研究課題/領域番号 |
22K00305
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02010:日本文学関連
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研究機関 | 南山大学 |
研究代表者 |
蔡 毅 南山大学, 外国語学部, 研究員 (50263504)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 日本漢詩 / 逆輸入 / 田桐 / 扶桑詩話 / 聶景孺 / 桜花館日本詩話 / 日中文化交流 / 日本漢文学 / 日本漢文 / 幕末志士 / 添削 / 中国における受容 / 東アジア漢字文化圏 / 中国古典文学 |
研究開始時の研究の概要 |
日本漢文学の中国への「逆輸入」についての清代以前の残留問題を解決し、その集大成としての著書『中国における日本漢文学の受容』を世に問うならば、従来殆ど顧みられることがなかった日中文化交流史の新しい一ページが開かれるに違いなく、東アジア漢字文化圏全体に対する視座を大きく変えることもできるのではないかと考える。日本漢文学の中国へのフィードバックは、日本文化の世界に対する発信の歴史の重要な一部として、「同文」でありながら「異質」という特徴が「本場」に認知されるとともに、中国文学もその開放性、包容性を世に広く知らせることとなる。それによって、日中漢文学は相互認識の立場から再検討する余地がある。
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研究実績の概要 |
著書『清代における日本漢文学の受容』(「南山大学学術叢書」、2022年、398頁、汲古書院)の補完として、清末に来日の田桐が著した『扶桑詩話』について検討した。 詩話は古人が詩作を論じ、詩人の事跡を記録する基本的な様式で、宋代の欧陽修『六一詩話』に始まり、中国における歴代の詩話は夥しい数にのぼる。清末以降、日本漢詩に言及する詩話もまた陸続と出現した。しかし筆者の知る限り、中国の詩話で書名に「日本」或いは日本の別称を冠するもので、正式に出版されているものは僅かに二つしかない。一つは田桐の『扶桑詩話』であり、日本には専門に論じたものは無く、中国には先行研究があるものの、この書の内容に対する表層的な評論に留まっており、その文献の由来について実証的に追究したものは無く、日本漢詩そのものに対する理解もかなり表面的である。こうした状況に鑑み、『扶桑詩話』の編纂方法および構成の特色について詳細な検討を行い、その日中の漢詩交流史における独特の地位を垣間見ることとした。論文は「中国文人が見た日本漢詩―田桐『扶桑詩話』について―」(査読付き)、『東アジア比較文化研究』第22号、東アジア比較文化国際会議日本支部、45-59頁、2023年6月刊行された。同論文の中国語版は『域外漢籍研究集刊』第28輯に掲載、中華書局によって2024年末頃刊行の予定である。 もう一つは聶景孺の『桜花館日本詩話』であり、上述の『扶桑詩話』と同じ視点で検討し、「聶景孺『桜花館日本詩話』考論」という論文にまとめ、2023年12月中国広州華南師範大学主催の「国際東方詩話学会第13回学術大会」で口頭発表し、二松学舎大学編纂の論集『転換期における東アジア文化交流と漢学』に掲載されることになった(汲古書院、2024年9月刊行予定)。なお、同論文の中国語版は『中国文学研究』2024年第3期(湖南師範大学)に掲載される予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上記の論文が公刊されたため、著書『清代における日本漢文学の受容』(「南山大学学術叢書」、2022年、398頁、汲古書院)の補完として、清代末期部分についての検討はほぼ完了であるが、清代以前の部分についての資料収集は想定よりはるかに難しいので、予定通りに今年度内で作業終了できるかどうかは現時点で不明である。これからは全力をあげて努力する所存ではあるが、来年度に一年間延長も視野に入れて考えているところである。
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今後の研究の推進方策 |
前述の清代末期部分を一段落とし、これからは歴史をさかのぼって、唐宋元明の時代における日本漢文学の受容について今までの研究成果に基づき、さらに新しい検索手段を利用して新しい資料を加え、全面的に検討していく。なお、国際的学術交流の再開によって、積極的に国内および中国・台湾で開催される関連学会に出席して論文発表をし、それによってこのテーマについての関心を広め、且つ関係分野の学者から教示を得たいと思う。学会発表後いずれも日本語と中国語で論文にまとめ、両国の学術誌に投稿する。最終的に拙著『清代における日本漢文学の受容』に今回の研究成果を加えた増訂本『中国における日本漢文学の受容』(文字数はおよそ倍増になると予想される)を出すと同時に、中国語版の同著書『日本漢文学在中国的流布』も完成させることを目標とする。
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