研究課題/領域番号 |
22K00306
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02010:日本文学関連
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研究機関 | 皇學館大学 |
研究代表者 |
橋本 雅之 皇學館大学, 文学部, 教授 (70164796)
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研究分担者 |
大島 信生 皇學館大学, 文学部, 教授 (00194142)
齋藤 平 皇學館大学, 文学部, 教授 (70247758)
田中 康二 皇學館大学, 文学部, 教授 (90269647)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2022年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
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キーワード | 国文学 / 書誌学 / 万葉集 / 注釈 / 近代写本 / 律令写本 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は「写本を駆使した古典籍の訓詁注釈研究は書誌学的にどのように評価され得るか」という学術的「問い」に答えることにある。具体的には、「写本」という古典文学研究の素材が、実際的な研究において注釈のためにどのように活用されたのかということを、まずそれら写本の伝来、書き入れや校合の有無などの書誌学的な情報を調査し、その系統や特徴を分類整理して、それらの資料群が『萬葉集注釈』形成に果たした役割を明らかにすることにある。さらに研究者自身の「古典籍蒐集と書写」という伝統的な研究の方法が、近代においてどのように継承されてきたのかを問い直し、古典文学の基礎的研究の基盤を再検討することをめざすものである。
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研究実績の概要 |
令和5年度は澤瀉久孝文庫所蔵古典籍および自筆資料の調査を継続しておこなった。澤瀉久孝の萬葉集研究の到達点である『萬葉集注釈』の自筆原稿の調査に着手し、最終年度に向けて内容の整理と分析を進めている。令和5年度の研究実績は以下の通りである。 (1)令和5年8月21日~31日にかけて澤瀉久孝文庫所蔵の万葉集関係写本資料について書誌的な調査を実施した。(2)令和5年9月7日~令和5年9月8日にかけて京都大学文書館、奈良県三郷町立図書館に赴き、京都帝国大学時代の澤瀉久孝の教育活動、国文学者石井庄司との学問交流に関する資料調査を実施した。京都大学文書館では本研究に役立つ資料を見出すことはできなかったが、三郷町立図書館においては、石井庄司が蒐集した万葉集関係の資料を通して、昭和20年前後の万葉集研究を確認することができた。(3)令和5年12月11日から令和6年1月20日までの期間、附属図書館2階ギャラリーにおいて、澤瀉文庫所蔵の学術論文「「冬木成」攷」の澤瀉久孝自筆原稿をはじめ自筆の和歌色紙、研究者交流を示す書簡をはじめとして澤瀉の万葉集研究の周辺資料を解説を付して展示した。(4)令和5年12月16日に本学の佐川記念神道博物館講義室で開催された「令和五年度皇學館大学研究開発推進センター公開学術シンポジウム」の場を借りて「澤瀉久孝の万葉学とその周辺」と題して研究代表者と3人の研究分担者全員がこれまでの調査報告をした。このシンポジウムに関しては、令和5年12月14日付の読売新聞朝刊全国版の文化欄においても紹介され、広く社会に情報発信を行うことができた。なお、このシンポジウムの内容は、令和6年度末(令和7年3月)に発行予定の『皇學館大学研究開発推進センター紀要』において報告する予定となっている。 令和6年3月11日に研究代表者と3人の研究分担者で今年度の総括をして最終年度の研究計画を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究がおおむね順調に進展しているとする理由は2点ある。 第一に、附属図書館において開催したミニ展示に出展した「「冬木成」攷」の自筆原稿をはじめとする資料を通して澤瀉久孝の日常的な研究活動を具体的に確認できたことである。これは本研究の課題である「万葉学の形成過程」を解明する上で有益であった。 第二に、12月に開催した学術シンポジウムでは、昭和30年以来68年間所在が不明であった藤波家本「神祇令」写本が澤瀉久孝文庫に現存していたことを確認できた。これは今年度の研究調査の中でも最も意義ある成果であった。これは本研究の課題からすれば副産物とも言えるが、澤瀉久孝の学問的関心が単に萬葉集のみに限らなかったことを確認することが出来たのは、澤瀉万葉学を全体として評価する上で有意義であったと言える。しかも、この藤波家伝来の「神祇令」写本は、江戸時代初期の書写と認められるものの、現在國學院大學に所蔵されている猪熊本「神祇令」(鎌倉時代写、国宝)に匹敵する資料的価値を有するものであることが判明した。これは、古代律令研究の基礎史料として貴重であり、このような史料の存在を確認できたことは、この文庫がもつ文化財的価値を考える上でも重要な再発見であった。 以上、本年度はおもに澤瀉久孝の万葉集研究の周辺に焦点を当てて調査研究を進めてきたが、『萬葉集注釈』に結実する澤瀉久孝の古典籍蒐集や古典籍の書写が万葉集に止まらない広がりがることを確認できたという点において、研究2年目の目的をおおむね達成できたと考える。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度は研究計画の最終年度に当たるので、本研究の所期の目的を達成するために以下の計画で推進していく予定である。 (1)年度当初に研究代表者と研究分担者とが本年の研究計画を協議し、最終報告書作成までの研究工程を確認する。(2)その研究工程に従って澤瀉文庫所蔵資料調査を継続する。とくに澤瀉久孝自筆『萬葉集注釋』原稿、京都大学本萬葉集写本等の透写本(近代写本)の調査を重点的に実施し、『萬葉集注釋』を頂点とする澤瀉万葉学の形成過程に迫る。(3)最終年度研究成果報告として、令和6年11月に皇學館大学において公開シンポジウムを開催する。このシンポジウムでは万葉集研究や澤瀉万葉学に詳しい外部研究者を招いて基調講演を実施する予定である。なお、この科研費シンポジウムとは別に、令和6年11月から12月にかけて、皇學館大学佐川記念神道博物館において澤瀉久孝文庫所蔵の古典籍を中心とした特別展の開催が予定されている。(4)シンポジウムの内容を中心として、本研究の最終報告書を年度末までに作成し本研究を終了させる。(5)さらに追加調査が必要な場合は、京都大学等に所蔵されている万葉集写本の閲覧と調査の実施も検討する。 この計画以外に、研究代表者の橋本は、皇學館大学が毎年開催している市民対象の月例文化講座(令和6年7月)と神道博物館教養講座(令和6年12月、研究分担者の大島信生も橋本とは別日程で澤瀉文庫に関する講座を担当する)において澤瀉久孝の古典研究と澤瀉久孝文庫の古典籍に関する講座を担当し、本研究課題の成果を広く社会に向けて情報発信をおこなう予定である。
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