研究課題/領域番号 |
22K00297
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02010:日本文学関連
|
研究機関 | 愛知県立大学 |
研究代表者 |
伊藤 伸江 愛知県立大学, 日本文化学部, 教授 (30259311)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2025年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
|
キーワード | 心敬 / 今川範政 / 今川了俊 / 正徹 / 伊勢物語 / 物語取 / 藤原定家 / 源氏物語 / 余情 / 徒然草 / 連歌論 / 冷泉派和歌 |
研究開始時の研究の概要 |
室町時代前期、特に十五世紀の前半から半ば過ぎに活躍した著名な歌人正徹と連歌作者心敬に関し、これまで申請者が蓄積してきた和歌・連歌作品に関する研究を基に、歌・句の自注、句集の序・跋文、書簡体や聞書の形式の教導書など、両者の多様な散文表現にも着目し、その文学の総合的な読解の進展を目指す。同時に両者の文学に対する『徒然草』など遁世者の文学・思想の深い影響を念頭に置き、遁世者の文学の系譜への両者の位置づけを試みる。
|
研究実績の概要 |
本年度は、複数の論で、心敬の作歌・作句理論が源氏物語注釈につながっていく思想的深まりを論じて、後世の源氏物語注釈書の様相に及ぶと共に、今川範政の和歌と源氏物語に関する事蹟も検討した。これらは本年度刊行の著書『室町期和歌連歌の研究』の中核をなす理論である。 心敬については、特に、自歌注・自句注にある先人の和歌を「うらやむ」とする表現から、「心の艶」こそが最上の境地であり、『毎月抄』が主張する有心体につながるものであること、さらに冷泉派歌人が着目した和歌の初五文字の理論を連歌の発句に応用することで、景物からはるか離れた空間をも同時に描く自然描写の可能性を広げたことをまず論じている。 さらに、『難題百首』の論で、心敬は歌の難題の処理に『伊勢物語』八十段の歌を使用しており、詞書がなけれぱ不完全な和歌を使うという点で、心敬が連歌の作法を和歌に持ち込んで臆することがない点を示した。心敬の指導と考えられる連歌寄合書『連歌作法』中の、『伊勢物語』八十段の当該歌の寄合は、二条派歌人である宗祇と冷泉派に影響された心敬の把握の相違にも繋がっていき、『源氏物語』の和歌や地の文での時の把握の曖昧さに対する態度の言説として、後の連歌師の源氏注の中に入り込んだことも新しく示しえた。 他方、正徹の近しい弟子であった今川範政は、万葉集や京極派和歌などを幅広く書写した実績があり、『源氏物語』の読解書『源氏物語提要』も著している。彼の『源氏物語』読解が冷泉派歌人として歌論用語「余情」理解の上に立ったものであること、物語の進行する時間の流れを「余情」の観点から読み解き、文学的な発展を成していることも論じた。こうした範政の「余情」は、当然ながら今川了俊の思想と『源氏物語』理解と繋がっており、さらにそれは『徒然草』の物語的章段(三十二段)の時間と視線のあり方とにつながることも考察した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目標とする、正徹・心敬の多様な文学表現の読解の進展、を順調になしていると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
心敬と今川範政に関して、両者の和歌・連歌と深く関わる『源氏物語』の享受と読解を新しい方向から捉え得たので、さらに深く掘り下げていく。併せて、正徹の立ち位置を、源氏物語研究にも目を配りながら考察していく。その上で、いずれにも強く影響している『徒然草』の享受をも鑑みつつ、「遁世者」の文学という視点から文学史的な把握をしなおしていく。
|