研究課題/領域番号 |
22K00415
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02030:英文学および英語圏文学関連
|
研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
玉井 史絵 同志社大学, グローバル・コミュニケーション学部, 教授 (20329957)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2026年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2025年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2024年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2023年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2022年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
|
キーワード | 19世紀イギリス小説 / 共感 / 社会改革 / ディケンズ / ギャスケル / 19世紀英米文学 |
研究開始時の研究の概要 |
文学の意義を論じる際、共感的想像力の醸成という教育的意義が挙げられるが、本研究では文学における「共感」と共感に基づく社会改革との関係性、そして、その可能性と限界について、19世紀中期から後期に活躍した二人の作家、チャールズ・ディケンズ(1812-70)とジョージ・ギッシング(1857-1903)を中心に解明していく。これまでの共感に関する小説研究では、小説が共感を生み出すメカニズムが注目されてきたが、本研究では、作家の実生活における社会改革の試みや、当時の社会改革運動における共感の役割も併せて検証することにより、文学と社会の相互作用を明らかにしていく。
|
研究実績の概要 |
令和5年度の研究実績は主に二つある。前半は昨年度から取り組んでいた課題、エリザベス・ギャスケル(Elizabeth Gaskell)に関する研究に取り組んだ。ギャスケルの中編小説『ラドロー卿の奥様』(My Lady Ludlow, 1858)に着目し、「『ラドロー卿の奥様』における包摂的社会の構築とその限界」と題する論考を『ギャスケル研究』第33巻に発表した。『ラドロー卿の奥様』は階級、地位、ジェンダーに関係なく、社会のすべての構成員が共感によって結ばれ尊重される理想的包摂的社会の構築を描いた革新的作品と解釈されてきた。本論文では、作品が包摂的社会への理想を志向すると同時に、社会に依然として存在する差別や分断を示唆していることを明らかにし、共感に基づく社会改革の限界を論じた。 本年度の後半はチャールズ・ディケンズ(Charles Dickens)の中期の小説『二都物語』(A Tale of Two Cities, 1859)を中心に、共感と社会改革についての研究を進めた。フランス革命を題材にしたこの小説は、1857年から1858年にかけてインドで起きた、イギリスの植民地支配に対する抵抗運動インド大反乱(Indian Mutiny)を反映していると言われている。支配者層が民衆に対する共感を欠き、彼らの不満を見抜くことができなかったことが、暴力的反乱を招いたという点で、フランス革命とインド大反乱は似通っている。本研究ではこのような類似に着目し、当時の歴史的コンテクストに作品を位置づけて、共感の役割を考察した。その成果を19世紀イギリス文学合同研究会のシンポジウムで発表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
大学の役職についていたため、予定通りの研究時間の確保が難しかったことが第一の理由に挙げられる。本研究課題を開始して2年が経過したが、未だ本研究課題の中心的テーマの一つであるジョージ・ギッシング(Geroge Gissing)の研究に本格的に着手できていない。本年度以降、ギッシングの小説と後期ヴィクトリア朝における社会改革運動について研究を進展させていきたい。
|
今後の研究の推進方策 |
令和6年度はギッシングの小説研究に本格的に着手する。作品を再読し、『暁の労働者』(Workers in the Dawn, 1880)、『ネザー・ワールド』(The Nether World, 1889)など、ロンドンの下層社会を舞台とした初期作品を中心に再読し、社会改革運動のコンテクストの中でギッシングの作品を分析することにより、共感と社会改革との関係について検証する。
|