東京大学附置・原子核研究所を拠点とし日本学術会議・原子核特別委員会に集結する研究者のコミュニティによる加速器の設計および測定器の開発が行われ、素粒子研究所という新たな共同利用研究機関の設立を目指した。文部省ではそのような大型計画を進めるための制度設計のための協議が学術奨励審議会およびその後継の学術審議会において始まった。その一方で他分野からも出されていた大きな研究計画は、その体制のひな型となるはずの素粒子研究所の体制が定まるまで、進行が抑えられる結果となっていた。またその頃は大学において紛争の多発する時期と重なり、文部省では既存の大学の附置研を含む組織制度の改革が課題として認識されていた。そのため、新たな研究施設を要請するさまざまな将来計画には少なからぬ影響を与えることになったと見られる。 高エネルギー物理に分野を限定した高エネルギー物理学研究所が大学から独立した国立の共同利用機関として設立された後は、他分野の大型計画をこの方式で設置する道が開かれたのと対照的に中規模の大学附置の施設での将来計画は、研究者のコミュニティの圧力と大学のイニシアティブが対抗する構図が顕著になったのではないかという仮説が、検証すべき課題としてここで浮かび上がった。 以上の考察のもとに手始めに、これまでの原子核将来計画の調査を行ってきた経験を活かし、「素粒子研究所」を推進した高エネルギー分野と密接にかかわりのある宇宙線と低エネルギー原子核分野の将来計画についてまず調査することにし、現段階は、そのための資料の調査及び当時の関係者への聞き取り調査を開始したところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
最優先の調査の対象と考えた宇宙線分野の資料調査において、その分野の中心的な共同利用研究機関である東大附置宇宙線研究所に重要な資料が確保され残っていると期待し調査したがそうではなかった。最初期の大学附置の共同利用研として京都大学の基礎物理学研究所と同時期に設置された東大の宇宙線観測所は固有の研究者ポストを持たないものであったので研究者による運営の記録がシステマティックに保存されたか定かでない。また宇宙線研究の共同利用研として拡充すべく宇宙線観測所に統合された原子核研究所の宇宙線部の記録は、原子核研究所の資料とは異なる管理のもとに置かれた。さらには敷地の移転があったので、その折に重要な資料が紛失したか整理の対象とされたか、管理状況がいまとなっては確認が難しい。KAMIOKANDE にみられるように中心となる研究プロジェクトに変化によって研究者コミュニティの重心の移動があり、研究所とコミュニティとの関係もまた変化したことの影響があったのではないだろうか。そのため、コミュのティの活動記録のようなものが研究機関の組織の記録としては重要視されなくなったとも想像される。そのような結果として、重要な資料がすぐには見つからない状況になっていると思われる。 また、当時の研究者のキーパーソンの多くが他界したりすでに高齢となっており、情報を提供してもらえると想定した方も、おりしもコロナウィルス蔓延によって面接してのインタビューは控えざるを得ない状況になるなど、タイムリーにインタビューが可能かどうか容易に見通しが立てられなかった。その状況を回復すべく、これからの予定としてその計画を具体化して実施することが喫緊の課題である。
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今後の研究の推進方策 |
宇宙線研究の記録資料については、再度、研究所のどこかに残されていないか確認するとともに、そこには保存されていない記録資料および公的には研究所とは独立した組織である研究者コミュニティの記録も含め、個人研究者の管理の下で保存されているものがないか、調査を行いたい。また、候補として上がっている研究者との調整を行いインタビューの予定を具体化すること、およびこれまで候補として想定していなかった研究者にもインタビューを実施する可能性を検討する。 それと並行して宇宙線分野のみにこだわらず低エネルギー原子核分野の計画へと当研究の重点を移すことを検討する。低エネルギー分野は高エネルギーに比べれば規模が小さいので、日本の中に複数の拠点があり、それぞれの独自性をもった研究活動と将来計画を実施・検討してきている。それぞれについてうまくいったもの、あるいは停滞してしまったものの比較をすることが興味深い。その際に、それぞれの研究施設の計画をサポートする研究者のグループが協調したか、競合したかが興味深い問題として現れる。そのような検討課題の可能性として原子核研究所が「素粒子研究所」計画のあと独自の将来計画を打ち出す動きがいくつかあったが、核研としてそれを大きく進めることは必ずしも成功していないと見られる。その経緯についての資料はKEKの史料室のように比較的入手しやすいところにあると期待される。
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