研究課題/領域番号 |
22K00426
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02030:英文学および英語圏文学関連
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研究機関 | 愛知教育大学 |
研究代表者 |
道木 一弘 愛知教育大学, 教育学部, 特別教授 (10197999)
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研究分担者 |
桂山 康司 京都大学, 人間・環境学研究科, 教授 (10194797)
小塚 良孝 愛知教育大学, 教育学部, 教授 (40513982)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | 頭韻 / アナグラム / ジェイムズ・ジョイス / オスカー・ワイルド / ジェラルド・マンリー・ホプキンズ / 頭韻検索ソフト / 言語音楽 / モダニズム |
研究開始時の研究の概要 |
英文学における頭韻は古英語期に広く用いられた技法であるが、ルネサンス期以降、文学作品における使用は限定的であった。しかし、世紀末を代表する英国の作家オスカー・ワイルドの童話や、ジェラルド・マンリー・ホプキンズの詩、およびモダニズムを代表するジェイムズ・ジョイスの小説にはかなりの頻度で用いられている。本研究では、作品を精査することで頭韻の出現パターンを明らかにし、併せてアナグラムの調査を行い、コーパスを活用して両者の関係性を質的(意味と形式)および計量的に解明することを目指す。
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研究実績の概要 |
桂山は、ホプキンズの詩「ドイッチュランド号の難破」において、頭韻が単なる修飾的なものではなく、詩のテーマである人間の魂のあり様を表象するアナグラム的な要素を持っていることを解明し、2023年7月26日にアイルランドのニューブリッジにあるNewbridge College Theatreで開催された、国際ジェラード・マンリー・ホプキンズ学会第35回年次大会(7月21日~27日)において、『ホプキンズと頭韻(Hopkins and Alliteration)』というタイトルで研究発表を行った。これを踏まえ、8月19日には、名古屋のテレワーク@栄において、学会発表の報告を兼ねて桂山が研究発表を行い、道木と小塚が質疑応答を行った。 道木は『ユリシーズ』第一挿話、第三挿話、第四挿話の頭韻について網羅的に調査し、古英語の頭韻パータンとして、小野茂・中尾俊夫が提唱した単独頭韻、二重頭韻、交差頭韻という考え方を発展させ、『ユリシーズ』(散文)における頭韻パターンとして、単独頭韻、二重頭韻、交差頭韻、反転頭韻、連続頭韻および混合頭韻の6つのパターンに分類を行った。さらに『ダブリナーズ』のいくつかの短編における頭韻と作品の内容の関係性について新たな知見を得ることができた。その上で、頭韻に係る諸問題の論点整理を行った。 これと並行して、アナグラム研究の最新動向を調査し、シェイクスピアのソネットにおけるアナグラムの成立に単語の語頭と末尾の文字が少なからず関わっていることが明らかになった。これはジョイスの小説における頭韻の役割を知るうえで大変有効なものである。 小塚は、頭韻検索のための試作的ソフトを構築し、現在その有効性の検証等を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
道木と小塚は、勤務校の授業の一環で訪問したインドネシアのジョグジャカルタ大学において、2023年3月18日に「語学的および文学的観点からみた頭韻」と題して人文芸術学部英語学科学生および教員を対象に小塚と共に講演および質疑応答を行った。 桂山はホプキンズの詩における頭韻が単なる装飾的なものではなく、作品のテーマである神と人間の魂の在り方と密接に関係していることを明らかにした。 小塚は、プログラミングの開発に詳しいインドネシアのジョグジャカルタ大学留学生との共同研究により、一定の分量の英文から頭韻を検索す試作的なソフトの開発を行った。現在はその操作性の向上や信頼性の確認を行っている。 道木はこれまでの調査研究を踏まえ、『ユリシーズ』における頭韻の出現パターンを分類した。現在は、このパターンと作中人物の発話および語りとの関係性を分析中である。 桂山、道木、小塚は2024年5月4日~5日に東北大学で開催される日本英文学会において、ワークショップ「頭韻をめぐる冒険―文学と語学の共同的アプローチ」(5月4日)を企画し、その準備を行ってきた。その過程で、頭韻の定義と歴史的経緯を整理した。また上記頭韻検索ソフトを事前にネット上で公開した。
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今後の研究の推進方策 |
今後、道木はグラスゴー大学で開催される国際ジェイムズ・ジョイス・シンポジウム(6月12日~6月21日)において、研究発表「頭韻、アナグラム、読者」を行う予定である。 今年が最後の研究年度になるので、これまでの学会発表およびワークショップでの質疑応答を踏まえ、また、共同研究の蓄積を踏まえ、それをいくつかの論文としてまとめる作業を行う。
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