研究課題/領域番号 |
22K00413
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02030:英文学および英語圏文学関連
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研究機関 | 椙山女学園大学 |
研究代表者 |
長澤 唯史 椙山女学園大学, 国際コミュニケーション学部, 教授 (50228003)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2025年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | ポストモダニズム / カウンターカルチャー / SF・ファンタジー / J・R・R・トールキン / 佐々木守 / 大島渚 / アヴァン・ポップ / ポップカルチャー / ロックミュージック / アメリカ文学 |
研究開始時の研究の概要 |
1970年代以降のポストモダニズムを、60年代のカウンターカルチャーの政治性を継承した、文学と大衆文化の二つの運動をつなぐ理論としてアヴァン・ポップを再評価する。 従来のカウンターカルチャーとポストモダニズムを切断する認識や評価について再検討を加え、これまで非=政治的と考えられてきたポストモダニズム/アヴァン・ポップを社会性・政治性の回復運動として再評価する。 ポストモダン小説、アヴァン・ポップ、ポスト=ポストモダン小説への連続性を検証しながら、アヴァン・ポップをジャンルや社会性への自意識とともに始まった表現の変革ととらえると同時に、文学とポップカルチャーを包摂した新たな文化論の可能性を追求する。
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研究実績の概要 |
本研究課題「ポストモダニズム/アヴァン・ポップの対抗文化への再接続と新たな文化批評の可能性」について、2023年度はポストモダニズムと対抗文化(カウンターカルチャー)の再接続について、前年度の成果を踏まえ研究の発展を試みた。 カウンターカルチャーの再評価については、とくにJ・R・R・トールキンの「準創造」「第二世界論」を元に、現実とフィクションの関係性を再構築する戦略として再評価をめざすこととした。トールキンの「準創造」論は現実とは異なる異世界を緻密に構成することをめざすもので、それは初期のカウンターカルチャーにおける現実批判の意識と通底するものである。トールキンの『指輪物語』が発表から10年を過ぎたころ、カウンターカルチャーの中で爆発的な人気と評価を得たことが、この両者に共通する理念があることを証明しているだろう。 一方で、2022年度の研究の中で着目した佐々木守については、大島渚とのコラボレーション(『絞死刑』68年、『東京戦争戦後秘話』70年)などの仕事の中で、まさにメタフィクションと政治批判を接続する試みを行っていることを確認できた。このように国や地域を超えて同様の傾向をもつ作家・作品が同時多発的に生まれていた状況から、カウンターカルチャーが世界的な文脈でポストモダン的な戦略を展開していたことは明らかだろう。 ここまでの研究で、カウンターカルチャー終焉後の1970年代にその精神と方法論がどのように受け継がれていったかを検証する必要があることが改めて判明した。したがって今後はその検証を進めていくが、そのカギとしてグラム・ロックやデヴィッド・ボウイとSFの関係性に着目すべきとの視点を得ている。2024年度はその点についてより研究を深化させていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
概要でも述べたように、研究課題の内ポストモダニズムとカウンターカルチャーの関連性については、前年度の理論的な考察からさらに進展し、具体的な現象や作品を例にとった分析評価も行うところまで成果を得ることができた。とくにここまであまり着目してこなかったSF・ファンタジーの文脈から、カウンターカルチャーを再評価するためのキーワードとして「準創造」「第二世界論」と発見できたことは、大きな収穫であった。しかしながら、その中で改めて1970年代におけるカウンターカルチャーの継承の問題が課題として浮上してきた。この点についてのさらなる検証を必要とするため、2024年度は研究のスケジュールに多少の変更が必要となる。 また研究計画の中で予定していた海外での調査についても、大学での業務との兼ね合いでここまで実施できていない。2024年度には北米での調査を予定しているが、まだ時期等が未定であるため、早急に計画を立てることとする。 一方で、ここまでの研究成果の発表については、昨年度と同様に『レコード・コレクターズ』などの媒体や各所での講演・講座等での発信を行っており、その点では順調に進んでいるものと判断できる、2024年度も引き続き成果発表を積極的に行っていくとともに、最終年度での成果のまとめに向けた準備にも入りたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度については、以下の3点を重点的に進めていく予定である。 1.カウンターカルチャー以降の1970年代について、これまでの「社会から個人へ」と捉えられていた時代の変化について、「新たな社会意識の構築」という観点からの再検討を行う。そのために改めて70年代の大衆文化に焦点を於き、ここまでの研究成果を踏まえた再解釈を行う。その際にカギとなるのはトールキンの「準創造」の理論であると予測している。 2.70年代の文化状況についての資料や情報の収集のために、北米での調査を実施する。とくに音楽関係の資料・情報の調査のために、オハイオ州クリーブランドの「ロックの殿堂」などの施設を訪問する計画である。また日米英以外の地域での状況を把握するためにも、とくに東アジアでの調査も必要と考えている。 3.成果発信については都度、様々な媒体や場所で行っているものの、今回の研究課題について包括的に論じる必要を痛感している。そのためには個別の問題についての論文・批評等を書き進めながら、それらを全体として統一する議論としての書籍出版も検討しなければならない。 最後に、この研究課題から次の新たな課題も浮上してきている。それは戦後の日本の文化状況を作り上げてきたアメリカの文化政策と、その中で重要な役割を果たした日系二世に関する調査であり、そのテーマを先行的に取り入れることで、とくに日本におけるカウンターカルチャーのあり方を評価することができるという見通しが生まれている、
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