研究課題/領域番号 |
22K00357
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02010:日本文学関連
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研究機関 | 新居浜工業高等専門学校 |
研究代表者 |
沼田 真里 新居浜工業高等専門学校, 一般教養科, 准教授 (20847933)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
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キーワード | 森盲天外 / 障害者 / 障害者の文学 / 明治期の地方政治家 / 明治期の福祉思想 / 盲目 / 当事者 / 日本近代文学 / 障害当事者文学 / 障害者の文学活動 / 視覚障害者の文学 / 視覚障害者の歴史 / 明治の社会福祉 / 日本の障害者文学 / 障害者の表現活動 |
研究開始時の研究の概要 |
明治~昭和初期の政治家・俳人である森盲天外について、研究資料や文献を可能な限り再調査し、日本近代文学史においても貴重な当事者作家であることを明らかにする。森盲天外(本名・森恒太朗)は愛媛県の地方政治家で、20代で失明した中途視覚障害者であった。当時、世間にはまだ社会的差別が残っていたが、余土村町長在任時に森が実践した「余土村是」が万国博覧会で一等賞となるなど、めざましい功績を残した。一方、森の著作には俳句や評伝があり、自伝『一粒米』で失明前後の体験と独自の思想に目覚めるまでを書いた。視覚障害当事者として自らの体験を書き、自らの思想を発信・表現した面から、表現活動としての再評価が望まれる。
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研究実績の概要 |
本研究では、正岡子規と同時代の地方政治家・俳人である森盲天外に着目し、視覚障害をもちながら旺盛に励んだ執筆活動を、日本近代文学においても新たな障害当事者作家として再評価することを目的としている。具体的には、松山市余戸公民館の調査で見つかった新出資料(未発表の草稿)の翻刻をし、解題と解説をつけて公表している。また彼の資料を発掘し、社会に広く共有することも目指している。 2023年度は、翻刻作業が終わった新出資料のうちで未公表だった草稿を論文化し、解説を付した。森盲天外の未発表原稿「優填王経」(明治41年 8 月)の前半部分である。「優填王経」は仏教説話の翻案もので長編であり、2024年度に後半部分を公表し、詳細な解説と、森盲天外の活動上における本作の意義を評価する予定である。 また森盲天外の時代的背景や思想的影響を調査する過程で、明治啓蒙主義の中村敬宇の思想や、草間時福の自由民権思想から、多大な影響をうけていることが判明した。そこで、新たな方向性として、中村敬宇関連の書籍、明六社関連の書籍、明治啓蒙思想や自由民権運動の資料、また幕末から明治期までの農民・農村にまつわる資料も収集・調査した。また、高知市立自由民権記念館や大分県中津市の福澤諭吉旧居・福澤記念館にも資料調査に赴いた。以上の調査により、同時代の世の中の潮流と、森盲天外の執筆活動との共鳴を確認することができた。 そして、その結果、森盲天外に対する複眼的な評価を行い、彼の執筆活動や表現活動における総合的な意義を把握することができた。これらの内容をもとに、最終年度には森盲天外の総合的な分析と評価をまとめ、論文化する計画である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
・未発表草稿の翻刻がすべて終了し、「盲人の読書難」、「島津家と盲人保護」は解説付きで公表し論文化できた。2023年度は「優填王経」の前半部分の翻刻と解説を論文化した。
・参考文献や資料の調査を進め、あらかた所在が精査できた。
・地元の研究会「一粒米の会」にも参加し、まだ文書化されていない情報や、今後一般的な雑誌媒体で公表されるであろう最新の情報も収集することができた。
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今後の研究の推進方策 |
・2024年度は、代表作である『一粒米』の評価や、森盲天外の啓蒙思想家的側面を再評価するための論文を執筆し、査読付き雑誌に投稿する計画である。 ・森盲天外の新出資料のうち、残りの原稿を解説付きで公表する。具体的には、「優填王経」(明治41年 8 月)の後半部分、「水戸烈公 民政一般(手書き原稿)」(不明)、「民育一般(森恒太朗(盲天外)先生口述録)」(大正4年 10月)。 ・現段階でわかった参考文献・資料目録をまとめ、いずれかの媒体で公表する予定である。
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