研究課題/領域番号 |
22K00293
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02010:日本文学関連
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
斎藤 理生 大阪大学, 大学院人文学研究科(人文学専攻、芸術学専攻、日本学専攻), 教授 (40431720)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2026年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2025年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
|
キーワード | 掌篇 / コント / 新聞小説 / 三島由紀夫 / 時事新報 / 大宅壮一 / 武田麟太郎 / 杉山平一 / 掌編小説 / 朝日新聞 / 大阪版 / 中京新聞 / 超短篇 / ショートショート |
研究開始時の研究の概要 |
昭和期には「掌篇」「コント」などと呼ばれるごく短い小説が数多く書かれた。しかし掌篇小説は従来、その短さもあって、取るに足らないもののように扱われがちであった。この研究ではまず、いつ、誰が書いた掌篇が、どの媒体に掲載されていたのかという基礎的な調査を、新聞を中心に広く行う。その上で、メディアの掲載意図、個々の作品の解釈、作家たちの創作活動における位置づけなどの分析を丁寧に行う。
|
研究実績の概要 |
今年度の研究成果として、論文2編と資料紹介1編とを発表した。また、口頭発表1件を行った。 論文の一つは、2023年4月に「三島由紀夫研究」に発表した「コント・新聞・一九五〇―三島由紀夫「日食」論―」である。この論文では、三島が1950年に「朝日新聞」に発表したコントの基本構造を分析すると共に、この作品を当時の紙面に再配置して読み直した。すなわち、1950年に実際に観測された日食の記事や、朝鮮戦争に関する記事を文脈にすると、作品がどのように読み変わるのかを明らかにした。 論文のもう一つは、2024年1月に「国語と国文学」に発表した「「ニュース小説」という試み―「時事新報」・大宅壮一・武田麟太郎を中心に―」である。この論文では、1932年10月から12月にかけて「時事新報」に掲載された「ニユース小説」という読切掌篇シリーズの実態を明らかにした。新聞に載った記事が小説にされることが、作家と読者にとってどのような意義があったのかを、コントや壁小説や実話の流行、立場を異にする作家たちの大同団結など、この前後の文壇の潮流を踏まえて考察した。その際、旗振り役であった評論家の大宅壮一や小説家の武田麟太郎の働きに特に注目した。 資料紹介では、敗戦直後の名古屋で発行されていた地方新興紙「中京新聞」に掲載された「原子小説」という読切掌篇シリーズの概要とリストとを掲げた。また、なぜ地方新興紙に有力な作家たちが執筆したのかについて、全国紙での長いキャリアのある編集記者の、復員後の出向という事実に光を当てた。 口頭発表では、2024年3月に行われた研究会において、詩人として知られる杉山平一が1950年前後に書いたコントについて考察した。杉山が敗戦直後の地方新聞や全国紙の地域版に発表していたにもかかわらず全詩集などに収められなかった作品を発掘し、そのプロットや詩的なねらいなどの特徴を明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昭和期の掌篇(コント)を、特に新聞に着目して考察する研究において、有名な作家が全国紙に発表したにもかかわらず、現在ではあまり知られていないコント作品を精読し、その特徴を明らかにすることができた。 また、埋もれていた作品(群)を発掘しつつ、ごく短い小説の形式が1930年代および40年代後半のマスメディアで果たしていた役割、作家や読者にとっての意義を考えることができた。 さらに、小説家ではなく、詩人が書いたコントを分析することを通じて、コントという表現の特徴により深く迫れるようになった。 いずれも事前に研究計画を立てた段階で行いたかった研究が、順調に進められたと言える。
|
今後の研究の推進方策 |
来年度は5年計画の3年目に当たるので、引き続き個別の作品の分析や、知られざる作品の発掘に努めながら、研究全体をまとめる方策についても考えたい。
|