研究課題/領域番号 |
22K00287
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02010:日本文学関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
勝山 稔 東北大学, 国際文化研究科, 教授 (80302199)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 小田嶽夫 / 松枝茂夫 / 中村博保 / 『警世通言』 / 『醒世恆言』 / 民間翻訳 / 三言 / 白話小説 / 佐藤一郎 / 魚返善雄 / 今東光 / 宮原民平 |
研究開始時の研究の概要 |
日本で広く親しまれたものに中国の物語がある。『三国志』や『西遊記』など、現在でもドラマやアニメで多彩な展開を見せているが、戦前は戦後と全く違う人々によって翻訳されており、現在日本に根付いた中国通俗小説は、戦前の民間翻訳が大きな役割を果たしていた。しかし、現在では民間翻訳は翻訳水準のバラツキら学術的に殆ど検討が行われていない。 本研究は戦前の翻訳を学問的俎上に載せることで、江戸の漢文学から始まり、現代まで連綿と受け継がれてきた通俗小説受容を、初めて完全な形で体系化を目指す。また通俗小説が日本で高度にサブカルチャー化したメカニズムを、学術的に明らかにすることを検討したい。
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研究実績の概要 |
本年度は芥川賞作家・小田嶽夫による『醒世恆言』の翻訳と、『警世通言』卷28 「白娘子永鎭雷峰塔」の松枝茂夫訳(1958)と中村博保(1986)訳の比較分析を試みた。 前者では小田の翻訳状況を把握するため、比較対照として大学の研究者・駒田信二の翻訳を比較対象として分析を試みた。その結果、小田の翻訳水準は、駒田訳の水準に比べると僅かに及ばないものの、従来の支那愛好者による趣味的翻訳に比べると、高い精度での翻訳が行われていた。小田訳の高い翻訳水準は、彼自身が東京外國語學校支那語學科卒業という経歴があること。また外務省亜細亜局入局により赴任先となった杭州領事館で、四年間の赴任経験があることが関係している可能性がある。小田の赴任先である杭州は、呉語の通用地域であり、白話小説の文体を理解するには好適な環境であったという点は無視できないと考えられる。 後者では「白娘子永鎭雷峰塔」による異なる翻訳の分析を試みた。松枝の翻訳は、日本語としての自然さに比重をかけていた点が中村によって指摘された。そして中村訳の登場によって、より逐語訳化が図られた。中村の訳文には逐語訳が徹底されていない箇所も見えるほか、中国文学研究の情報を理解していない解釈も存在し、原文に忠実な訳文としては一長一短が見られたものの、同じ研究領域では見られない斬新な訳文が提示されることにより、「白娘子」の受容史を語る上で、看過することができない重要な翻訳であると位置付けることができよう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究は順調に進んでいる。当初の目的よりも予想以上に進んでいるが、研究の進展によって、新たな課題も発見されたため、今後はその課題にも追究を行いたい。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究では、小田嶽夫に関する批判的検討を行う一方、従来翻訳が未整備であった明代短篇白話小説についても翻訳を発表し、斯界の研究の推進に寄与したい。
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