研究課題/領域番号 |
22K00361
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02020:中国文学関連
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
高芝 麻子 横浜国立大学, 教育学部, 准教授 (80712744)
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研究分担者 |
遠藤 星希 法政大学, 文学部, 准教授 (30755278)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 杜甫 / 中島敦 / 山月記 / 中興間気集 / 安史の乱 / 盛唐 / 中唐 / 文学史 / 唐詩 / 白居易 |
研究開始時の研究の概要 |
唐代の詩歌が安史の乱の前後で大きく変質したことは広く知られている。官人登用システムの変化や士大夫の政治への意識の変化など、様々な要因が指摘されているが、安史の乱という王朝の根幹を揺るがし、士大夫の価値意識を変化させた反乱そのものを、文学史の中に位置づける研究はほとんど行われていない。本研究では安史の乱という抗いがたい時代の激流が一人ずつの詩人の人生や詩風のみならず、中国古典そのものにもたらした変質について明らかにする。
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研究実績の概要 |
本年度は三つの切り口から本研究テーマに関わる研究を行った。 一つめは、初年度から継続して実施している、安史の乱を経て杜甫やその周辺の文学にどのような変質が生じたかについての研究である。初年度に実施したシンポジウム、発表した論文に対するフィードバックなどを踏まえ、盛唐から中唐への転換期に「私的な生活の中に表出すべき価値を見出す」「自然と人間社会の関係性を捉え直す」など、大きな視点の転換が杜甫の詩の中に確認できることを論文にまとめ、2024年度内に公開すべく作業を進めている(入稿済み論文1点)。 二つめは、本年度の中心的な問いである「中唐の詩人たちが安史の乱をどのように評価しているのか」を明らかにするため、『中興間気集』(中唐初期に高仲武が同時代の詩人たちの作品を集め、編纂した詩集)の分析を進めたことである。盛唐末から中唐初期にかけての詩と、その詩人に対する高仲武の評語の分析から、その時代に評価されていた詩がどのようなものであったか、そこに描かれた安史の乱やその後の社会がどのように捉えられていたのかを検討し、あわせて詩や評語の現代語訳と注釈の作成作業を進めている。 三つめは、古典文学研究ではないものの、三年目の中心的な問い「日本の古典文学に安史の乱をめぐる文学がどのように受容され、どのように理解されていたか」を先取りし、安史の乱直後の人間模様を描く中島敦「山月記」を題材に、中島敦が唐詩や明詩をどう読んだかという視点から中島敦文庫の蔵書の分析を進めたことである。出典研究ではなく、その時代をどのようなものと捉え、どのような側面に興味を持っていたのかを旧蔵書に残る書き入れ等の痕跡から検討し、時代の荒波に揉まれつつ文学者としての矜持を抱く杜甫の自画像に中島敦が深く共感していた可能性を指摘した(口頭発表1本、論文1点)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度の目標である中唐期の変化の特質について、中唐初期を中心にある程度論点の整理ができている。ただし、その論点についてはより深めて検討していく必要がある。2024年度内に成果を学会発表・シンポジウム開催・論文刊行で発表したい。一方、2024年度の目標である日本文学との関連性、学校現場へのフィードバックの試みについては、すでに先行して作業を進めつつあり、両者を勘案して本課題の進捗状況はおおむね順調であると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の中心的な計画は、『中興間気集』についての研究を進め、口頭発表、論文執筆、シンポジウム企画などを行うとともに、研究成果を中学校・高等学校の国語教育に資する資料集等の作成を行うことである。そのために、現場の教員との交流と意見交換を目的としたワークショップ等を開催することを予定している。
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