研究課題/領域番号 |
22K00355
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02010:日本文学関連
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研究機関 | 神戸学院大学 |
研究代表者 |
中原 香苗 神戸学院大学, 全学教育推進機構, 講師 (80469270)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 楽書 / 日本音楽史 / 講式 / 金剛寺 / 順次往生講式 / 真源 / 興福寺 / 楽人 / 狛氏 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、楽書(がくしょ)を研究対象とし、そこから寺院における儀式の催行実態、および楽書がどのようにして編まれるのかを追究する。楽書は、音楽演奏の技術や儀式での振る舞い、演奏する楽曲や楽器の由来、演奏に関するエピソードなどが記された、多くは音楽演奏を家業とする楽人によって書かれた書物である。 具体的には、大阪府河内長野市の金剛寺所蔵楽書の検討により、寺院における音楽儀式の実態を明らかにする。あわせて、興福寺に所属した楽人の狛氏周辺の楽書を検討することで、家に伝わる「口伝」の継承を契機として「楽書」が生成することを考察する。
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研究実績の概要 |
2023年度は、大阪府河内長野市の金剛寺蔵『諸打物譜』に引用される「順次往生楽次第(以下、「楽次第」)」について検討を加えた。『諸打物譜』は、室町時代の金剛寺学頭であった禅恵によって書写されたものである。そこに引かれる「楽次第」は、平安時代末期成立の天台僧真源によるとされる『順次往生講式(以下、『順次講式』)』と関わるものである。本講式は、講式本文に加え、雅楽や催馬楽曲に極楽希求の思いを述べる歌詞を付した楽曲が演奏される、講式作品中でも特異なものである。 「楽次第」はこのうち、『順次講式』の楽部分と密接に関わる。「楽次第」は、『順次講式』の楽部分を中心にした次第と、演奏される楽曲の由来を文献によって記したものである。両者を比較し、「楽次第」は、おおむね『順次講式』に拠りつつも、現存本には見えない識語や、講式内で奏される楽曲が記されていることを指摘した。これらを分析し、この識語および楽曲の歌詞は、真源自身の手になるものと推定した。これまで『順次講式』の作者は、鎌倉時代の『浄土依憑経律論章疏目録』に「順次往生講式 真源」とされることから真源作とされてきたが、「楽次第」の識語の存在により、本講式が真源作であることがほぼ確実となった。また他資料によって存在が推定されていた楽曲「慶雲楽」が、もともと『順次講式』に存したことが明らかになった。 本研究により、『順次講式』が真源の作であることが推定され、また現存の『順次講式』は、ほぼ完成に近い形ながら、そこに楽曲を付加するなど、真源自身の手によってさらに推敲を加えられていたことが示された。本研究は、『順次講式』の研究に資するのみならず、講式という法会にかかわる作品の生成過程および享受を垣間見せた点、重要な価値を有するといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は、金剛寺所蔵資料についての調査を継続しており、資料についての論文発表も行い、資料のデジタル化も順次進めているため。
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今後の研究の推進方策 |
今後も、資料調査を行い、関係資料を収集、調査し、成果の発表に努める。
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