研究課題/領域番号 |
22K00411
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02030:英文学および英語圏文学関連
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
北原 妙子 東洋大学, 文学部, 教授 (90315820)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | ロマンス / 19世紀末アメリカ文化圏 / F. マリオン・クロフォード / ヘンリー・ジェイムズ / リアリズム文学 / 小説の技法 / エキゾチック / ロバート・L・スティーヴンソン / ジャポニズム小説 / メアリー・クロフォード・フレイザー / 『宝島』『キム』 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、19世紀半ばから世紀末に一連の交流があった英米の文化人達、特に大西洋の両岸で活躍した人物達が構築していた「アメリカ文化圏」の内実を明らかにすることを目的とする。グローバル時代の先駆けともいえる「国際的」な小説家・芸術家に焦点をあて、同時代に実人生での相互交流から、どのような「文化」が醸成されたかを探りたい。具体的にはHenry James, F. Marion Crawford, Robert Louis Stevenson, Rudyard Kipling, Julia Ward Howe, Maud Howe Elliottなどが残した文化的・文学的仕事に注目する。
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研究実績の概要 |
本研究は、19世紀半ばから世紀末に一連の交流があった英米の文化人達、特に大西洋の両岸で活躍した人物達が構築していた「アメリカ文化圏」の内実を明らかにすることを目的とする。グローバル時代の先駆けともいえる「国際的」な作家・芸術家に焦点をあて、同時代に実人生での相互交流から、どのような「文化」が醸成されたかを探りたい。具体的にはHenry James, F. Marion Crawford, Robert Louis Stevenson, Rudyard Kipling, Julia Ward Howe, Maud Howe Elliottなどが残した文化的・文学的仕事に注目する。一見、ばらばらに存在する上記の作家達を結びつける鍵概念として「ロマンス」が指摘できよう。 今年度は、ジェイムズと大衆市場に関する先行研究を検証した。「孤高の作家」といった従来イメージを覆す、市場での巧みな交渉者としてのジェイムズ像が確認され、ライヴァル作家クロフォードとも同じ市場で競合していたことを明らかにできた。ジェイムズ、クロフォードら二人の作家による創作理論を検討したところ、リアリズム文学が地歩を固める時代において、スティーヴンソンのロマンス擁護とあわせて、白熱した議論が展開されていたこと、そして「ロマンス」というジャンルが台頭するリアリズム文学と拮抗する様子も確認できた。 またハウ家や関係者の伝記を検証すると、ジュリア・ウォード・ハウやモード・ハウ・エリオット達がグローバル化時代の先駆けとなって欧米にまたがりクロフォードをはじめオスカー・ワイルドやジェイムズら作家や文化人達との交流を活発に行って、国際サークルを形成し、作家達に側面から刺激を与えることで同時代の文学や演劇を深化させていた様子も浮かび上がってきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、7月上旬にジェイムズ国際学会が京都で開催されたので、大衆文学との相互テクスト性を探る意味で、誘惑小説というジャンルをジェイムズがいかに援用して独自の文学作品を生みだしたかを検証した。発表に対する海外研究者との意見交換により、更に考察を深められた。 またクロフォードに関する先行研究調査に続き、ジェイムズと市場、読者層の変容と大衆向けの出版動向を探ることで、画家も含めた創作家にとっての掲載媒体(雑誌)およびロマンス作品が同時代に持つ意義への洞察が得られた。特にジェイムズ、クロフォードを巻き込んだ「小説の技法」論争を分析することで、ロマンスというジャンルにとって新興のリアリズム文学が脅威であり、逆も同様だったという、文学史上のパワーバランスが理解できた。以上を単行本の原稿にまとめ、ジェイムズとクロフォードの小説の技法をめぐる論争については、次年度学会で口頭報告を行い、ほかの研究者からフィードバックを仰ぐ予定である。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画ではロマンスの実作を分析する予定であったが、ウォルター・ベザント、クロフォードおよびスティーヴンソンによるロマンス擁護論争の分析にとどまっている。引き続き実作の検討ということで、スティーヴンソンやキップリングの作品分析を行い、ナラティヴの魅力や特別な物語装置があるかなどを探りたい。併行してクロフォードの冒険物語などロマンス性の高い作品を検証し、キップリング作品との比較考察やジェイムズによる批判が妥当かを探り、翻案の潜在力も含めた「ロマンス」分野の可能性を検証する。 さらに、大衆に開かれた市場の変化に対する応答ともいえるジェイムズによる芸術家や作家を扱う短編作品を予定通り検証する。19世紀後半、新しい文芸市場が確立したとき、ロマンスの立ち位置がどのように変化するかを探りたい。
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