研究課題/領域番号 |
22K00374
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02030:英文学および英語圏文学関連
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
辻 照彦 新潟大学, 人文社会科学系, 教授 (30197678)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | オセロー / 第一・四つ折り本 / 第一・二つ折り本 / Folio-only passage / F-only passage / Othello / First Quarto / First Folio / Folio-only Passage |
研究開始時の研究の概要 |
シェイクスピアの『オセロー』には重要なテクストとして、1622年に出版された第一・四つ折り本(First Quarto)のものと、1623年に出版された第一・二つ折り本(First Folio)に収められたものがある。両テクスト間には様々な異同が存在するが、第一・二つ折り本だけに見られる、いわゆるFolio-only passageは、合計160行にも上ることもあり、研究者の関心を集めてきた。本研究では、この異同発生のメカニズムを、第一・四つ折り本印刷業者の介入的編集過程に注目するという全く新しいアプローチにより解明することを試みる。
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研究実績の概要 |
デズデモーナが殺害される直前の重要な場面である『オセロー』の4幕3場には、第一・四つ折り本からは欠落しており、第一・二つ折り本だけに見られるFolio-only passageが合計で48行も存在する。これらのパッセージは、現在多くの研究者によって、第一・四つ折り本の原稿から欠落したものと考えられているが、その理由としては、歌の上手なデズデモーナ役の少年が見つからなかったといった上演時の都合が指摘されてきた。研究代表者は、歌それ自体に問題があったのではないかという視点からこの問題の解決を試みた。 研究代表者は「柳の歌」と古いバラード、具体的には、トマス・パーシーの Reliques of Ancient English Poetry (1765)に収められた‘A Lover’s Complaint, being forsaken of his love. To a pleasant tune’というバラードをスタンザごとに比較分析した。その結果、「柳の歌」の第1スタンザと第2スタンザに関する限り、シェイクスピアは古いバラードを比較的忠実にコピーしていることが分かった。それに対して、「柳の歌」の最終スタンザである第3スタンザには古いバラードの影響はまったく見られなかった。「柳の歌」の最終スタンザは、古いバラードの曲調からはかけ離れた、辛辣な毒舌を含む点が最大の特徴になっている。 研究代表者は、前年の研究により、第一・四つ折り本の4幕と5幕では、喜劇に転落しかねないコミカルな要素が削除されていることを明らかにした。これらの全体的傾向の中に「柳の歌」を置いて考えたとき、第一・四つ折り本の編集に責任のあった人物が、悲劇の終盤でそのヒロインが有名な歌のパロディーを口ずさむシーンを不適切と考えて、バラード全体を削除することは十分考えられると結論付けた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
『オセロー』のFolio-only passageの中で最も重要な箇所の一つである「柳の歌」の分析を進めることができたことで、Folio-only passageが第一・四つ折り本の印刷過程で削除された理由を解明するという最終目標に向けて一歩前進することができた。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、前年度に得られた成果をもとにして、『オセロー』のFolio-only passageの中でもひときわ長いFolio-only passageである4幕3場最後のエミリアの台詞を中心に分析する予定である。
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