研究課題/領域番号 |
22K00399
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02030:英文学および英語圏文学関連
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
対馬 美千子 筑波大学, 人文社会系, 教授 (90312785)
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研究分担者 |
堀 真理子 青山学院大学, 経済学部, 教授 (50190228)
田尻 芳樹 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (20251746)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | サミュエル・ベケット / カタストロフィ / 現代ヨーロッパ文学 / エコロジー |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は現代ヨーロッパ文学におけるカタストロフィ表象がエコロジーの問題にいかに関わっているかについて小説、演劇、思想の総合的視点から考察することを目的とする。すでに構築した世界的ネットワークを継続・発展させること、カタストロフィ表象というテーマの延長上で現代ヨーロッパ文学におけるカタストロフィとエコロジーの関連性について総合的に考察することを主眼とする。さらにその考察に基づき、現代において文学がエコロジーの危機的状況に対して提示する警告や啓示とはいかなるものであるかを明らかにする。
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研究実績の概要 |
2022年度は小説、演劇、思想のセクションごとに、現代ヨーロッパ文学におけるカタストロフィ表象とエコロジーの問題についての資料や文献の収集・整理を行い、さらにそれらの分析を行った。以下セクションごとに見ていく。 小説セクション(田尻):近年文学研究で重みを増している「ポストヒューマニズム」、「人新世」('anthropocene')という概念で20世紀の英語圏文学を読み直す作業を行った。いずれの概念も、人間中心主義を批判し、動植物を含めた自然環境を中心にすえる、エコロジカルな発想に基づいている。ヴァージニア・ウルフ、サミュエル・ベケットから、J・M・クッツェーのような現代作家までを、このような視点から論じた論文を読み込んだ。 演劇セクション(堀):エコロジー思想の担い手、Timothy Morton、 Elizabeth Grosz、 Anna Lowenhaupt Tsing、Catherine Keller等が説く理論に基づいて、ベケットの作品を読み直した。ベケットが描いている周縁的、亡霊的存在は、エコロジー思想のなかで描かれる存在のありかたに呼応する。とくに伝統的白人男性中心主義に抵抗するフェミニスト神学者であるKellerのFeminist Counter-apocalypseという概念は、地球的規模の災害や戦争とどう向き合うべきかを考えるうえで新たな視点を提供している。 思想セクション(対馬): Malone Diesの分析を通して、ベケット作品がいかに人間中心主義の閉鎖性にとらわれることなく、人間と人間世界の外にある生命や事物の世界との共存の可能性を示しているかを明らかにする論文を執筆した(Journal of Beckett Studiesに掲載予定)。また論文集『日常のかたち』においてAll That Fallにおける日常の問題についての章を執筆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初、2022年度に計画されていた(1)研究資料の収集・整理、(2)セクションごとの分析、(3)海外研究者との意見交換、(4)研究成果を論文集のかたちでまとめ、出版するための準備を行うという点において、おおむね計画通り順調に作業が進んでいるため。(3)については、意見交換は行ったが、コロナの状況のため、実際に研究会を開催することはできなかった。(4)についてはすでに出版が完了した。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、以下の作業を進める計画である。 (1) 研究資料や文献をさらに充実させ、入手した資料や文献のリストの整理を行う。(2)前年度に引き続き、セクションごとに現代ヨーロッパ文学におけるカタストロフィ表象とエコロジーの問題について様々な角度から分析を行い、考察を深める。(3)各研究者は、国内外の学会で、それまでの研究の成果を発表する。 2024年度は、過去2年間の研究活動を通して得られた成果を全体としてまとめあげる。その延長線上で以下の作業を進める。 (1)シンポジウム形式の公開の研究会を開催し、それまでの研究成果を提示する。
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