研究課題/領域番号 |
22K00351
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02010:日本文学関連
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研究機関 | 立正大学 |
研究代表者 |
島村 幸一 立正大学, 文学部, 教授 (70449312)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 旅歌 / 航海儀礼 / 旅グェーナ / だんじゅかりゆし / 踊合 / オナリ神 / 『おもろさうし』 / オタカベ / をなり神 |
研究開始時の研究の概要 |
琉球王府の旅歌研究は、琉球王国の性格等を理解する上で重要な研究になる。例えば、『おもろさうし』全24巻を見ても、236首のオモロが収録されている第13「船ゑとおもろさうし」は、最大の巻である。また、地方を謡った久米島のオモロは、地方オモロでは最大の巻であるが、その大半は航海歌、旅歌でしめられる。これは、地方のグスクや神女、領主等を賛美する地方オモロでは異例であり、中国や先島への交通の要衝である久米島の地政学的な立ち位置を示している。すなわち、宮廷歌謡集である『おもろさうし』みても旅歌は大きな比重をしめている。旅役(男性)の霊的守護者であるをなり神の役割も旅役の守護神としての性格が大きい。
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研究実績の概要 |
本年度の研究課題の成果として、「見里春『踊合 首里の旅うた』所収の「だんじゅかりゆし」」(法政大学沖縄文化研究所紀要『沖縄文化研究』第51号、2024年3月31日)を発表した。踊合は首里士族の旅儀礼である。そこでは、83首の琉歌(8886の音数律の短詩形歌謡)を連ねて展開する「だんじゅかりゆし」や長詩形歌謡「旅グェーナ」等が並行して謡われるが、本論は「だんじゅかりゆし」と「旅グェーナ」との構成を比較し、二つの歌謡は時系列的には同様な展開をしながらも、「旅グェーナ」は前半と後半が同一の詞章、または類似する詞章で展開する対称的な詞章で構成される歌謡であるのに対して、「だんじゅかりゆし」は前半と後半のウタは異なるテーマを謡ったウタで構成される非対称的な内容を持ったウタで展開する歌謡であることを明らかにした。その上で、5100首を集めた『琉歌大成』(清水彰編、沖縄タイムス社、1994年)を利用して、83首の「だんじゅかりゆし」のウタがどうような琉歌集に入るウタなのか、あるいはその類歌はどのようなものなのかを、逐一明らかにして、旅歌の表現と享受の広がりを考えた。また、最後に旅歌が三線で謡われる時の曲節についても考察を試みた。 なお、本年度は『琉球文学の展望』(文学通信、2024年2月)を刊行して、昨年度の本研究成果として出した「首里の旅歌-「旅グェーナ」と「だんじゅかりゆし」-」(『立正大学人文科学研究所年報』第60号、2023年3月)を収録した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度は、「首里の旅歌-「旅グェーナ」と「だんじゅかりゆし」-」を発表し、本年度はその続編である「見里春『踊合 首里の旅うた』所収の「だんじゅかりゆし」を発表した。これは、前年度の研究を踏まえて、さらに83首の琉歌を連ねる旅歌の具体的なウタのテーマやウタとウタの謡い継ぎ、また琉歌集にそれがどのように入っているのかを見ながら、旅歌(琉歌)の表現とその享受の広がりを考察した。来年度は本研究の仕上の年度であり旅歌の広がりを他の琉球歌謡に広げながら、考察していく予定である。ただし、琉球歌謡における旅歌の広がりは予想以上であることが見えてきた。これをどのようにまとめていくのかは、大きな課題となると考える。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は首里士族の旅歌を考察しながら本研究を行ってきたが、最後の年度は広く琉球歌謡全般を見ながら、琉球歌謡における旅歌の広がりを考察していく。まずは、旅歌歌謡集としての『おもろさうし』を考えていく。さらに、宮古や八重山の歌謡、ま奄美諸島の歌謡を視野に入れて、琉球歌謡の旅歌の広がりをみていく予定である。
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