研究課題/領域番号 |
22K00332
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02010:日本文学関連
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
大坪 亮介 福岡大学, 人文学部, 准教授 (10713117)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | 日本文学 / 中世文学 / 軍記物語 / 太平記 / 龍山徳見 / 三国伝記 / 雲巣集 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、南北朝・室町期の文学生成における龍山の影響を測定するため、その詩の引用が確認できる三つの文献に注目し、以下の三つのテーマに基づき研究を遂行していく。①龍山および周辺の文学的環境の復元、②『太平記』・『三国伝記』における龍山の影響の測定、③『雲巣集』・法燈派における龍山の影響の測定。このように、主として軍記・説話・禅の詩文を題材として、その成立基盤と龍山およびその周辺との関わりを探っていく。
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研究実績の概要 |
本研究では、大きく3つのテーマを設定し、黄龍派の禅僧龍山徳見が及ぼした文学的な影響を明らかにすることを試みる。今年度はまずテーマ1「龍山および周辺の文学的環境の復元」として、龍山の文集『黄龍十世録』のうち、龍山が携わった仏事や作成した偈頌の分析を行い、元から帰国後の龍山の交流関係の具体相の解明に努めた。その結果、龍山は禅僧のみならず、土岐氏や赤松氏といった当時の幕閣とも密接な関連を持っていたことを指摘し得る。両氏はいずれも禅との関わりが深く、かれらにゆかりの禅僧と龍山との関係性も認められる。本研究の目標は、龍山の文学的な影響を解明することにあるが、如上の作業は、その目標を達成する上での基礎作業に位置づけられよう。 さらに、今年度はテーマ1と並行して、テーマ2「『太平記』・『三国伝記』における龍山の影響」として、『太平記』巻三十九「光厳院禅定法皇御斗藪之事」の分析も行った。これは出家後の光厳院の諸国行脚と崩御を語る章段であるが、まず、この章段が龍山の詩を摂取しており、しかもそれは、『太平記』が同時代の禅僧の偈頌を引く数少ない事例の一つであることを明らかにした。また、龍山の詩と取り合わせられている光厳の和歌についても検討を加え、その和歌は光厳の実作ではなく、名所和歌の類をもとにして二首の和歌を合成してつくられたと見られることを指摘した。これらから、今年度は龍山の詩の利用法の一端を具体的に窺い知ることができた。 上記の研究を遂行し、今年度は下記の論文を刊行した。①「『太平記』光厳法皇行脚記事における詩句利用―典拠未詳対句を中心に―」関西軍記物語研究会編『軍記物語の窓 第6集』和泉書院、2022年12月)、②「『太平記』光厳法皇行脚記事における和歌利用―御津の浜での光厳詠を中心に―」(『福岡大学日本語日本文学』第32号、2023年1月)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の当初の計画では、主として建仁寺両足院に伝わる文献の調査を毎年行う予定であった。しかし、研究代表者の勤務先が福岡に移ったこともあり、調査のスケジュールや予算については、大幅な変更を余儀なくされた。文献調査という部分に関しては、当初の研究計画よりも遅れが生じてしまった。 しかし一方で、上記「研究実績の概要」にも記したように、今年度は当初進める予定であったテーマ1「龍山および周辺の文学的環境の復元」として、龍山の偈頌類の注釈的読解により、帰国後の龍山の人的環境をある程度復元することができた。また、テーマ2「『太平記』・『三国伝記』における龍山の影響」として、龍山の詩の利用法の一端を解明することができた。 さらに、上記の研究成果として今年度は学術論文を2本刊行することができたことから、本研究はおおむね順調に進展していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
上記テーマ1の研究は本研究期間の全年度にわたって行っていくが、今後も当初の研究計画に基づく調査を継続していく。コロナ禍による行動制限が緩和されつつある状況を踏まえ、文献調査の頻度を増やすことにより、この部分での研究の遅れを取り戻したい。 加えて、次年度は当初の研究計画に基づき、『太平記』のみならず『三国伝記』も分析の俎上に載せ、龍山の詩の利用法とそれを可能にした環境を探っていきたい。
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