研究課題/領域番号 |
22K00342
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02010:日本文学関連
|
研究機関 | 福岡教育大学 |
研究代表者 |
久保田 裕子 福岡教育大学, 教育学部, 教授 (30262356)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
|
キーワード | 戦後文学 / 三島由紀夫 / 保守政治 / タイ / アジア |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、①、東南アジア・アメリカ政策を通じて国際問題に対応した佐藤栄作政権(在任期間1964~7年年)に提言を行った三島由紀夫、石原慎太郎、遠藤周作、江藤淳、山﨑正和などの同時代の文学者の文学活動について検証する。②、①の結果を踏まえて、太平洋戦争前後から1960年代以後にベトナム戦争下のタイを中心にしたインドシナ半島地域を描いた〈戦後文学〉テキストの分析を行う。研究の方法としては、『オンライン版楠田實資料(佐藤栄作官邸文書)』(丸善雄松堂、2016)などの資料を参照して、文学作品の背景にある政治的状況を踏まえつつ、〈戦後文学〉のアジア表象について明らかにする。
|
研究実績の概要 |
令和4年度の研究実績の概要は、以下の通りである。 1.三島由紀夫、石原慎太郎、遠藤周作などの戦後文学の作家と佐藤栄作政権における官邸との文化事業についての意見交換の記録について、『佐藤栄作日記』全6巻(朝日新聞社、1999)『オンライン版楠田實資料(佐藤栄作官邸文書)』(丸善雄松堂、2016)、『楠田實日記』(中央公論新社、2001)などの資料を参照して分析した。その成果として、論文「三島由紀夫と石原慎太郎の政治と文学」(『三島由紀夫研究 三島由紀夫の方法』第22号、2022.4)を発表した。 2.東南アジア政策を含めた国際問題についての江藤淳、山﨑正和らの政策提言などの文書も含めた資料について分析した。1で挙げた資料を中心に、研究の基盤 となる資料の整理作業を行った。関連する資料について、国会図書館や日本国内の大学図書館等で資料の調査・収集を継続し、1960年代後半の官邸を中心とした保守政治と文学との関係を考察するための資料の整理を行った。 3.戦後文学における三島由紀夫の活動の総体を明らかにするために、小説以外の文化領域における活動について研究発表を行った。「小説と映画のあいだ-「愛の渇き」」(第5回 三島由紀夫とアダプテーション研究会)の研究成果発表に際して、「三島由紀夫と映画」というテーマで企画・運営を行い、福岡市総合図書館においてZoomの発表会を実施した。また学術的研究発表に際して、福岡市文学館の市民講座(令和4年度科学研究費助成事業/福岡市文学館常設展示関連講座福岡市総合図書館)と連携し、地域の文学館・図書館との共催事業を通じて市民や学生を対象に、広く研究成果を公表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は研究期間を通じて、①佐藤栄作政権の東南アジア政策を通して官邸と関わった〈戦後文学〉の作家の執筆活動と作品について検証し、1960年代後半の保守政治と文学との関係について明らかにし、その検証結果をふまえて、②東南アジア政策を通じて官邸と関わった〈戦後文学〉の作家の作品について、アジア表象が構築された経緯を明らかにすることを目的としている。研究方法として、『オンライン版楠田實資料(佐藤栄作官邸文書)』などの資料を参照して、文学作品の背景にある政治的状況を踏まえつつ、〈戦後文学〉のアジア表象について明らかにすることを目的としている。国際研究者交流を課題としているが、2022年度は、コロナの環境下において、海外や遠隔地への出張を伴う図書館などでの調査が滞っていたため、予定よりもやや遅れる結果となった。その他の課題については、当初の計画を踏まえて、以下の計画を遂行した。 1.〈戦後文学〉に描かれたインドシナ半島地域をめぐる文化表象を示すテキストを調査し、リスト化する作業を継続して行った。 2.国会図書館や日本国内の大学図書館等で研究基盤となるインドシナ半島に関連する資料を調査・収集し、日本との政治・経済的な背景が文学作品に反映された経緯を検証した。1960年代当時の社会状況を反映した同時代資料と文学作品と比較しつつ、タイなどの東南アジアの社会や歴史と文学作品の関係性について分析した。
|
今後の研究の推進方策 |
2023年度における研究推進方策としては、以下の点を計画している。 1.〈戦後文学〉に描かれたインドシナ半島地域をめぐる文化表象を示すテキストを調査し、リスト化する。国会図書館や日本国内の大学図書館等で研究基盤となるインドシナ半島に関連する資料を調査・収集し、日本との政治・経済的な背景が文学作品に反映された経緯を検証する。当時の社会状況を反映した同時代資料と文学作品と比較しつつ、タイの社会や歴史と文学作品の関係性について分析する。 2.「日本・タイ文化研究所図書館備付図書目録」第1号(1939年9月)に記載された図書や雑誌「シャム国日本人会会報」、バンコクで刊行された英字新聞「タイ・クロニクル」などを日・タイの図書館で調査・収集し、当時の社会状況を反映した同時代資料と文学作品と比較しつつ、タイの社会や歴史と文学作品の関係性について分析する。 3.1940年代に刊行された日本語雑誌「日本タイ協会々報」、1960年代にバンコクで刊行された「クルンテープ」などの雑誌の中で、小説の背景となる経済進出した日系企業の駐在員の生活に関する記述、ベトナム戦争下のタイ在住日本人の状況などの記述を参照し、同時代の出来事や社会状況を反映した小説の分析を行う。 4.1~3の成果について、研究代表者・連携研究者による共同討議と研究成果を学会・論文として、日本国内における成果発表を中心に遂行する予定である。コロナによる影響がないようであれば、タイ国チュラーロンコーン大学との国際研究者交流をさらに増やす予定である。
|