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近世「反キリシタン文学」の基礎的研究ー「吉利支丹由来記」を起点に

研究課題

研究課題/領域番号 22K00317
研究種目

基盤研究(C)

配分区分基金
応募区分一般
審査区分 小区分02010:日本文学関連
研究機関桃山学院大学

研究代表者

南郷 晃子 (中島晃子)  桃山学院大学, 国際教養学部, 准教授 (40709812)

研究分担者 三好 俊徳  佛教大学, 仏教学部, 准教授 (00566995)
服部 光真  公益財団法人元興寺文化財研究所, 研究部, 研究員 (00746498)
菊池 庸介  福岡教育大学, 教育学部, 教授 (30515838)
井上 舞  神戸大学, 人文学研究科, 特命講師 (30623813)
シュウェマー パトリック  武蔵大学, 人文学部, 准教授 (30802946)
杉山 和也  順天堂大学, スポーツ健康科学部, 准教授 (40907557)
小峯 和明  立教大学, 名誉教授, 名誉教授 (70127827)
研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
キーワードキリシタン文学 / 反キリシタン文学 / 吉利支丹 / 切支丹 / キリシタン実録 / 吉利支丹由来記 / 他者表象 / 大航海時代 / キリシタン / 切支丹宗門来朝実記 / 実録 / 排耶書
研究開始時の研究の概要

近世期におけるキリシタンへの視線は厳しく、その視線が反映される作品が多数ある。しかしそれら作品は、文学作品としての「価値」が見出されず十分な研究が進んでいるとは言い難い。また研究がなされる場合も、作品世界から、キリスト教の宗教的な卓越性を読み取るという方向性がとられることが多かった。当時の視線であった「反」という側面を正面から見据えた基礎研究が必要である。反キリシタン作品のうち『吉利支丹由来記』は反キリシタン作品の中で、位置付けが曖昧でありながら、後続作品群に大きな影響を与えた可能性がある。本研究では『吉利支丹由来記』の基礎研究を行い、近世期の反キリシタン文学研究の礎を作ることを図る。

研究実績の概要

当該年度は、反キリシタン文学作品の基礎研究として『吉利支丹由来記』の位置付けを行なった。近世におけるいわば最大の宗教的他者であった「キリシタン」への眼差しは当時のさまざまな作品において結晶しているが、先行研究では事実性との乖離や表象の差別性、あるいはそれらにすら含まれるキリスト教思想の卓越性といった点に重点が置かれてきており、表象としての説話的意味は十分に読み解かれてはこなかった。そもそも作品自体の検証も十分になされたとは言い難い。しかし、歴史としての「正確さ」から乖離しているようにみえるそれら表象こそが、近代移行期における西洋との苛烈な再会を準備したのだといえる。当時の眼差しそれ自体を正面から検証することは喫緊の課題である。
そのため反キリシタン作品を順次精読し、位置付けを進めていくとともに、またそれと並行して『切支丹宗門来朝実記』『南蛮寺興廃記』などの題名を持つ膨大な反キリシタン写本群の整理・理解を進める必要がある。本研究課題においては、これら写本群のうち、特徴を持つものいくつかピックアップし、それらの位置付けを明確にすることで、周辺作品の位置付けも進めていくというという方法を取り、2023年度はその第一歩として、『吉利支丹由来記』の基礎調査を行なった。姉崎正治、またチースリクといった戦前の研究において、反キリシタン写本群に影響を与えたと指摘されながらも、踏み込んだ研究がなされていないままだった『吉利支丹由来記』の位置付けを行うことが写本群研究、ひいては反キリシタン文学作品研究の重要な足掛かりになる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

2023年度は、2022年12月に長崎市で行った説話文学会例会での報告成果の論文化の準備を進めた。長崎例会においては、当研究課題に関連してキリシタン文学・反キリシタン文学のシンポジウムを行い、その説話的可能性を本プロジェクトに参加する個々が示すことができた。特に注目すべきは、ここでキリシタン・反キリシタン文学作品と国外作品および国外の研究状況との関連が示されたことであろう。研究代表者である南郷も同席上で非日本語の先行研究の成果を明確にしながら『吉利支丹由来記』の特異性を報告することができた。これらの成果は、すでに論文として提出済みであり、2024年度中に公開される。なお同論文においては、『吉利支丹由来記』の成立が先行研究の記す成立年代より下ること、さらには同書に先行する反キリシタン文学作品である『吉利支丹物語』から物語性を除外したものであることを示した。
併せて、継続中のキリシタン文献を読む読書会において反キリシタン作品、雪窓宗崔『対治邪宗論』との関連が想定される多福寺所蔵の「喜利志袒仮名書」を読み進めている。2022年度に行った多福寺における同書の原本調査を踏まえて。あらためての翻刻、検証を進めている。これらからは、反キリシタン文学作品に国外からの知識が流れ込んでいることが明らかになりつつある。以上の成果を2024年度中にまとめ、刊行することを予定しており、2024年3月にそのための準備として報告・研究会を行なった。
また膨大に広がるキリシタン実録類の研究につなげていくため、23年度は、同実録類のうち特色を持つと考えられるものについて洗い出す作業も行なっており、そこから重点をおくべき作品がいくつか明確になってきた状況にある。

今後の研究の推進方策

今後は、より細かな点にこだわった丹念な作品理解を進めると同時に、その成果に則りながら、世界史的な運動と関連付けたキリシタン文学・反キリシタン文学群そのものの位置づけを行っていく。前者に関しては『吉利支丹由来記』の概要を把握することができたので、今後はキリシタン写本群における他の特徴を持つものについて焦点を当てる。具体的には、版本として出された『吉利支丹物語』と、版本が流布しなくなった後広がった、似た内容を持つ写本『切支丹宗門来朝実記』(あるいはその類話)の過渡期のものと見做しうる写本作品について、詳細を明らかにする。また併せて近代至るまでの「西洋」観の問題につながることとして、写本群の表象の問題についても扱っていく。
さらにこれまでの研究から、これらキリシタン文学・反キリシタン文学を日本における問題として完結させず、大航海時代に端を発する文化摩擦の表象として捉えるという方向性の重要性が浮かび上がった。この関心に基づき、2024年度に共著作をまとめ上げる。当初計画していた以上に広くなった問題意識に対応するため、同書においては、科研分担者以外にも参加をしてもらうものとする。なお2023年3月の報告会において今後共著作をまとめるでの方針を確認するとともに、執筆予定の研究内容についての紹介・意見交換を行なった。

報告書

(2件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 2022 実施状況報告書
  • 研究成果

    (19件)

すべて 2024 2023 2022

すべて 雑誌論文 (10件) (うちオープンアクセス 3件、 査読あり 1件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 1件、 招待講演 4件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] 17世紀初頭前後の日本の宗教史と反キリスト教文学―パトリック・シュウェマー氏の論稿を読んで―2024

    • 著者名/発表者名
      服部光真
    • 雑誌名

      ReMo研 ニューズレター

      巻: 別冊 ページ: 10-22

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 講演会・シンポジウムを振り返る2024

    • 著者名/発表者名
      菊池庸介
    • 雑誌名

      説話文学

      巻: 59

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [雑誌論文] 『吉利支丹由来記』の検討―反キリシタン文学再考のために2024

    • 著者名/発表者名
      南郷晃子
    • 雑誌名

      説話文学

      巻: 59

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [雑誌論文] 「キリシタン文学の説話研究 聖人伝「サンタマリナの御作業」を例に」2024

    • 著者名/発表者名
      Patrick Schwemmer
    • 雑誌名

      説話文学

      巻: 59

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [雑誌論文] アシジのフランチェスコはイスラムヘの偽装改宗工作員だったのか:日本の宗門改文学から2024

    • 著者名/発表者名
      Patrick Schwemmer
    • 雑誌名

      ReMo研ニューズレター

      巻: 別冊 ページ: 7-9

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 『吉利支丹物語』に於けるキリシタン2024

    • 著者名/発表者名
      杉山和也
    • 雑誌名

      説話文学

      巻: 59

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [雑誌論文] 「聖母マリヤの霊験記『聖母奇蹟物語』―「バレト写本」と漢訳2024

    • 著者名/発表者名
      小峯和明
    • 雑誌名

      説話文学

      巻: 59

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [雑誌論文] 日本に於いてミイラはいかに捉えられたか2023

    • 著者名/発表者名
      杉山和也
    • 雑誌名

      中東・北アフリカ日本研究ジャーナル

      巻: 2023号 ページ: 60-69

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] キリシタン文学の窓―活版印刷とコレジオ・声と文字の往還2022

    • 著者名/発表者名
      小峯和明
    • 雑誌名

      日本文学協会『日本文学』

      巻: 71 (10) ページ: 12-23

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [雑誌論文] 戦国の藤木史学を往く2022

    • 著者名/発表者名
      小峯和明
    • 雑誌名

      アジア遊学276『村と民衆の戦国時代史―藤木久志の歴史学』

      巻: 276 ページ: 235-255

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] 日本の宗門改文学で語られる17世紀ハンガリーのキリスト教征服2024

    • 著者名/発表者名
      Patrick Schwemmer
    • 学会等名
      キリシタン・反キリシタン文学研究会「キリシタン・反キリシタン文学再考ー征服の世紀からの物語ー」
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 近世俗文学に描かれたキリシタン2024

    • 著者名/発表者名
      菊池 庸介
    • 学会等名
      キリシタン・反キリシタン文学研究会「キリシタン・反キリシタン文学再考ー征服の世紀からの物語ー」
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 写本とキリシタン怪異譚ー会津地方を中心に2024

    • 著者名/発表者名
      南郷 晃子
    • 学会等名
      キリシタン・反キリシタン文学研究会「キリシタン・反キリシタン文学再考ー征服の世紀からの物語ー」
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] キリシタン文学と芸能2023

    • 著者名/発表者名
      小峯和明
    • 学会等名
      EAJS(ヨーロッパ日本学会)中世芸能をめ ぐるシンポジウム
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] 「キリシタン文学を日本文学として読む―ヨーロッパの原典に当たって」2022

    • 著者名/発表者名
      パトリック・シュウェマー
    • 学会等名
      説話文学会2022年度12月例会「キリシタン文化と説話文学-16世紀前後の〈異文化交流文学史〉」
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] 聖母マリアの霊験記―バレト写本と漢訳『聖母行実』2022

    • 著者名/発表者名
      小峯和明
    • 学会等名
      説話文学会2022年度12月例会「キリシタン文化と説話文学-16世紀前後の〈異文化交流文学史〉」
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] キリシタン文学再考―『吉利支丹由来記』、実録類を手がかりとして2022

    • 著者名/発表者名
      南郷晃子
    • 学会等名
      説話文学会2022年度12月例会「キリシタン文化と説話文学-16世紀前後の〈異文化交流文学史〉」
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] 『吉利支丹物語』に於けるキリシタン2022

    • 著者名/発表者名
      杉山和也
    • 学会等名
      説話文学会2022年度12月例会「キリシタン文化と説話文学-16世紀前後の〈異文化交流文学史〉」
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 招待講演
  • [図書] 文学と魔術の饗宴[日本編]2024

    • 著者名/発表者名
      斎藤英喜、金沢英之、小川豊生、南郷晃子、一柳廣孝、梶尾文武、清川祥恵、植朗子、渡勇輝、蘆花公園
    • 出版者
      小鳥遊書房
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書

URL: 

公開日: 2022-04-19   更新日: 2024-12-25  

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