研究課題/領域番号 |
22K00356
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02010:日本文学関連
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研究機関 | 福岡工業大学 |
研究代表者 |
徳永 光展 福岡工業大学, 教養力育成センター, 教授 (20341654)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
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キーワード | 山崎豊子 / 『不毛地帯』 / 『二つの祖国』 / 『大地の子』 / 二項対立 / 戦争言説 / 境界人 / 予言 / テクストの借用 |
研究開始時の研究の概要 |
山崎豊子の戦争三部作、『不毛地帯』『二つの祖国』『大地の子』では、ソビエト、イラン、アメリカ、中国といった大国と日本の狭間で揺れ動く数奇な登場人物が描かれている。入念な調査活動を経て作られたテクストには、他の執筆者による発表諸文献からの借用・引用が広範にみられるが、本研究では引用と創作がないまぜになった本文生成状況を明らかにし、作品の劇的効果がどのような過程を経て創造されているのかを考究する。
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研究実績の概要 |
文献収集、資料館や図書館等への訪問を精力的に行ったことで、山崎豊子が太平洋戦争のトラウマを背負って戦後社会を生きていった人物像を描き出すことに情熱を燃やし続けた背景への理解が深まった。また、山崎のテクストを分析する際には、執筆に際して参照されたと考えられる一次資料への接近とその読み込みを行うことで、どのようなアダプテーションがなされていたかを突き止める重要性をも知ることとなった。 その上で、研究成果の産出を期して、まず「ミネアポリスのアメリカ陸軍情報部日本語学校における語学兵の養成――山崎豊子『二つの祖国』に描かれた第二次世界大戦下の日本語教育――」を執筆した。この論文は複数の査読者との応答を経て、「語文」(大阪大学国語国文学会)への掲載が決定した。この論文では、日系アメリカ人二世である天羽賢治がミネアポリスに誕生した日本語学校で、日系アメリカ人の語学兵を養成していく過程を分析した。 さらに「山崎豊子『不毛地帯』論――二項対立と予言者の存在――」を脱稿し、査読付研究誌に投稿した。こちらは現在、結果待ちである。『不毛地帯』に限られることではないのだか、作品はいずれも週刊誌や月刊誌への連載という形が初出の形態である。そこでは、後のストーリーを予言させるかのような言説を発する登場人物や事件が意図的に配置され、読者の想像力を喚起すると共に、テクストを読み続けたいという欲望を生じさせる構図が意図的に構築されている。その状態をこの論文では『不毛地帯』を使って解き明かそうとした。 また、登場人物がライバル関係に置かれたり、相反する個性を持つ人物が配置されることで、主人公の数奇な運命が前景化するような描かれ方をしているにも考察を進めている。 このような『不毛地帯』で実践された執筆方法は『二つの祖国』や『大地の子』にも現れるので、人物像の比較という側面にも配慮しながら、読解を進めたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
度重なる調査活動、図書館や資料館の訪問とそこでの資料収集を行うことができた。また、本研究に着手して2年を経た段階で査読付き学術誌に1本の論文掲載が決定した。審査中の論文1本も別途書きあげており、研究のアウトプットを出すべく努められているのではないかと判断する。作品分析を通して、この作家の作品生成の過程に大量の資料に基づくアダプテーションが見られるという事実を発見したことが大きな収穫であると考えている。 当初の予定では、『不毛地帯』、『二つの祖国』並びに『大地の子』の3作品を扱って、論文公開まで進むという目標を立てていた。しかしながら、シベリア抑留、オイルショック後のエネルギー供給、商社の再編、日系アメリカ人、原爆投下、極東国際軍事裁判(東京裁判)、中国残留孤児、日中合弁企業の設立など、山崎豊子が戦争三部作で扱うテーマは非常に広範囲に及んでおり、それらのテーマを網羅的に限られた研究期間内で扱うことには大きな困難が伴う事実もはっきりしてきた。 今年度は研究の最終年度に相当するが、研究期間の延長も視野に入れながら、柔軟に対処していきたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は『不毛地帯』、『二つの祖国』、『大地の子』に関する作品論をさらに執筆し、査読付きの学術雑誌に掲載される水準の研究成果を上げることに全力を注いでいきたい。
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