研究課題/領域番号 |
22K00425
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02030:英文学および英語圏文学関連
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
趙 泰昊 信州大学, 学術研究院人文科学系, 助教 (80868498)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 巡礼 / 中英語ロマンス / 十字軍 / 他者表象 / 世界地図 / 旅行記 |
研究開始時の研究の概要 |
見知らぬ土地での経験を語る「旅行記」と、他者との区別によって自らを定義しようとするアイデンティティ形成の過程は密接な関わりを持つ。この点は、地理空間の認識が正確な測量法に基づいていない近代以前のヨーロッパの文学作品において顕著である。本研究は、中世後期イングランドで製作された地図や旅行記に加え、空間的な移動を描く中英語ロマンスを分析の対象とし、その中で想像される「移動」が、当時のイングランドにおける国家的、宗教的な所属意識をどのように反映し、また形成しようとするものであったかを明らかにすることを目指すものである。
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研究実績の概要 |
見知らぬ土地での経験を語る「旅行記」と、他者との区別によって自らを定義しようとするアイデンティティ形成の過程は密接な関わりを持つ。この結びつきは、地理空間の認識が正確な測量方に基づいていない近代以前のヨーロッパの文学作品において顕著である。本研究は、中世後期イングランドで製作された地図や旅行記に加え、空間的な移動を描く中英語ロマンスを分析の対象とし、その中で想像される「移動」が、当時のイングランドにおける国家的、宗教的な所属意識をどのように反映し、また形成しようとするものであったかを明らかにすることを目指すものである。遠方の風物を詳細に記した中世後期の地図や旅行記とロマンス作品を横断的に分析しながら、物語における空間上の移動の描写が単純なエキゾチシズムや異文化への憧れを反映したものではなく、自己定義に必須となる他者の存在を導入しながら、自己と他者の線引きを可視化しようとするものであるという点を明らかにする。 プロジェクトの初年度となる本年度は、中世ヨーロッパにおける「他者」の表象について研究を進め、文化的・地理的に異なる人々を描いた中世イングランドの物語を対象に分析を行なった。キリスト教的な世界観や歴史観によって彩られている当時の文書において、特に東方への旅は巡礼としての意味合いを帯びるものであるが、旅を通して自己規定を図る登場人物の様子に注目しながら、物語における移動の意義を検討した。本研究の問題意識を踏まえて行われたリサーチの一部は本年度に出版された『旅するナラティヴ』(知泉書館)に収録された論考において発表済みである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
プロジェクトの初年度となる本年度は、中世ヨーロッパにおける「他者」の表象について研究を進め、文化的・地理的に異なる人々を描いた中世イングランドの物語を対象に研究を進めた。本年度は依然としてCOVID-19の感染による国内・国外の移動制限の影響など不透明な要素が多く、そのため本来予定されていた国際学会への参加などを取り止めることとなった。いくつかの学会への参加は次年度に延期、または中止することとなり、それに代わって、国内でアクセスができる研究書をもとに国内での研究活動に専念した。 初年度の研究を通して、本研究の主題となる「旅」という物理的・精神的な移動がその形態や文脈によってどのように異なるものとして理解されていたかといった点に対するより詳細な研究の必要が明らかとなった。そのため、初年度には具体的な作品分析に先立つ、周辺の情報についての調査が主となった。
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今後の研究の推進方策 |
COVID-19の影響により、当初の計画において予定されていた国際学会での研究発表や論文投稿の時期に変更が生じることとなった。プロジェクトの2年目となる次年度では、引き続き中世イングランドにおいて「旅」の持つ意義を明らかにする調査を進める一方で、移動を軸に展開する物語のうち、登場人物のアイデンティティの形成に焦点を当てたものを複数選び、具体的な分析を行う。2023年度4月より着任した明治大学において刊行される紀要において研究成果を発表予定である。また、最終年度に向けて可能な限り多くのテクストに対する分析を進め、論文や国際学会での研究発表の形で成果を発表する予定である。
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