研究課題/領域番号 |
22K00400
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02030:英文学および英語圏文学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
アルヴィ なほ子 (宮本なほ子) 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (20313174)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2025年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | イギリスロマン主義 / 人新世 / パーシィ・シェリー / メアリ・シェリー / 人造人間 / コウルリッジ / P.B.シェリー / メアリー・シェリー / イギリス・ロマン主義 / パーシィ・ビッシュ・シェリー / S. T. コウルリッジ / 多様性 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、「人新世」(Anthropocene)の時代に、自然に対して「他者」となった人間が地球環境に介入することが引き起こす問題について、18世紀後半から19世紀前半のイギリス・ロマン主義の時代の文学テクストを中心に検討する。文学テクストとそれを産出する想像力の特徴を関連する諸分野との相互関係の中で詳細に検討することで、本研究は、既存の研究の枠組みでは捉えきれない、あるいは十分に論じられないこの時代の文学の新たな側面を示し、イギリス・ロマン主義の文学テクストから現代を照射する新しい総合的な文学研究を提示する。
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研究実績の概要 |
2023年度は、PercyのパートナーであったMary Shelleyとの相互影響関係に注目した。二人がレマン湖畔のバイロンの別荘に滞在したときに、Maryが着想をえた『プランケンシュタイン、あるいは現代のプロメテウス』(Frankenstein, or the Modern Prometheus)は、パーシーの『解放されたプロメテウス』(Prometheus Unbound)に代表されるロマン主義の男性詩人達のプロメテウス像、未来像とは様々な点で対照的で有り、自然とも人間(この場合は、主にヨーロッパ人)とも相容れない人造人間が創造される。21世紀に現代において重要な問題となった「人造人間」、「人間ならざるもの」と「人間」、「自然」との関係を先駆的に扱ったメアリの『フランケンシュタイン』を、インターセクショナリティの理論を援用しつつ、(ヨーロッパの)人間の住居へ入ることを拒否される生命体の問題、過酷な自然環境と人間の関係を考察して「『フランケンシュタインとインターセクショナリティ』」という論文に纏めた(受理済み。2024年6月刊行予定)。11月には、Enlightenment Romanticism and Contemporary Culture ERCC Research Unit主催のメルボルン大学で行われた"Inventing the Human"学会で『フランケンシュタイン』とそのアダプテーションである日本の現代の作品を用いて、「人間」の概念がゆらぐ人新世の時代の人間と自然について考察した。3月にはCommission on Science and Literature学会のアジア地域の創立シンポジウムで人新世の時代の科学と文学の相互関係についてイギリスロマン派からの現代日本文学・文化への影響と革新について発表した。2つの国際学会でさまざまな研究者との意見交流もでき、新たな知見が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、「人新世」(Anthropocene)の時代に、自然に対して「他者」となった人間が地球環境に介入することが引き起こす問題について、18世紀後半から19 世紀前半のイギリス・ロマン主義の時代の文学テクストを中心に検討するものである。当該年度は、このテーマをメアリ・シェリーの『フランケンシュタイン』を中心に考察し、『フランケンシュタイン』をインターセクショナリティの枠組みに入れて、「人間」(ヨーロッパ人)とヨーロッパ人以外の「人間」という「人間」という種の分断、「人間」と「(人造)人間」を含む地球上の生命体と「人間」との分断などを考察する研究論文をまとめた(受理済み。2024年6月刊行予定)。また、人新世の時代の「人間」と「自然」の関係、「文学」と「科学」の関係をを考察する口頭発表を2つの国際学会で発表を行った。学会発表の後では様々な研究者と意見交換を行い、問題点をより明確にし、新たな知見を得た。以上により、研究は順調に進んでいると考える。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、パーシィ・シェリーとそのパートナーメアリ・シェリーとの相互影響関係にも注目し、『フランケンシュタイン』を中心に「人間」と「人間ではない」生命体、と人間社会、自然との関係を考察した。2024年度は、主に2つの方向で研究を推進する。1つ目は、2023年度に国際学会で行った『フランケンシュタイン』の20世紀、21世紀への影響を考察した2つの発表を論文にまとめる作業である。2つ目は、新たに、「人間」と地球の自然環境との関係を過酷な自然の体験をした「旅人」とその体験を聞く(若い)語り手をテクストの中心においた、未来へ開かれた作品を考察することで、現在も模索されている人間と自然との新たな関係の始まりのヒントを検討する。コウルリッジ、ワーズワス、パーシィ・シェリー、メアリ・シェリーの作品、文学以外のジャンルとして同時代の文学テクストと共振するテーマを扱っている者にも目を配りつつ、詳細に検討し、イギリス・ロマン派学会の年次大会などの国内外の学会で発表する予定である。
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